取引先から「あなたの会社についての怪文書が届いたのですが・・・」と連絡を受けると焦ってどうしていいのかわからなくなりますよね。

怪文書の内容は根も葉もないデタラメなことであったとしても受け取った取引先からの印象が悪くなったり取引に悪影響を与えたりすることは避けられないでしょう。

今回は、取引先に怪文書が送られてしまったときに考えられるリスクや会社としてどのように対応すべきなのか、そして犯人を告訴する場合に取るべき行動を解説していきます。

怪文書を取引先に送る犯人の心理や目的は様々

怪文書を会社にではなく、わざわざ会社の取引先に送る犯人はどのような心理がありどのような動機で送っているのでしょうか。 怪文書を取引先に送る動機は、会社の方針に対する不満があったり、社内での評価に恨みを持っていたり、会社そのものに対して妬みや嫉妬を持っていたりとさまざまです。

そのため、取引先に怪文書を送った犯人も、現在働いている社員の可能性ももちろんありますし、すでに退職した元従業員という場合もありますし、さらには社員の家族や関係者というケースさえ考えられます。 また、ライバル会社があなたの会社の業績を妬んで嫌がらせとして怪文書をバラまいている可能性もあります。

そのため、「怪文書が送られたらこう対応してください」という一律にマニュアル化されたものはないため、ケースバイケースで臨機応変に対応していく必要があります。そして、放っておいたりむやみに犯人を決めつけたりするとさらなるトラブルを招く恐れがありますので、慎重に対応を検討していかなければいけません。

取引先に怪文書が送られてしまった場合のリスク

取引先に怪文書が送られたら、多くの経営者の方が焦ってしまうと思いますが、中には「ただの妬みの紙が送られたくらいだろう」「取引先も気にしていないみたいだし、放っておけばいい」とあまり深刻に考えない方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、取引先に怪文書が送られた場合のリスクをしっかりと認識して対応していかなければ、さらなる被害に発展する恐れがあります。この章では怪文書のリスクについて解説していきますので、甘く考えずしっかりと対応していく意識を持ってください。

取引先からの信用の墜落

怪文書の内容にもよりますが、怪文書を読んだ取引先があなたの会社に対して不信感を抱く可能性は大いにあります。

口頭では「怪文書なんて気にしていませんよ」と言ってくれたとしても内心は怪文書の内容を気にして取引を続けるか迷っているかもしれません。 また、対応してくれた担当者が気にしていなくても取引先の経営者が気にしている場合は信用の墜落につながるでしょう。

取引を断られるOR縮小される

会社としての信用を失った結果、取引を断られるリスクもあります。 仮に取引先の社長が怪文書の内容を気にしていなくても、社内の従業員たちが気にしているとなれば、従業員たちからの社長と会社への信頼を守るために取引の中止を検討することも考えられます。

業界に噂が広まる

取引先に怪文書が送られる嫌がらせの場合、1社だけに送られることは少なくたいていの場合複数の取引先に怪文書が送られます。 そうなると、どうしても業界内であなたの会社についての悪い噂が広まってしまいます。

業界内で広く噂が広まると新しく取引を開始するのも難しくなってしまいますし、多くの取引先から既存の取引を断られてしまうリスクも大きくなってしまうでしょう。

社員たちのモチベーションが下がる

取引先に怪文書が送られたことが社員たちに知られてしまうとどうしてもモチベーションが下がってしまいます。

また、営業マンなどが外回りで社外の人と話しているときに「おたくの会社、大丈夫?」などと聞かれることが増えると社員たちも不安になってしまいます。 取引先に送られた怪文書の内容がまったく事実無根であっても、社員たちがその内容を信じてしまうと会社や社長に対しての信頼を持つことが難しくなってしまうのです。

優秀な社員の退職や人材確保が困難になる

怪文書のことが社内で広まってしまうと、中にはもっと他で安心して仕事をしたいと退職を希望する可能性があります。退職希望の社員の中には優秀で会社にとってはなくてはならない存在の社員もいるかもしれません。

また、会社についての噂が業界内に広く広まった結果、入社希望者の耳にも入り内定を辞退したりそもそも応募をしなくなったりするリスクも考えられます。

怪文書が大切な取引先に送られたときの会社としての適切な対応

怪文書が取引先に送られてしまったら、放っておかずに適切に対応していきましょう。会社として、まずは目先のトラブルを収束させるために動き、そのあとで再発防止や怪文書トラブル防止のために施策を打っていくようにしてください。

怪文書が送られた取引先の特定と謝罪の挨拶周り

まずはどこの取引先に怪文書が送られたのか調査して特定しましょう。

取引先の担当者に「実は、他のお取引の会社様に弊社の誹謗中傷が書かれた紙が送られたようなのですが、御社にはそのようなものが届いていませんでしょうか?」と確認し、送られた取引先を特定してください。

そのうえで、怪文書が送られた取引先すべてに挨拶周りに行くようにしましょう。 怪文書の内容が事実無根であることを弁解し、この怪文書によって迷惑と心配をかけてしまったことをしっかりと謝罪してください。 挨拶周りには部長クラス以上の社員が担当することをお勧めします。

怪文書の内容の吟味

怪文書が送られた取引先に頼んで怪文書を回収するようにしてください。そして、怪文書の内容を読んで犯人の想定と目的を吟味してみてください。 書かれている内容から、社内の体制に不満があるのか、人事評価に不満があるのかなどが見えてくるかもしれません。

犯人特定と処罰の検討

怪文書の内容からすぐに犯人を想定できるときもありますが、目的も犯人自体もまったく見当がつかないこともあります。 その場合は探偵に調査を依頼し、犯人特定を進めていくようにしてください。

犯人が特定でき証拠も掴めたら犯人に対してどのような措置を取るのか検討しましょう。 現職の従業員であれば懲戒処分を検討することになりますし、同業他社や元従業員であれば刑事罰や損害賠償請求を検討することになるでしょう。

社内体制の見直し・社内教育の徹底

社内体制や人事評価制度に不満があって会社にそれを訴えるために怪文書を送り付けるケースも多いため、今一度社内体制を見直してみるのも大切です。

加えて、怪文書などの犯罪行為を犯した場合の社内での処分などについて社内教育で指導していくことも行ってください。また、会社に不満や不安を持った場合にどこに相談すればいいのか、怪文書などの犯罪という手段を選ばずに会社に要求をできるようにするための社内システムや人事制度を検討していくことも重要になってきます。

再発防止のための社内調査を定期的に行う

怪文書に限らず、社内不正はどうしても起きてしまうことがあります。どれだけ社内制度を整えていても従業員が不正をしたり、怪文書の嫌がらせをしたりすることはありえます。

そのため、大きなトラブルになってしまう前に、定期的に社内調査を行い不正や嫌がらせをしようとしている社員がいないかどうか、チェックする方法をお勧めします。

企業調査や社内不正調査を得意としている探偵事務所は多くはありませんが、プロに調査を依頼することで社内でのトラブルを未然に防ぐことができます。欧米では企業調査は一般的になりつつあり、その効果も出ているため、一度検討されてみてはいかがでしょうか。

取引先に怪文書を送り付けた犯人を特定して告訴するためには

怪文書はただの嫌がらせだと思われがちですが、条件を満たせば名誉毀損罪・侮辱罪・脅迫罪・信用毀損罪・業務妨害罪などの刑事罪に当たります。

犯人を告訴して罪に問うためには、当然ですが犯人を特定できていなければいけません。そして犯人であるという証拠や刑事罰に該当するという証拠を入手しておくことが重要となります。

犯人と思われる人物のリストアップ

犯人を特定するためには、まず犯人と思われる怪しい人物をリストアップしておきましょう。

過去に会社でトラブルを起こした社員や最近怪しげな言動をしている社員、また、過去に退職するときに揉めた元従業員など、思いつく限りでピックアップしておいてください。 また、怪文書に書かれた内容が一部の人しか知りえない情報の場合は、その内容に関与している者や知っている者など全ての怪しい人物をピックアップしてください。

あらかじめ犯人の可能性がある人物が絞られていると探偵が本格的な調査をする際にスムーズに進めることができます。

取引先に怪文書の保管を依頼

犯人であるという客観的な証拠を取る際、指紋鑑定や筆跡鑑定が効果を発揮することがあります。 そのため、取引先に送られた怪文書はできるだけ送られた時の状態に近い状態で保管しておくように依頼しましょう。

そして、できるだけ早い段階で自社に持ち帰り大切に保管するようにしてください。

探偵など調査機関に調査を依頼

刑事告訴や損害賠償請求などの法的措置を取る場合、裁判でも認められるような客観的な証拠が必要になります。

そのため、探偵などプロに依頼して調査を進め、犯人特定や証拠収集をしていくようにしましょう。刑事告訴したいからといっていきなり警察に相談しても犯人がわかっていなければどうにもできませんし、弁護士に損害賠償請求の手続きを依頼しても証拠がなければ裁判に勝つことはできません。

そのため、まずは専門家に調査を依頼して証拠を集めておくようにしましょう。

まとめ

自分の会社に怪文書が送られてくるだけでも気味が悪くいろいろな支障が出てしまうのに、取引先に怪文書が送られてしまったら被害はより大きくなってしまいますよね。

ただの嫌がらせだと甘く考えず、慎重に対応していくことが重要です。 まずは怪文書が送られた取引先に出向いてフォローを行い、失われる可能性がある信用をしっかりと守ることを優先しましょう。そのうえで、犯人を特定して証拠を集め、嫌がらせ行為を辞めさせてどのような措置を取るのか検討していってください。

怪文書などの嫌がらせに関しては、事件性を証明することが難しいので警察もなかなか動いてくれることは稀です。嫌がらせ被害については探偵などの調査機関に相談することで最善の解決策を提示してくれるでしょう。