社内の嫌がらせは、見えている一場面だけでは分かりません。相談した人が仕事を失う不安を抱え、黙ったまま限界を迎えることもあります。
会社が最初にすべきことは、どちらかを即座に犯人と決めることではなく、安全を確保し、相談内容を分けて記録することです。

会社で起こる嫌がらせの特徴
嫌がらせやいじめと聞くと、学校などで起きる子供の問題とイメージされる方も多いかと思いますが、実は大人になっても嫌がらせは横行しています。 特に会社という閉ざされた空間では嫌がらせが起きやすく、会社ならではの特徴もあります。この章では、会社で起こる嫌がらせの特徴やリスクについて見ていきます。
表面化しにくく把握が難しい
会社内で起こる嫌がらせは表面化しづらいという特徴があります。そのため、社長や経営陣が把握できないまま嫌がらせがエスカレートしてしまい、気付いたときにはかなり問題が肥大化してしまっていることは少なくありません。
上司から部下への言葉や指示は、業務上の指導か、必要性を超えた行為かを判断しにくい場合があります。相談者を一人にせず、日時と内容を確認してください。
心身と就業への影響を軽く見ない
眠れない、出勤できない、体調が悪いなどの訴えがある場合は、本人の意思を確認しながら産業医や医療機関などにつなぎます。病名を会社側で決めつけません。
あなたの会社は大丈夫?社内の嫌がらせのよくあるパターン
会社内で起こる嫌がらせには典型的なパターンがあります。会社内での嫌がらせは表面化しにくいという特徴はあるものの、どのような嫌がらせが起きやすいのかを把握しておくことで敏感に起きている嫌がらせを察知できるようになる可能性もあります。
集団で無視や仲間はずれをする
職場でも、無視、情報を渡さない、隔離するなど、仕事と人間関係の両方に影響する行為があります。
・挨拶をしてもみんなに無視される
・上司や同僚の会話に入ったら蜘蛛の子を散らすようにみんながいなくなる
・自分だけ必要な資料が配布されない・情報を知らされない
・自分だけ別室で仕事をさせられる
・会社の送別会や忘年会、社員旅行に自分だけ声をかけられない
このような行為が繰り返されると、仕事と人間関係の両方に影響します。最初から誰かを加害者と決めつけず、日時、場所、回数、業務への影響を確認します。
社内に違和感を持ったら、このような嫌がらせが起きていないか観察してみることが大切です。
パワハラ・セクハラ・モラハラをされる
世の中には様々なハラスメントが存在しますが、会社で起こることが多いのはパワハラ、セクハラ、モラハラです。 上司が怒鳴る、書類を投げつけるといった行為があった場合は、日時、場所、発言、周囲の状況を記録し、業務上の必要性や継続性も含めて確認します。
「お前は無能だ」「お前は奴隷なんだから文句言わずにやれよ」などと言われた場合も、言葉だけで種類を決めつけず、誰が、いつ、どの場面で、何度言ったかを確認します。 嫌がらせが続くと、心身や仕事に影響が出ることがあります。体調の変化がある場合は、本人の意思を確認しながら産業医や医療機関につなぎ、会社側で病名を決めつけないでください。
性別や妊娠を理由とした言動も、内容や状況によってハラスメントに該当する場合があります。社内だけで断定せず、記録をもとに必要な窓口へ確認してください。
SNSに誹謗中傷を書かれる
FacebookやX(旧Twitter)などのSNS上で特定の人についての悪口や誹謗中傷を書き込まれるという嫌がらせもあります。 SNS上の投稿は公開範囲や転載によって、相談者の負担が大きくなる場合があります。
SNS上の投稿で強い苦痛を訴えている場合は、一人にせず、本人の意思を確認しながら相談窓口や医療機関につないでください。差し迫った危険がある場合は119番または110番へ連絡します。
無理な仕事を押し付ける
一日では到底終わらないような無謀な量の仕事を押し付けられたり、用事があることを知っているのに終業間際に膨大な仕事を押し付けられたりという嫌がらせもあります。
仕事なので断ることもできませんし、第三者にそのことを相談しても「仕事を任せられるくらい信用されているのでは?」「仕事があるだけマシでしょ」などと言われると、相談者が声を上げにくくなります。
仕事を妨害したり濡れ衣を着せられたりする
上司から誤った指示を故意にされて結果的に昇進の機会を失ったり、上司やほかの人のミスなのに自分のせいにされて濡れ衣を着せられたりという陰湿な嫌がらせもあります。
相談者の就業と業務の両方へ影響するため、経営者が見過ごしてはいけない問題です。
プライベートに干渉してくる
私生活への質問だけで一律に嫌がらせと決めず、内容、回数、立場、断れる状況だったかを確認します。 家族や恋人、休日について繰り返し質問される、業務上の必要なくスマートフォンをのぞかれるといった相談があります。誰が、いつ、どの状況で、どこまで行ったかを確認してください。
会社での嫌がらせにきちんと対処しない場合のリスクとは
会社で起きている嫌がらせは表面化しにくく発見が難しいという特徴がありますが、だからといって見て見ぬふりをしてもいいというわけでは決してありません。
会社で起きている嫌がらせにきちんと対処していない場合、多くのリスクが発生しやすくなりますので、リスクについてもしっかりと把握しておいてください。
相談者が離職を考えることがある
相談できない状態が続くと、離職を考える場合があります。 せっかく採用費用をかけて採用し、教育費をかけて育ててきたのに嫌がらせが原因で辞められてしまっては会社としても痛手ですよね。
役職や評価だけで、嫌がらせを受けやすい人や行為の動機を決めつけないでください。相談内容と仕事への影響を一人ずつ確認します。
社内で話せず、外部へ投稿されることがある
社内で相談できなかった内容が、退職後に口コミサイトへ投稿される場合もあります。投稿者探しより先に、内容を確認してください。
「〇〇会社ではパワハラやモラハラが毎日横行している」 「会社の嫌がらせのせいでうつ病になった」 などと書かれてしまうと、今後の採用が難しくなるだけでなく、取引先からの信用も失ってしまう可能性があります。
心身や仕事への影響を軽く見ない
嫌がらせが続くと、相談者の心身や就業へ影響することがあります。期間、頻度、仕事内容への影響を具体的に確認してください。
本人が我慢していても、眠れない、出勤できない、体調が悪いなどの変化が出る場合があります。会社側で病名を決めつけず、本人の希望を確認します。 休職や配置への配慮が必要な場合は、本人、産業医、医療機関、人事で役割を分け、他の社員への業務配分も見直します。
会社の対応自体も記録する
会社の法的責任は個別事情で変わります。相談を受けた日時、保護措置、聞き取り、判断の理由を残し、必要に応じて弁護士や社会保険労務士へ確認してください。
相談窓口、事実確認、保護、再発防止を一つの流れにする
厚生労働省は、事業主に方針の周知、相談体制、迅速で正確な事実確認、被害者への配慮、行為者への適切な措置、再発防止、プライバシー保護、不利益取扱いの禁止を求めています。
会社での嫌がらせが判明したときに会社として取るべき対応
では、会社で嫌がらせが起きていることが発覚したら、具体的にはどのような対応をとっていくことが求められているのでしょうか。 ここでは嫌がらせ起きていることが発覚した際の適切な対応について説明します。
事実関係の把握
まずは嫌がらせについての事実関係を確認する必要があります。事実関係を把握するため、相談者から日時、場所、言葉、行動、仕事への影響を分けて聞きます。
聞き取りが負担になる場合は、休憩、日程の分割、同席者、書面での回答など、本人が話しやすい方法を確認してください。十分に配慮してヒアリングを行うようにしてください。メール、業務記録、録音などは、事実確認の資料になり得ます。取得方法や社内での扱いが適切か、必要に応じて弁護士や社会保険労務士へ確認してください。
社内だけで公平な確認が難しい場合は、法的判断は弁護士、労務対応は社会保険労務士、社外での事実確認は調査会社など、目的に応じて役割を分けてください。
事実確認後に、必要な対応を決める
事実確認後は、関係者への注意、指導、配置や就業環境の見直しなど、必要な対応を検討します。 確認された行為の重大性、安全への影響、就業規則を踏まえて必要な措置を決めます。接触を避けるなど、注意や指導より先に安全確保が必要な場合もあります。
相談者への継続的な支援
事実確認後の対応だけでなく、相談者の安全、就業環境、再発防止まで継続して確認してください。
相談者の体調と、安心して働ける環境が戻っているかを継続して確認してください。 心身への影響が見られる場合は、本人の意思を尊重し、産業医や医療機関への相談、休暇、業務調整などを検討します。
会社として嫌がらせを予防するためにできること
会社内での嫌がらせは表面化しにくく把握が難しいため、未然に防ぐことにも注力していくことが重要となります。 どのような対策によって嫌がらせを予防すればいいのでしょうか。
懲戒処分についての規定を定める
就業規則には、禁止する行為、相談手順、事実確認、確認された行為への措置を明記し、全社員へ周知してください。
そして懲戒規定について定めるだけでなく、定期的な社員教育を行い、その内容を社員たちに周知することで嫌がらせやいじめを抑止する効果が期待できます。
相談窓口を設置する
相談者が一人で抱え込まないよう、相談窓口、秘密保持、不利益な取扱いをしないことを繰り返し周知してください。
メンタルヘルス対策をする
嫌がらせが起きにくい環境を作るには、相談窓口、管理職教育、業務負担、職場の孤立を定期的に見直します。行為の背景をストレスだけで説明せず、業務負担、指揮命令、評価、職場の孤立などを確認します。
背景に事情があっても、嫌がらせを正当化はできません。行為への対応と、職場環境の改善を分けて進めてください。 そうならないためにも、会社としてメンタルヘルス対策を行い、社員たちのストレス軽減に努めるようにしましょう。
相談体制と職場環境を定期的に点検する
相談窓口が使われているか、管理職が相談を止めていないか、業務負担や孤立がないかを定期的に点検します。
ハラスメントの相談と、横領や情報漏えいの兆候は、同じ原因と決めつけず別々に確認してください。 全社員を疑う調査ではなく、相談体制、職場環境、再発防止策が機能しているかを確認します。
まとめ
今回は、会社で起こる嫌がらせの特徴やパターン、そして会社が社内での嫌がらせを放置するリスクや適切な対処法について解説してきました。
従業員同士の嫌がらせに会社が関与する必要はないと考えがちですが、倫理的な観点や嫌がらせによって起こるさらなる問題へのリスクマネジメントの観点からも会社として積極的に取り組まなければならないと言えます。
会社内で起きている嫌がらせへの対処法に不安があったり、企業内調査に疑問があったりする場合は、ぜひお気軽に当事務所へご相談ください。
一人で抱えたまま、答えを決めなくて大丈夫です
社内で起きた日時、場所、言動、相談後の対応を分けて送ってください。
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