KW社内不倫は倫理的に問題ではあるものの、プライベートなことなのであまり口出しできないなと感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。
しかし、社内不倫を放っておくと、業績悪化につながるだけでなく、不倫している社員の配偶者から会社が管理不足だとして訴えられるなどのリスクもあり、様々なトラブルを招く可能性があります。
特に会社の役員が社内不倫をしている場合、不正人事が行われたり社外に知られて社会的信用を失ったりと立場がある社員だからこそのトラブルに発展することもあります。
今回は、社内不倫が招くトラブルのリスクや、社内不倫している役員に対してどのような処分が適切なのか、解雇することは可能なのかについて解説していきます。
役員の社内不倫を放置することによるリスク
役員が社内不倫している場合、重要なポジションにいるからこそなかなか注意できず、放任してしまうことも多いかと思いますが、社内不倫は様々なトラブルを招く恐れがあります。
特に役員という立場だからこそのリスクもあるため、社内不倫を放っておくのは得策とは言えないでしょう。
不倫相手の夫や妻が会社に怒鳴り込んでくる
不倫に気が付いた夫や妻が会社に怒鳴り込んでくることは珍しくありません。不倫されたことに大きなショックを受けてしまうと冷静な判断ができなくなる人も多く、直接怒鳴り込んできたり、会社に何度も怒鳴りながら電話をかけてきたりする場合があります。
そうなってしまうと怒鳴り込んでくる夫や妻への対応でリソースが取られて通常業務に支障が出ますし、社内不倫が起きていることが全社的に知られてしまいモチベーションが下がる社員も出てきてしまいます。
役員の社内不倫が社外に知れれば社会的信用が落ちる
不倫は夫や妻、子供を裏切る行為のため、社会的に非人道的で良くないこととされています。そのような非人道的な行為を会社の重要なポジションについている役員がしていることが取引先や顧客にバレてしまうと社会的信用を失ってしまうことは避けられないでしょう。
特に最近ではSNSで噂が広がると、一気に拡散されて炎上トラブルになることも珍しくありません。
その結果、取引先が離れてしまったり顧客を失ってしまったりと業績に直接悪影響を及ぼす可能性も出てきます。
役員という立場を利用して不正人事を行う
役員ということはある程度の権力を持っているため、不倫相手を可愛がって本来の人事では行わないような特別な昇進や昇給をさせてしまう恐れもあります。
周りから見ても明らかな不正人事だとわかってしまうと、真面目に仕事をしている優秀な社員のモチベーションが下がることは避けられませんし、会社としても不正な昇給に対して給料を支払わなければならなくなってしまいます。
役員の社内不倫を知った優秀な社員が辞めてしまう
自分の上司や会社の経営を担っている役員が社内不倫していると社員たちが知ったらショックを受けますし、仕事のやる気が失せてしまいます。
優秀な社員ほど社内不倫を許すことができず、辞めていってしまう可能性も出てくるでしょう。
社内不倫中に本人同士が社内でイチャイチャしたり、逆に喧嘩して険悪な雰囲気になったりすると、その空間に耐えられず一気に複数の社員が辞めてしまうケースもあります。
振られた方がストーカー化する
社内不倫を放っておくうちに自然に破局することもありますが、酷い別れ方をしてしまうと振られた方がストーカーのようになってしまうこともあります。
会社の行き帰りで付きまとい行為をしたり、勤務中にも社用のメールで何度も送ってきたりすると、業務に支障も出てきますし、ストーカー行為がエスカレートしてしまうと刑事事件にまで発展するリスクも出てきます。
このように、役員の社内不倫を放っておいてしまうと会社にとって様々なトラブルを招くことになり、業績悪化や社会的信用の喪失、優秀な社員を失うことにつながる可能性が大きくなるのです。
社内不倫をした役員を解雇することは可能?やりすぎ?
社内不倫の結果、業績悪化を招いたり社内でさらなるトラブルを起こしたりしている場合、その役員を辞めさせたほうがいいのではと考える方もいらっしゃると思います。
しかし、現在の日本において解雇することは簡単なことではありません。
社内不倫で会社に不利益をもたらしていても解雇することはできないのでしょうか。
社内不倫を理由に解雇すると基本的には不当解雇になる
結論から申し上げますと、現在の判例では社内不倫を理由とする解雇は基本的には不当解雇とされてしまいます。
不倫解消後にストーカー行為に及んだケースや業務中に不倫関係を楽しむメールのやりとりを何通もしていたケースであっても、裁判所の判断は、社内不倫が会社の業務に重大な影響を与えたとまではいえず、「解雇するのは重きに過ぎるといわざるを得ない」などとして解雇は不当であるとすることがほとんどです。
社内不倫を理由とする解雇が正当とされた事例
一方で社内不倫を理由に解雇することが正当だと判断された事例も存在します。
不倫関係にあった社内の女性社員が妊娠し、中絶、退職に至ったケースでは、女性社員が退職したことが会社の損害であり、また今後女性社員を採用するうえで悪影響が予想されることを考慮して、解雇が正当だと認められたケースもあります。
ただ、会社的には大きなダメージを受けたと感じていても裁判所が解雇を正当だと判断するケースは極めて稀なので、解雇を検討している場合は弁護士にアドバイスをもらいながら手続きを進めていくのが安全です。
解雇はできなくても適切な懲戒処分を行い社内秩序を守る
社内不倫が会社に対して大きな悪影響を及ぼした場合であっても、解雇することはハードルが高く難しいということはすでにお伝えしました。
しかし、解雇することはできなくても、社内不倫が他の社員たちのモチベーションに悪影響を及ぼしたり取引先との関係を悪化させたりと様々なトラブルを生み出している場合、社内不倫をした役員をそのまま放置するのも適切ではありません。
正しく処分を行い、社内秩序を守るようにするのがベストです。
解雇以外の懲戒処分
解雇する以外にも懲戒処分には色々な種類があります。
具体的には
・戒告
・減給
・出勤停止
・降格
・退職勧告
が挙げられます。
社内不倫が会社にどの程度の影響を及ぼしたかによって適切な処分を選んで行うことが大切です。どの程度の処分が適切かの判断が難しい場合も弁護士に相談しながら進めるのが良いでしょう。
参考記事:社内不倫を予防するための対策と発覚した場合に会社が取るべき対応
懲戒処分をする際は明確な証拠が必要
懲戒処分をする場合は社員の給料や立場に関わってくることなので、明確な証拠を元に判断しなければなりません。
社内不倫しているという噂話で判断するのではなく、社内不倫をしている証拠や社内不倫が業務に具体的にどのような影響を与えているのかについての証拠を押さえておきましょう。
社内不倫している役員が言い逃れしたり、逆に会社を訴えたりした場合に会社が有利に立てるよう、裁判でも認められる証拠を集めることが重要です。このような証拠は素人ではなかなか抑えるのが難しいため、調査のプロである探偵に依頼するのがお勧めです。
役員の社外不倫はどう対処していくべきか
役員が社内ではなく社外の人と不倫していることもありますよね。
社外、つまり会社や業務と全く関係のない人物との不倫であれば、役員本人の私生活の問題なので、会社として懲戒処分をすることはできません。
ただし、社外でも取引先の関係者と不倫している場合は話が変わってきます。取引先の関係者と不倫しているとすると、自社内の企業秩序だけでなく、取引先の秩序も乱してしまうことになります。
特に、こちらの社員が役員の立場で取引先の不倫相手が一社員である場合、役員のほうから不倫関係を持ち掛けてきたと取られる可能性が高くなり、こちらの非が大きくなってしまいます。結果として取引先の信頼を失い、取引を辞められてしまう可能性も出てくるでしょう。
このようなケースでは、たとえ社外での不倫であっても業務への支障が大きいため、懲戒処分をする対象になりえます。役員という立場上、退職勧奨もありえますが、まずは配置転換を行うことで不倫関係を解消させることが先決でしょう。
役員の不倫行為に対しては放置せず、すぐに対処していくことがトラブルを大きくしないうえでとても重要なのです。
まとめ
今回は、役員の社内不倫、社外不倫についての対処法や放置するリスクについて見てきました。
役員という会社にとって重要なポジションにいる人物だからこそ影響力もあり、社内不倫に気づいた時点ですぐに対処していくことが大切です。
なお、懲戒処分を行う場合は社内不倫をしていた事実や社内不倫が会社に及ぼした影響についての証拠が必要になりますし、どの段階の懲戒処分を行うべきかの判断が難しいと思いますので、自社内だけで解決しようとせず、探偵や弁護士など専門家に相談しながら適切に対処していくようにしてください。
当事務所でも社内不倫についてのご相談は随時受け付けておりますのでお気軽にご相談ください。