アルバイトの不正が発覚したときの対応策|頼れる専門家と不正の予防策

KWアルバイトを含め従業員たちを信用してお店の運営やお金の管理を任せている経営者の方も多いかと思いますが、管理を任せっぱなしにしすぎてしまうと、経営者が気付かないうちに、売上金を横領されたり、食材を盗まれたり、物品を横流しされたりしといったアルバイトによる不正が起きてしまい、会社として大きな損失を招いてしまうかもしれません。

 

ただ、中小企業では人材不足もあり、重要な仕事をアルバイトに任せなければならない場面も多く、不正を未然に防ぐのは難しいと感じている方も多いでしょう。しかし、アルバイトの不正が起きてしまう理由や実例を把握しておくことで多くの不正を防止することができます。

 

今回は、アルバイトの不正の不正でよくある実例や不正が起きてしまう理由、そしてアルバイトの不正が発覚したときに経営者が取れる対応策や頼れる相談先についてもご紹介していきます。

 

合わせて、アルバイトの不正を未然に防ぐための具体的な予防策についても解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

なぜアルバイトの不正行為が起きてしまうのか

不正を行うアルバイトは特別な「悪人」で、社内不正は自分の会社や店舗では起きるはずがないと思っている方も多いかもしれませんね。

 

当事務所に社内不正の調査を依頼される経営者の方も口をそろえて「まさかうちの会社でこんな不正が起きるなんて・・・」とおっしゃいます。

 

しかし、不正行為は起こるものなのです。なぜアルバイトの不正行為が起きてしまうのかについては多くの研究がされていて、不正が起こる理由として「不正のトライアングル」という理論が提唱されています。

 

これはアメリカの犯罪学者 ドナルド・R・クレッシーとW・スティーブ・アルブレヒト博士がともに導き出した理論で、不正行為は「機会」「動機 」「正当化」の3つの要素が揃ったときに発生すると考えられています。

 

たとえば、アルバイトとして働いている人物が「借金をしていてお金に困っている」という【動機】があったとします。そんなときにある日のレジ締めの担当が自分だけで「レジのお金を着服してもバレる可能性がかなり低い」という【機会】ができてしまうと、普段から心の中に秘めていた「そもそもこんな安い給料で働かされているのに福利厚生もたいしてない職場環境が悪い。少しくらいの着服はみんなやっている」という【正当化】が同時に起きてしまい、結果不正行為に及んでしまいやすくなるのです。

 

つまり、どんなに真面目なアルバイトでも、このような偶然が重なってしまうと環境や状況次第で不正を働いてしまう可能性があるということです。

 

 

アルバイトの不正行為の実例紹介

前の章で、どれだけ信用できそうなアルバイトでもタイミングによっては不正をしてしまうことはご説明しました。どの企業もアルバイトによる不正行為は他人事ではないですし、特に本社と現場のコミュニケーションが取りにくく、金銭管理を現場のアルバイトに任せなければならないような中小規模の飲食店では不正が起こりやすくなります。

 

実際、どのような不正が行われているか実例を見ていきましょう。

 

 

現金の横領

飲食店や雑貨店などのレジで起こりやすいのが現金の横領です。周りの目を盗んでレジから現金を抜き取るという王道のやり方を行うアルバイトもいますし、閉店前にレジを閉めて閉店までの売上を着服するという方法を取る場合もあります。

 

 

経理上の不正

経理上の不正もよくある実例です。

 

仕入れ担当をしているアルバイトが実際よりも多い金額で仮払金を申告してその差額を着服したり、実際には利用していない交通費を申請して着服したりというのは常套手段と言えるでしょう。

 

 

物品の横領

飲食店であれば店の食材を盗んだり、企業であれば社内の事務用品などを盗んだりという不正行為もありえます。

 

在庫管理を徹底していないと物品の横領に気が付くのが遅くなってしまい、被害が拡大した時に判明してしまう可能性も高くなります。

 

特に、食材に関しては管理すること自体にコストがかかるので、正確な数を毎日数えて把握している店舗は案外少なく、アルバイトもそこを狙って横領してくるので不正行為として起こりやすい種類のものです。

 

 

不正打刻を行う

「もう少し給料が欲しい」「少しくらいならバレないだろう」「みんなやっているし」という心理から不正打刻を行うアルバイトも少なくありません。

 

本来であれば18時に勤務が終了しているのに18時半以降に打刻するなど、1人が1回だけ行う程度であれば企業としても被害は大したものになりませんが、不正打刻は癖になってしまうことが多いので、塵も積もれば働いてもいない時間分の給料を出さなければいけなくなってしまいます。

 

さらに、不正打刻に罪悪感を持たないアルバイトが多いため、周りにも伝染して多くのアルバイトたちが不正打刻を行うようになるとかなり大きな打撃になってしまいます。

 

 

アルバイトの不正が発覚した時に経営者が取れる対応策

アルバイトの不正が発覚した時の対応は、基本的にケースバイケースです。不正を行ったのが1度目であればあまり重い処分にはしないことが多いですが、何度も不正を繰り返している場合などは会社や店舗を辞めてもらうことになるでしょう。

 

ただ、強制的に解雇することや刑事告訴をすることはペナルティが重すぎてアルバイト本人も抵抗するでしょうし、対応しなければいけないほかの従業員の負担も大きくなってしまうため、現実的ではありません。

 

そこでこの章では、アルバイトの不正がわかったらどのように対応するのが現実的かつ適切なのか、いくつか対応策の候補をご紹介していきます。

 

 

不正の証拠を掴む

アルバイトの不正に対してきちんと処理していくためには、アルバイト本人が不正を認めざるを得ない確固たる証拠が必要です。

 

証拠がなければ、不正の事実を認めず言い逃される恐れがありますし、損害賠償請求や懲戒処分などの対応をすることもできなくなってしまいます。

 

まずは、すべての処理をスムーズに行うために最初に証拠集めを行うことが大切です。なお、不正の証拠については企業調査に強い調査会社に依頼するのがお勧めです。

 

 

示談にする

金銭を盗まれている場合や材料などを大量に盗まれて金銭的な被害が出ている場合などは示談にして本人と話し合ったうえで返済の計画を立てていく方法が考えらえます。

 

示談にする場合も不正の証拠があるのとないのとでは、話し合いがスムーズに進むかどうかが変わってきますので、証拠を押さえてから示談にするようにしましょう。

 

 

身元保証人に請求する

被害金額を本人から回収できないというケースもありえますが、その場合は身元保証人に請求することで対応できます。

 

アルバイトとして雇う際、両親や親族を保証人とする『身元保証書』を提出してもらっていると思いますので、アルバイト本人から損害額を回収できない場合は、身元保証人に代わりに請求してお金を回収しましょう。

 

 

本人を解雇する

不正行為の内容や不正行為の頻度、悪質性によっては解雇することも考えられるでしょう。ただし、不正行為を行った動機やこれまでの会社や店舗への貢献度によって解雇するかどうかはしっかりと吟味したうえで決定すべきです。

 

なお、解雇することはアルバイト本人への金銭的なダメージが大きくなってしまうので、解雇したアルバイトから不当解雇だと訴えられるリスクもあり、状況によっては会社が不利な立場になってしまいます。

 

不正行為を理由に解雇したい場合は、まず不正行為の証拠を確実に押さえ、本人と話し合ったうえで自主的に退職してもらうよう説得するほうが安全でしょう。本人が退職を拒んでいてそれでも強制的に辞めさせたい場合は弁護士に相談しながら不当解雇にならないように慎重に進めていくことが大切です。

 

 

不正に対して経営側が有利に対応するために相談すべき専門家

前の章でアルバイトの不正に対しての対応策についてお話ししましたが、慣れていないとなかなかスムーズに対応するのが難しいと思います。また、慎重に行わなければ会社側が不利になってしまうリスクもあるため、できれば専門家に相談しながら進めていくのが安全です。

 

この章では、不正行為に対して経営側が有利に進めていくための相談先について見ていきましょう。

 

 

弁護士

盗まれたお金や物品に対しての損害賠償請求を行う場合、手続きなどがかなり煩雑になってしまいますので、弁護士に依頼して代理で行ってもらうのがお勧めです。

 

弁護士に依頼することで損害賠償請求額も高額にできる可能性が上がりますし、普段の業務に支障を出すことなく対応することができます。

 

また、不正行為を行ったアルバイトを辞めさせたいという場合も弁護士が頼りになります。アルバイトを正当に辞めさせるためにどのような証拠が必要なのか、自主退社をしてもらうためにどのように交渉していくべきなのかについてアドバイスをもらうことができるでしょう。

 

 

探偵

損害賠償請求を行う場合も、示談で話し合う場合も、アルバイトを辞めさせる場合も、不正行為の証拠は必要不可欠です。

 

証拠がなければ言い逃される恐れがありますし、対応をスムーズに進めていくのがかなり難しくなってしまうでしょう。

 

探偵に調査を依頼することで確実な証拠を押さえてもらえます。なお、損害賠償請求などの法的措置を取る場合や懲戒解雇する場合などはより精度の高い証拠が必要になりますので、探偵選びも慎重に行うべきです。

 

多くの探偵では浮気調査をメインにしていて、企業の不正調査の実績が少ない事務所がほとんどなので、取り扱いの案件に企業調査があるかどうか、実績は豊富にあるかどうかを依頼前にしっかり確認しておいてくださいね。

 

 

警察

盗まれたお金が大金に上っている場合や、盗まれた商品が高価で被害額が高額になるような場合は、警察に被害届を提出するという方法も考えられるでしょう。

 

お金を盗んだという証拠が取れていれば、アルバイトを逮捕してくれるケースもあります。

 

ただ、被害額がそれほど大きくない場合や悪質性が低い場合、不正行為の証拠が取れていない場合は警察が積極的に動いてくれることは少ないので、もし警察が動いてくれないようであれば、弁護士や探偵を頼るのがベストでしょう。

 

 

アルバイトの不正を未然に防ぐためにできること

一度アルバイトの中で不正行為が起きてしまうと、周りのアルバイトにも伝染して不正の被害が大きくなる恐れもありますし、そもそも不正行為に対しての事後対応で通常業務に支障をきたしてしまう可能性が出てきます。

 

そのため、アルバイトによる不正行為は未然に防ぐことが何より大切です。そこで最後の章ではアルバイトの不正を未然に防ぐためにできる予防策についてご紹介していきます。

 

 

レジシステムを見直す

不正行為の温床になりやすいのが改ざんしやすいレジシステムです。そのため、レジシステムを変えるだけでかなり不正行為の予防につながります。

 

最近は改ざんができないようになっているPOSレジが出てきていますので、レジをPOSレジに変えたり、現金自体を扱わないキャッシュレス決済の導入をしたりすることを検討してみるといいでしょう。

 

POSレジは改ざんができないようになっているうえに、金額集計も簡単にでき、記録・集計したデータからあらゆる分析や管理を行うこともできるようになっていますので、従業員の負担軽減や業務の効率化につなげることも可能です。

 

 

売り上げと現金、棚卸残を毎日チェックする

レジで打ち出した金額と現金残高を毎日チェックすることは不正行為を予防するうえで必須と言えます。売上でおかしな点が出てきた時点で異常を察知することができれば、不正行為の早期発見につながりますので、被害金額が高額になるのを防ぐことができます。

 

また、棚卸残高も毎日チェックすることで食材や商品が横領されていることに気付くタイミングも早くなります。

 

売上金額や棚卸残高を毎日チェックしているということ自体、内部けん制にもなりますので、従業員による不正が起きにくい環境を作り上げることができるでしょう。

 

 

防犯カメラをつける

複数の店舗を構えていて、各店舗に目が行き届かない場合は、防犯カメラの設置も検討するといいでしょう。

 

ただし、防犯カメラはプライバシー問題などデリケートな点もありますし、防犯カメラを設置することで従業員たちが疑われているように感じていい気がしないのも事実です。

 

アルバイトの不正を防ぐために防犯カメラを設置する場合は、経営者が丁寧に説明することが重要です。

 

「防犯カメラで記録をしておけば、万が一売上金額が合わずに不正が疑われたときにみんなの身の潔白を証明できるので、みんなを犯罪者として疑わないために防犯カメラが必要なんだよ」と従業員を守るために設置するという意思を説明してあげることが大切です。

 

 

アルバイトと日ごろからコミュニケーションを取っておく

不正が起きてしまう理由として「不正のトライアングル」について説明しましたが、その中の一つに「動機」がありましたよね。不正を防ぐためにはアルバイトたちの動機についても日ごろからチェックしておくことが大切です。

 

アルバイトたちにギャンブル癖はないか、仕事に不満は持っていないか、お金に困っている様子はないか、など、アルバイトたちと日ごろからコミュニケーションをしっかりと取っておくだけでも不正のきっかけに気づきやすくなるため、予防につながるでしょう。

 

 

まとめ

不正行為が起きてしまうと、会社としても被害を受けますし、自分の会社で不正行為が起きているとわかったら他の従業員たちのモチベーションも下がってしまいます。

 

もちろん、不正行為を行うアルバイト本人が悪いのですが、不正行為を行いやすい環境を放置してしまっている経営者にも責任があると言えるでしょう。

 

そのため、不正防止のために仕組みつくりを行ったりアルバイトたちと積極的にコミュニケーションを取ったりとできる防止策は徹底して行うようにすることが大切です。

 

そして、万が一不正行為が起きていることが判明したら、すぐに不正の証拠を押さえて適切に対処していくようにしましょう。