SNSやネット上で会社についての誹謗中傷の書き込みを見つけると、誰が書き込んだのかわからず不安になりますし、憤りも感じますよね。 ライバル会社が書き込んだのか?と疑ってしまうかもしれませんが、SNSやネットで誹謗中傷を書き込んでいるのが会社に勤務している問題社員というケースは少なくありません。
ネット上の誹謗中傷は瞬く間に世界中に広まってしまい、事実無根の風評被害につながるリスクが大きいですし、誹謗中傷の書き込みが拡散されたあとに投稿者が書き込みを削除してしまうと犯人特定が難しくなっていきます。 そのため、誹謗中傷の書き込みを発見したらすぐに対処していくことが重要になります。
今回は、誹謗中傷を書き込む問題行動の危険性や、誹謗中傷の書き込みを見つけた時の適切な対応方法について解説していきます。 さらに、経営者の多くが気になっているであろう「誹謗中傷をしている問題社員を辞めさせることができるのか」という点についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
問題社員とは?問題社員の種類と特徴
まずは、問題社員の種類や特徴など基本的なところから見ていきましょう。問題社員には様々な種類がありますが、ここでは、問題社員の典型例と特徴についてご紹介します。
社内での秩序を乱す問題社員
部下や弱い立場の社員に対してパワハラをしたり、同僚の一人をターゲットにしていじめをしたりするような社内での秩序を乱す社員は立派な問題社員と言えます。 また、最近では上司や社長に対して「それってパワハラですよね?」などと発言し圧力をかける逆パワハラをする問題社員も増えてきています。
モンスターペアレンツ持ちの問題社員
学校の教師たちが悩まされているようなモンスターペアレンツが会社まで乗り込んでくるケースもあり、そのようなモンスターペアレンツ持ちの社員も会社にとっては問題社員です。 「うちの子供の給料が低いのは差別だ!」 「うちの子供は優秀なんだからもっと昇進すべきだ」 などと会社に乗り込んで社長や上司に発言してきます。
本人ではないので対処に困り、貴重な業務の時間も割かなければならなくなってしまうため、扱いに困る問題社員と言えるでしょう。
極端に仕事ができない問題社員
いくら仕事を丁寧に教え込んでも成長せず、いつまで経っても基本的な業務すらできない社員もローパフォーマーの問題社員です。 業務成績が著しく悪いにも関わらず、その自覚がないため改善意欲もなく、周りがその社員の業務までフォローしなければならなくなってしまうため、優秀な社員の業務効率まで下げてしまうというリスクもあります。
自分がすべて正しいと思っている問題社員
自分の意見をしっかりと持っていることは大切ですが、他の人の意見を一切聞かずに自分がすべて正しいと思っているような社員は問題社員と言えます。 自分がすべて正しいと思っているので、たとえミスをしても認めず改善しようとしません。また、周囲との協調性もないので次々とトラブルを起こすという特徴もあります。
会社に逆恨みする問題社員
社会人として働いていれば一つや二つ、理不尽なことはありますよね。
今月はかなり営業成績頑張ったのにあまり評価されず給料も上がらなかった・・・
必死で作成した提案書を却下されてしまった・・・
このようなことは誰にでも起こりますし、本来は「自分の実力が足りなかった」と反省すべきところですが、問題社員となると「自分を評価しない会社が悪い」と会社に対して逆恨みを始めます。 心で思っているだけならまだいいのですが、問題社員になるとSNSやインターネットで会社の誹謗中傷を書き込むようになります。
今回の記事で誹謗中傷を書き込む問題社員の対応について詳しくお伝えしていきますが、会社に逆恨みする問題社員の行動は放っておくとさらなるトラブルを招きますし、ネットでの誹謗中傷を一度書き込まれてしまうと解決に時間がかかってしまいます。 会社を恨んで誹謗中傷する社員は会社にとって最も厄介な問題社員と言えるかもしれません。
絶対に放置してはいけない問題社員の問題行動
先ほど述べたような、問題社員によるパワハラ、セクハラ、会社への誹謗中傷などの問題行動は絶対に放置してはいけません。 解決するには時間がかかりますし、通常業務とは別に労力を割かなければいけないので面倒なことではあるのですが、だからと言って放置してしまうとさらなるトラブルが次々と起こってしまう可能性があります。
誹謗中傷などの問題行動を放置するとどのような問題が起こるのか
会社についての誹謗中傷の内容がネットやSNSなどで書き込まれてしまうとどのような問題が起こるのでしょう。
具体的には、
・誹謗中傷の書き込みを見た取引先との関係が悪化してしまう
・口コミサイトで誹謗中傷を見た顧客が離れていく
・優秀な社員のモチベーションを下げてしまい業務効率が下がる
・問題行動を起こす問題社員に嫌気が差した社内の優秀な人材が離職してしまう
・誹謗中傷を鵜呑みにして上司や社長の指示に従わない問題社員が増えていく
などが考えられます。
このように誹謗中傷などの問題行動を放っておいてしまうと、取引先や他の社員にも問題が広がり、経営者として会社をコントロールすることができなくなってしまい、会社の収益も悪化してきます。 そのため、問題を放置したり、黙認したりせずに、すぐに適切な対応をとることが非常に重要になります。
会社についての誹謗中傷が書き込まれたことがわかったときの対応
会社についてや経営者についての誹謗中傷の内容がSNSやネットに書き込まれたことがわかったら、どのように対応していけばいいのでしょう。 ネット上での誹謗中傷についての対応は少しでも間違ってしまうとトラブルがさらに悪化してしまう恐れもあるので、こちらに紹介する方法で正しく対処していきましょう。
事実の調査と証拠収集
誹謗中傷の書き込みに気が付いた時点で、会社としてまず最初に取るべき対応としては事実の確認と証拠集めです。 インターネット上の書き込みの場合、誹謗中傷にあたる投稿を本人が削除してしまうと、誹謗中傷は拡散される恐れがある一方で個人の特定が難しくなってしまいます。
そのため、所属している問題社員が誹謗中傷の記事を投稿したという事実を把握した場合には、すぐに投稿記事やツイートを保全する必要があります。証拠収集の際に手間取ってしまうようなケースでは、ネットトラブルに強い調査会社に依頼する方法もいいでしょう。
誹謗中傷を書き込んだ社員を特定する
SNSは匿名アカウントでの利用ができ、誹謗中傷を書き込むような場合は匿名で行われることがほとんどです。そのため、誹謗中傷を書き込んだのが本当に会社に所属している社員なのかどうかの特定も欠かせません。
匿名アカウントの正体を調べるための手順としては、まずIPアドレスを割り出し,誰が問題の記事を書き込んでいるかを特定しなければいけません。 IPアドレスを割り出す方法としては、SNSの運営者に対して開示請求する方法と、もしも応じてくれなかった場合に裁判手続をするという方法があります。
IPアドレスを割り出せたら、その情報をもとにプロバイダを割り出します。プロバイダが判明したらプロバイダに対して発信者情報の開示請求を行い、発信者の氏名や住所等の個人情報を入手することで誹謗中傷を書き込んだ社員が誰かを特定します。
誹謗中傷の書き込みから「明らかにあの社員だろう」と思っていても、証拠がなければ聞く耳を持たずに言い逃れされる可能性が高いですし、名誉毀損だと犯人から逆に訴えられてしまうリスクも大きくなります。 犯人の特定については、ネットトラブルに強い弁護士に依頼するか調査会社に依頼するほうがスムーズにできるでしょう。
誹謗中傷の内容の書き込みを削除するように求める
誹謗中傷の書き込みをした社員を特定出来たら、書き込みを削除するよう求めましょう。ただし、削除する前に必ず証拠としてその内容の投稿を印刷するなどして証拠として押さえておくことも重要です。
一刻も早く会社についてのマイナスな内容の投稿は消し去ってもらいたいと思うのは当然のことですが、今後の懲戒処分や法的措置を検討する際に重要な証拠となりますので証拠保全は確実に行ってください。
誹謗中傷についての指導を行う
問題社員に対して誹謗中傷の書き込みをしないようにという指導を行うことも重要です。指導するとますます問題社員からの嫌がらせが増えて厄介になると思い、見て見ぬふりをするケースも多いのですが、問題社員の問題行動を放っておくと周りにも悪影響を及ぼす可能性は否定できませんし、さらにトラブルが悪化する恐れがあります。 問題行動についてきちんと丁寧に指導していくようにしましょう。
定期的に面談を行う
会社の誹謗中傷がSNSなどに書き込まれたというトラブルの有無にかかわらず、このような事態を防ぐためにもすべての社員と定期的に面談を行うことが重要です。 定期的に社員たちと面談を実施することが、問題社員化を防ぎ、より良い社員を育て、より良い職場環境を作るための基本になります。
社員からの意見を聞いていくことで社員がどのような不満を抱えているのかを把握できますし、「会社が自分の意見に耳を貸してくれる」とわかってもらうことで、ネットに誹謗中傷を書き込むような行為を未然に防ぐことにつながります。
改善が見られなければ懲戒処分を検討する
誹謗中傷を書き込むなどの問題行動に対してしっかりと指導したり、定期的に面談を行ったりしても反省せず問題行動が改善されない場合は、懲戒処分を検討することが必要な段階になってきます。
懲戒処分を行うことで問題社員本人に警告を与えると同時に、周囲の社員たちに対しても問題行動を許さないという会社の姿勢を明示できるので会社にとって必要な規律を正すことができます。
なお、懲戒処分には、「戒告」「減給」「出勤停止」「降格」「退職勧奨」などがありますが、誹謗中傷の内容や誹謗中傷によって引き起こされた被害の状況に応じて適切な懲戒処分を選択することが必要です。 どのような懲戒処分が適切か判断が難しければ、弁護士に相談しながら進めていくことをお勧めします。
誹謗中傷による被害状況によっては法的措置を検討する
社員によってなされた誹謗中傷の書き込みによって会社が受けた被害の程度によっては、その社員に対して法的措置を検討する必要も出てくるでしょう。 法的措置の内容としては、名誉毀損・侮辱罪などの刑事責任、損害賠償請求などの民事責任を取ることが考えられます。
会社の誹謗中傷をする問題社員を辞めさせることはできるのか?
先ほど、懲戒処分について触れましたが問題社員を辞めさせることは懲戒処分の中でも最も重い「懲戒解雇」に当たります。 経営者であれば会社を裏切ってネットに誹謗中傷を書き込むような社員にお給料は払いたくないと思うでしょうし、問題社員がいることでほかの社員にも影響が出るのであれば辞めてもらいたいと思うはずです。
この章では、問題社員を辞めさせたいと思っている方のために、解雇するための手順やその難しさについて解説していきます。
解雇のハードルはとても高い
テレビの世界では「クビだ!!もう明日から来なくていい!!」と会社を辞めさせられているシーンはよく見かけますが、現実の世界では社員の解雇は簡単にできるものではなく、特に日本においては解雇のハードルはかなり高いです。
これまでの裁判でも、ある会社の社員が通勤手当を不正受給していたことを理由に解雇を行ったケースや、ある会社の上司が部下にハラスメントをしたことを理由に解雇をしたケースで、どちらも「客観的に見て不適切な行動ではあるものの、解雇するほどではなく処分が重過ぎる」として無効の判断がされています。
現在の日本においては会社が問題社員だと思っているような社員ですら辞めさせることはかなりハードルが高く、慎重に判断する必要があるということは頭に入れておきましょう。
懲戒処分をしても改善しなければ退職勧奨を行う
問題社員を辞めさせたいと思ったら、いきなり解雇するのではなく上記で説明した懲戒処分を段階的に行っていくことが必要です。懲戒処分を軽い物から順に行い、都度指導を繰り返しても問題行動が改善しないような場合に、退職勧奨を行います。
退職勧奨は、社員が自分の意思で退職するように説得し、社員の同意を得て退職させることを指します。退職勧奨は、懲戒解雇と比べて、同意を得ている分トラブルになりにくく、不当解雇で訴えられるリスクも低いというメリットがあります。
退職勧奨に応じなければ解雇を検討する
問題社員が退職勧奨にも応じない場合にはじめて解雇を検討していきます。ただし、先ほども述べたように間違った手順で解雇してしまうと、解雇後に不当解雇であると主張して、解雇の撤回要求や給料の未払い分の請求をしてくるケースも多いので慎重な判断していきましょう。
また、解雇する際は、問題社員が行っていた誹謗中傷の内容やそれによる被害状況などの証拠をそろえることも大切です。 たとえ裁判になったとしても会社が有利になるような証拠集めについては、ネットトラブルに精通している調査会社に調査を依頼しておくと安心ですね。
まとめ
ネットやSNSへの誹謗中傷トラブルはないに越したことはありませんが、問題社員に限らず社員が愚痴程度の感覚で投稿してしまう場合もあります。もちろん、問題社員が執拗に嫌がらせとして悪意を持って誹謗中傷を書き込む場合もあります。
いずれにしても、もしも誹謗中傷の投稿がされた場合にはネット上の投稿に対して適切に処理していくこと、そして問題社員にも適切な処分をしていくことが求められます。 SNSの普及によって誹謗中傷などの風評被害のトラブルは後を絶ちませんので、今後、会社が取り組んでいかなければならない問題であることは間違いないでしょう。
問題社員の嫌がらせや誹謗中傷にお困りの場合や、問題行動の客観的で確実な証拠集めを検討されている方は、是非、当事務所にご相談ください。