取り込み詐欺」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。特に換金しやすい商品を狙って行われている詐欺の一種で、企業を狙って近年増え始めています。

取り込み詐欺の手口は非常に巧妙で、意識的に気をつけていても被害に遭ってしまう危険性があるため注意が必要です。 取り込み詐欺に限ったことではありませんが、詐欺被害に遭ってしまった場合、だまし取られたお金を取り戻すことは非常に困難なため、被害に遭わないためにどのような対策を取っておくべきかを把握していくといいでしょう。

今回は、取り込み詐欺の概要と実際に行われている手口、そして会社を取り込み詐欺から守るために企業がとるべき対策についてご紹介します。

取り込み詐欺とは

取り込み詐欺とは、商品を受け取っているにも関わらずその代金を払わずに踏み倒し、受け取った商品を売ってお金に換えるという詐欺の一種です。数回取引を繰り返して相手の警戒心を和らげ、その頃を狙って支払い方法を後払いにして商品を購入するのが特徴です。

通称、「パクリ屋」とも呼ばれています。

詐欺行為でだまし取った商品をお金に換える必要があるため、米や肉などの食品や、トナーカートリッジ、パソコン、タブレットといった電化製品などの換金性の高い商品が狙われやすいという特徴もあります。

社会的に大きな経済不安が起こっているときにこのような詐欺が横行しやすいと言われていますので、昨今のコロナ禍においてはより詐欺に警戒していくことが必要となるでしょう。 経営状況が芳しくない状態でこのような取り込み詐欺に遭ってしまえば、倒産の危機に陥れられるリスクもあります。

取り込み詐欺の主な手口

取り込み詐欺は詐欺の中でも特に手口が巧妙で、最初から詐欺を目論んで近寄ってきている会社なのかどうか見分けるのは難しいでしょう。 信頼できる取引先だと信用させたところで詐欺を働くため、詐欺に遭ったと確信できるまでにも時間がかかり、犯人に逃げられてしまうケースが多いのです。

ここでは、実際に多く使われている詐欺の手口をご紹介します。今後このような取引先が現れたら要注意です。

実在する会社のように見せかける

取り込み詐欺を行う詐欺集団は、まず健全に実在する会社のように見せかけてきます。 一般的な企業を装って、ターゲットとした会社の電話や問い合わせフォームに新規取引などの問い合わせをしてきます。

詐欺グループが装っている会社名やサービス名を検索するとしっかりとしたホームページがあったり、信頼できるような販売サイトを持っていたりすることが多く、ほとんどの方が実在する会社だと思い込んでしまうでしょう。 しかし、実際は社歴のある休眠状態の会社を買収するなどして実在する会社のように見せかけていることがほとんどです。会社のホームページや販売サイトを運営しているという理由だけでは信頼できる会社だと判断するのは難しいのです。

現金払いで少額の取引を繰り返す

ターゲットとなる会社を安心させて警戒心を解かせるために、次のステップとしては実際に取引を行います。 詐欺グループの最終的な利益を大きくするために少額の取引を繰り返しますが、実際の取引をすることで相手を安心させようとします。

少額ではありますが現金払いで数回の取引実績を作ることで、信頼できる普通の会社であることをターゲットの会社に思い込ませようという魂胆です。

信用させたところで高額な取引を後払いで持ちかける

少額の複数回の取引によって信頼関係を作ってきたところでいよいよ詐欺グループが詐欺を行う段階に入ります。それまでは少額の取引を繰り返してきていましたが、いよいよ大口の取引を持ち掛けてきます。

そして、それまでは現金払いだったのが、「金額が高額になるので掛けにして欲しい」「今は資金繰りの関係で手元に現金がないので後払いにして欲しい」などそれらしい理由をつけて、後払いを要求してくるのが特徴です。 この段階で取り込み詐欺であることに気がつければいいのですが、多くの場合これまでの取引実績から相手を信用しきってしまっているので、相手の要求通りに後払いでの取引に応じてしまう被害が多いのです。

また詐欺グループはターゲットの会社の決算期や月末など少しでも売上が欲しいと思っているようなタイミングを狙って大きな取引を持ち掛けてくることが多いという巧妙さも持っています。売り上げが欲しいタイミングでそのような大口の取引を持ち掛けられるとついつい後払いであっても商品を売ってしまいたくなるのです。

しかし、実際には詐欺ですので商品を納品しても、支払期日に支払いがされることはありません。相手の電話やメールに連絡をしても連絡が取れず、名刺に書かれた住所に行ってもそこは空き地で事務所も何もないことを把握してから、取り込み詐欺の被害に遭ったことを知るのです。 これらの一連の流れが取り込み詐欺のよくある手口です。

取り込み詐欺に遭いやすい商品

取り込み詐欺は換金性の高い商品が狙われるということをお伝えしましたが、具体的にはどのような商品が狙われやすいのでしょう。 以下のような商品を取り扱っている企業は取り込み詐欺グループに狙われやすいため、より一層の注意が必要でしょう。

【狙われやすい商品】

・カー用品や化粧品などの日用雑貨

・米や肉、小麦粉などの食料品

・テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家電製品

・商品券、ギフトカード、切手など

以上の商品は換金性が高く需要も下がりにくいことから狙われやすい商品です。

コロナ禍に便乗した詐欺被害も増加傾向

取り込み詐欺の概要説明でも触れましたが、取り込み詐欺を含む多くの詐欺行為は、社会的な不安が大きくなっているタイミングに多く発生する傾向があります。 そして、コロナ禍における社会変化に便乗して詐欺を行う集団も多いのです。

例えば、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策としてリモートワークを取り入れる企業が急増しましたが、それをもっともらしい理由としてOA機器を大量発注し代金を支払わない取り込み詐欺が増えています。 また、コロナ感染予防対策のために商談もオンラインで行うようになってきており、直接対面したことのない取引先と取引をすることが珍しくなくなっています。そのようなことも被害が拡大している要因の一つと考えられるでしょう。

取り込み詐欺の被害に遭わないために実践すべき対策とは

取り込み詐欺に遭ってしまうと被害に遭った商品を取り戻すことも損害金を請求することも基本的には難しくなってしまいます。 そのため、企業としては取り込み詐欺被害に遭わないための対策を徹底していくことが重要です。この章では、詐欺被害に遭わないための有効な対策をご紹介します。

企業の信用調査を徹底する

詐欺集団に騙されないためには、取引を開始する前に怪しいかどうかの判断をするよう徹底することが大切です。具体的には、初めて取引をする会社にはすべて信用調査を行うようにすることが有効です。 信用調査では、代表者の経歴や業務実績、メインバンク、相手企業の現在と将来性などあらゆる点から調べてもらえます。

そのため、その企業が取引しても大丈夫そうか、支払い能力はあるかの判断がしやすくなるのです。 信用調査を徹底するだけで、詐欺集団の偽の会社を見極められるだけでなく、コロナ禍で倒産する可能性のある取引先を見極めることもできますので、既存の取引先に対しても定期的に調査を行うのが理想です。

取引の証拠を残す

同じような詐欺行為を頻繁に働いている詐欺グループの場合は警察からもマークされている可能性があります。詐欺集団を逮捕できれば運よく商品を回収できたり損害額を回収できたりする可能性も残っています。

その際には、詐欺を立証するうえで、取引の証拠が必ず必要になってきます。警察や弁護士に相談するにも、相手が詐欺行為を行おうとしていたことを証明できなければ動くに動けません。 取引する際には、必ず発注書や納品書を作成し、書面として残しておくようにしましょう。

取り込み詐欺会社の特徴を把握しておく

取り込み詐欺の会社かどうかの判断は非常に難しいものがありますが、共通するポイントもいくつかあります。チェックポイントを常に頭に入れながら取引先を見極める癖をつけておくことで、詐欺に遭ってしまう可能性を減らしていくことができます。

取り込み詐欺の詐欺会社かどうかを見破るチェックポイントとしては

・会社の設立から間もない

・本店が東京や大阪などにある

・会社を訪問しようとすると、外のカフェなどでの打ち合わせを希望される

・大手企業との取引や、取引実績などをやたらとアピールしてくる

・商品券、食料品、家電製品などの取引が主流

・取引する商品自体に興味を示さず、吟味しない

・商品が早急に大量に必要であることを強調してくる

・最初の数回の取引は現金で支払ってくる

などです。

これらの特徴に1つでも当てはまるものがある場合は、調査会社に依頼して本格的な信用調査を行うことをお勧めします。

まとめ

取り込み詐欺に関しての基本的な概要や手口をご紹介してきました。取り込み詐欺は手口が他の詐欺に比べて巧妙で、なおかつ企業を狙ったものなので被害金額も相当な額になってしまいます。 詐欺被害に遭わないためには取り込み詐欺についての知識を付けておき、取引先を見極める際は慎重に行うことが重要です。そのために信用調査を徹底することも有効でしょう。

また、万が一詐欺被害にあってしまったら警察に通報し告訴することもあるかと思いますが、その際には詐欺行為の明確な証拠が必要になります。 ただし、取引額がそれほど大きくない場合や被害に遭った企業が1社だけの場合は警察はなかなか本格的に動いてくれませんので、複数の被害企業と団結して詐欺を立証することがポイントになるでしょう。

いずれにしても証拠が必要になりますので、詐欺被害調査を専門家に依頼するようにしましょう。当事務所でも詐欺被害に関する調査を実施しておりますのでまずはお気軽にご相談ください。