KW: 仕事中にスマホでゲームをしている…
営業周りと言ってパチンコ店で時間を潰している…
不当に残業代を請求してくる社員がいる…
このように、どれだけ経営が上手くいっている会社であっても、社員の職務怠慢は珍しいことではありません。むしろ、職務怠慢な社員の存在に頭を抱えている企業は多いのではないでしょうか?
明らかに職務怠慢であると思っていても、解雇するなどの処分をするとなるとそのハードルは高く、裏付けとなる証拠データを適切に確保することが必要不可欠となります。しかし、どのような証拠データであれば十分なのか、どのように入手すればいいのか、なかなかわからないことも多いですよね。
職務怠慢な社員を辞めさせたいけれど、不当解雇で訴えられるのは避けたい、と悩んでいる経営者の方は少なくないでしょう。
今回は、職務怠慢として処分することができる要件や、安易に解雇することの危険性、証拠となるデータを適切な形で調査する方法について詳しく解説していきたいと思います。
職務怠慢と見なせるのはどういう場合?職務怠慢の要件
これって職務怠慢だよね?と思うことがあっても、明確な基準がわかっていないと判断が難しいと思います。
職務怠慢と言える対象は「雇用契約で定められている労働時間、および労務を果たさない債務不履行すべて」を指します。と言っても、どういうことか少しわかりにくいですよね。
ここでは職務怠慢の要件に該当する具体的な例をいくつかご紹介します。
遅刻や無断欠勤
社員は、雇用契約で定められた所定の労働時間を守り、過不足なく職責を果たす義務があります。
そのため、正当な理由なく遅刻したり、無断欠勤したりなど、社員が所定労働時間に満たない労働しか行わない場合は債務不履行となりますので、職務怠慢と言えることになります。
会社に損害がある
社員の故意または過失によって、会社に損害を与えた場合は「不法行為責任」が成立します。
または労務を行う上で必要な注意をしなかったことによって会社に損害を与えた場合は、「債務不履行責任」が成立します。
これらが成立し、会社に損害を与えたと判断できる場合は、職務怠慢として解雇することが認められることがあります。
たとえば、バスの運転手が居眠り運転をして交通事故を起こした場合は先ほどの「債務不履行」と「不法行為」の2つの要件が成立します。
ただ会社の管理に問題があり社員が過労状態になったために居眠り運転をしてしまったと判断できるような場合は解雇することは難しくなります。
不当な残業代請求
仕事をサボっているのに、もしくは本来の業務を行っていないのに、不当に残業代を請求することも職務怠慢の要件に当てはまります。
経営者から見ていれば、どの社員がサボりがちなのかすぐにわかると思いますし、残業代の請求が正当なものなのか、不当なものなのかもすぐに判断できるはずです。
しかし、サボっていて正当な理由での残業代請求ではないのに「それを立証する方法がない」という理由で諦めざるを得ない状況になっている会社がほとんどです。
ただ、最近では社員が仕事で使っているパソコンやタブレットなどのデバイスを調査し分析することで、業務をサボっていたのかどうかを客観的に証明することができるようになっているので、社員に対する懲戒処分や指導が行いやすくなってきています。
詳しくは後ほどの章で調査方法についてお伝えしていきますが、たとえば、残業のときに使用していたはずのパソコンの利用履歴を調べたり、外回り営業の際の位置情報を特定したり、テレワーク中のパソコン内での動きを確認したり(長時間操作していないなど)することによって、不当に残業代を請求することを防止することが可能になってきているのです。
安易に社員を解雇することの危険性
自分の会社に職務怠慢な社員が存在していれば、誰でも早く解雇したいと考えるでしょう。
会社に貢献してくれるどころか、会社に不利益しか与えないような社員であれば一刻も早く会社から去ってほしいと思うのは仕方のないことだと思います。
しかし、だからと言って安易に社員を解雇することはお勧めできません。なぜならリスクが高すぎるからです。
解雇が無効とされる可能性が高い
職務怠慢に関して、具体的に就業規則違反として規定されている場合、「理論的には」債務不履行として解雇することが可能です。
しかし、現実問題としては、必ずしも職務怠慢が「解雇相当の理由」として法的に認められるわけではありません。法律上、労働者の生存権が保障されていて、安易な解雇処分は原則的に認められないのです。
そして、法的に解雇相当であると認められないような理由で、なおかつ法的に正当な手続きを踏まずに解雇してしまうと、解雇が無効とされる可能性が高くなってしまいます。解雇が無効とされれば、職務怠慢な社員を解雇できないのはもちろん、そのような社員にも給料を支払い続けなければならなくなってしまいます。
無断欠勤や理由のない遅刻が続くような場合、常識的に考えれば職務怠慢で解雇したいところだとは思いますが、いきなり解雇するのではなく、あらかじめ事前注意を行い、そのあとに戒告(厳重注意)を行うなどの軽い懲戒処分を行うことが重要です。
そのような軽い処分を行うことと同時並行で、職務怠慢を証明するための調査と報告書の作成を行うことをお勧めします。このような解雇に値する職務怠慢の証拠を揃えておけば、訴訟になるリスクも減りますし、万が一訴訟を起こされたとしても、会社が不利になる可能性は極めて低くなるでしょう。
安易に解雇する前にまずは指導する
職務怠慢な社員に対しては、すぐにでも解雇したいと望む経営者の方が多いことは事実だと思いますし、その気持ち自体は否定しません。
しかし、すでに述べたように、労働者は法律によって固く守られているので、簡単には解雇が認められないのです。なので、解雇よりもまず、指導に務めてみてください。
「職務怠慢な社員なんて、指導したところで何も変わらないよ」というお声が聞こえてきそうですが、職務怠慢な社員だからこそ、しっかりと指導するべきです。これまで適切な指導をせず、見て見ぬふりをして放っておいたからこそ職務怠慢な社員が育ってしまったのかもしれません。
また、そのような社員を指導せず放置してしまうと、それを見た他の優秀な社員のモチベーションが下がってしまいますし、「自分がこんなに頑張るのは馬鹿馬鹿しい」と新たな職務怠慢社員を生み出すことにつながってしまうかもしれません。
もちろん、指導したからといってすぐに改善するものでもありませんが、職務怠慢な社員のためだけでなく、他の社員のため、長い目で見た時の会社のためにも一旦は指導に力を入れてみてください。
指導したことは解雇する際にも有利に働く
指導した結果、改善が見られて以前ほど怠慢な働き方をしなくなったという結果になれば、会社としても問題ないでしょう。
問題となるのは、指導したにも関わらず、改善も見られないしその兆しもなく、自ら辞める気もないという状況です。
ただ、このような結果になったとしても、「本人のためを思って、改善してもらおうとこれだけの指導を重ねてきたのに、一向に改善されなかった」という会社側の主張が成り立ちますので、その後解雇して、もし不当解雇だと裁判を起こされたとしても、この指導してきた事実が証明できれば、会社が不利な立場に立たされることはないでしょう。
職務怠慢をしている社員を確実に解雇するには調査がお勧め!
職務怠慢な社員であっても、一度雇用した社員を解雇させることは簡単ではないことがご理解いただけたかと思います。
そのような社員をより確実に辞めさせて、会社が法的にも不利にならないようにするためには、社員の職務怠慢についての証拠を集めて立証し、解雇事由に該当することを法的なやり方で主張する必要があります。
ここでは、そのために役に立つ調査方法や使えるデータについてお伝えしていきます。
職務怠慢の調査で使えるデータ
社員が職務怠慢であるということの事実を証明するための調査において、収集すべき資料としては主に以下のものが考えられます。
✓タイムカード
✓メール(会社が支給したパソコンやスマホでの私用メールの送受信の履歴)
✓画像や動画のデータ(業務と関係のないコンテンツがあるか、違法なコンテンツがあるか)
✓アクセス履歴(業務と関係のないサイトの閲覧履歴など)
✓注意指導文書や始末書
✓懲戒処分通知書
これ以外の証拠収集においては、デジタル機器から社員の不正を確実に記録する製品もありますので、それらを導入しておくことも効果があるでしょう。
職務怠慢についての調査方法
職務怠慢であることを証明するための調査方法としては、「フォレンジック調査」というものがあります。
「フォレンジック調査」とは、コンプライアンス違反や社員の社内不正を調査する手法として有効とされていて、デジタルデータから法的証拠の収集や保全を行う調査のことです。
パソコンやスマホの調査や解析を行い、端末内に残されたログから不正行為が行われていないかを調査する調査手法なので、「デジタル鑑識」とも呼ばれています。
「フォレンジック調査」の具体例としては、
✓Webブラウザの閲覧履歴の調査
✓データの消去や改ざんが無かったかどうか
✓パソコンやタブレットなどのON・OFFの履歴の調査
が挙げられます。
フォレンジック調査は最新の調査方法とも言えるものですが、きちんと報告書を作成してもらえば、裁判などの法的な場面でも有効活用することが可能です。
解雇のための調査は専門家に任せるのが◎
このように、今までは職務怠慢だからといって、それを証明するのが難しかったために、職務怠慢を理由に社員を解雇することが困難な状況でした。
しかし、現代の技術を使えば、データをもとに職務怠慢をしていること(いわゆるサボっていること)を客観的に証明することができるため、解雇事由の証明にもなりますし、不当解雇で訴えられた際の会社を守る武器にもなります。
ただ、そのような調査のためのスキルはかなり専門性が高いため、社内の人間だけで行うのは無理があるでしょう。
特に、裁判になったときの証拠資料として提出することを考えれば、法定資料としても活用できる報告書の作成をする必要があります。これらを踏まえると、職務怠慢な社員をより確実に解雇したい、会社を危険に晒さずに解雇したい、という場合には、専門調査を探偵や調査会社などの専門家に依頼するのがベストと言えるでしょう。
まとめ
職務怠慢を繰り返す社員。残業代の不当請求をしてくる社員。このような社員を解雇できるかどうかにおいては、事実を正確に把握し、それを客観的に証明できるかどうかは極めて重要です。
このような証拠となりうるデータは、デジタルデータなので上書きや消去などで改ざんされていることも多いため、証拠として立証していくためには高度なスキルを要するデータ復元作業が必要となります。
また、このような作業中に担当者が不用意に操作をしてしまうと、職務怠慢を立証できるはずのアクセスログなどの証拠となるデータが上書きされて、完全に失われてしまう恐れがあるため、リスクの高い調査となります。
そのため、職務怠慢を立証して社員を確実に解雇するためには、専門性の高い調査を確実にできる専門家に相談しながら進めていくのが賢い方法と言えるでしょう。
もし十分な証拠を確保できずに客観的に事実を証明することができなければ、法的な正当性も確保できなくなってしまいますので、解雇が無効になる可能性が高くなってしまいます。
より確実に職務怠慢な社員を解雇し、より確実に会社を守っていきたいと考えるのであれば、プロに調査を依頼して法的に証明していく手段を選ぶことをお勧めします。