いつも遅刻する、仕事中にサボっている、社内で不正を行っている、取引先と頻繁にトラブルを起こす・・・このような問題のある従業員はすぐにでも辞めさせたいと思っている経営者の方は多いでしょう。
しかし実際にはすぐに辞めさせたくても、辞めさせた従業員から訴えられるなどのリスクを考えてすぐに対処できないで悩んでしまいますよね。
今回は、問題のある従業員をできる限り円満に辞めさせる方法や、辞めさせる前に確認しておくべきこと、正しく辞めさせなければどういうリスクがあるのかについて解説していきます。
経営者が辞めさせたいと思う従業員の特徴
まずは、辞めさせたいと感じる問題従業員の特徴から見ていきましょう。
参考記事:問題社員への正しい指導法と改善されない場合の対処法と会社の守り方
遅刻や欠勤を繰り返す
遅刻や欠勤を繰り返す従業員はかなりの問題社員ですね。遅刻や欠勤をすることで、ミーティングにも参加できませんし、取引先との商談もドタキャンになってしまいます。 病気であれば仕方のないことかもしれませんが、遊びや飲みすぎで遅刻、欠勤を繰り返しているのであれば問題社員です。
経費の水増しなど不正を行っている
架空の出張費をでっち上げたり、交通費を水増ししたりして不正に会社のお金を取得している社員は当然問題社員と言えます。 また、私物を買っているのに経費として計上するのも立派な社内不正にあたります。
仕事中にほかのことをする・サボる
外回り中にカフェでのんびりしていたり、営業に使う車で昼寝していたり、業務時間内にスマホでゲームをしたり、と、業務に集中しないもしくはサボっている社員もいるかもしれません。 仕事で実績を残せていたら許してしまいたくなるかもしれませんが、他の社員への影響を考えると辞めさせたほうがいい社員と言えるでしょう。
著しく能力が不足している
能力が不足しているのに、努力をしない、勉強もしようとしない社員も問題社員です。確かに人それぞれ能力に差はありますが、成績が出せていないのに努力をしないのは問題です。
また、資格を取らないと仕事にならない業種の場合、資格取得を命じてもまったく勉強しようとしない社員も問題です。
パワハラ・セクハラをする
会社内でパワハラ、セクハラをする社員は当然問題社員として辞めさせたいと思うでしょう。 パワハラ、セクハラ問題が社外に知られてしまうと採用活動にも支障をきたしますし、問題社員のせいで優秀な社員が辞めてしまう恐れもあります。
上司に逆パワハラをする
パワハラというと、普通上司から部下に対して行われるものだというイメージがあるかもしれませんが、中には部下が上司に逆パワハラするケースも少なくありません。
上司の指示を聞かない、上司の指摘に対して「それってパワハラですよ」と圧をかけてくるなどの行為をしていたら立派な問題部下です。
参考記事:モンスター社員の部下から逆パワハラ!対処法と解雇するために必要な事
取引先に迷惑をかけることが多い
取引先からの依頼を忘れる、納期を守らない、取引先から注意を受けたら逆ギレするなど取引先に迷惑をかけることが頻発する社員も辞めさせたいと思いますよね。 このような社員を放っておくと取引先との関係も悪化するので、会社として大きな損失を生み出すリスクになります。
社外での素行が悪すぎる
ギャンブル依存や女癖が悪いなどの会社外での素行が悪い社員もいるかもしれません。ギャンブルは消費者金融から借金する可能性もありますし、女癖が悪いと社内不倫やセクハラをする可能性があります。
従業員を円満に辞めさせる手順と注意点
辞めさせたい社員を辞めさせるには正しい手順を踏む必要があります。辞めさせる上で注意したい点もまとめていきます。
退職勧奨する
退職勧奨とは従業員に会社を辞める事について了解してもらい、自ら退職届を出して退職してもらうことを言います。
もちろん、問題のある従業員がすぐに「はい、わかりました。辞めます」というとは限りません。時間も労力もかかるでしょう。 しかし、後々のトラブルを避けるためにも、たとえ時間がかかってでも、問題社員と話し合って自らの意思で辞めてもらうことが望ましいです。
解雇する
解雇とは、従業員の同意なく、会社から一方的に辞めさせることを言います。ただ、解雇は簡単にすることができず、問題社員の起こした行動の内容や悪意・故意の有無、会社が被った被害状況などを考慮されます。
横領や情報漏洩を故意に行っている場合は解雇をすることができる可能性が高いです。 なお、問題社員から後々訴えられることを防ぐためにも問題行動の証拠を確保しておくことが重要になります。
通常は解雇の前に退職勧奨するのが基本
従業員を辞めさせる場合、まず、解雇ではなく、退職勧奨によって辞めてもらうことを目指しましょう。退職勧奨で辞めてくれれば、従業員本人も「会社に辞めさせられたのではなく、自分の意思で辞めてやった」と思うことができるため、円満に解決しやすいです。
初めから解雇という手段を取ってしまうと従業員側がから「不当解雇」だと訴えられ、場合によっては裁判などのトラブルに発展するケースがあります。 退職勧奨しても合意を得られない場合に初めて、解雇を検討するようにしてください。
退職勧奨もやり方によっては違法になることも
退職勧奨のほうが解雇よりも円満に解決しやすいのですが、退職勧奨もやり方によっては違法になりますので注意が必要です。
・退職についての長時間の面談を連日行う
・退職しない場合、制裁的措置や解雇をほのめかす
・暴力をしたり脅迫めいた言葉で脅したりする
このようなやり方をすると退職を強要したとみなされるおそれがありますので注意してください。 退職勧奨をスムーズに行い、うまく辞めてもらうためには、会社がこれまで雇い続けるために精一杯努力してきたことや、働き続けても希望の仕事がない、給料は上げられないなどデメリットが多いことを伝えるといいでしょう。
解雇の種類と方法
解雇は会社側が一方的に雇用を停止する方法なので、退職勧奨がうまくいかない場合に検討したほうがいいとお伝えしましたが、状況によって解雇という手段を取ることもあるでしょう。
一言で解雇と言っても種類があります。この章では、解雇の種類と方法についてお伝えしていきます。
懲戒解雇
社内不正や犯罪行為、経歴詐称、パワハラ・セクハラなどの重大な問題行動を起こした場合適用できる制裁的な解雇のことです。
なお、懲戒解雇であっても会社の温情的な措置が取られることもあり、退職金が全額支払われるなどのケースもあります。 懲戒解雇はのちに辞めさせた従業員とトラブルになることが多いので、慎重に判断しなければなりません。
普通解雇
普通解雇とは、能力不足や業務態度の悪さなどを理由に解雇することを言います。 しかし、多少の能力不足や数回遅刻したなどの理由で普通解雇にすることはできません。
会社は適切な指導をしたり、部署異動や研修をするなどの対応をしたりすることが求められるでしょう。それらを行ってもなお改善されない場合に最終的に裁判で解雇の正当性が判断されることになります。 ただ、法律は従業員に有利にできているので、解雇が認められるハードルはかなり高いと言えます。
整理解雇
整理解雇は普通解雇のうちの一つとも言えますが、会社の業績不振や経費削減のために従業員を辞めさせることを言います。
整理解雇するためには、「人員削減の必要性」「会社が解雇を回避したという努力」「人選の合理性」「手続きの妥当性」の条件を満たす必要があります。
退職勧奨せずに解雇できるケース
従業員を辞めさせるためにはいきなり解雇するのではなく、退職勧奨によって辞めさせるようにしなければならないとお伝えしましたが、例外的に退職勧奨する前に解雇できるケースがあります。
・無断欠勤で本人と連絡がつかないケース
・休職期間が満了したケース
・横領など重大な不正の証拠があるケース
このような場合は解雇することのリスクが比較的低いため、退職勧奨する前に解雇しても問題ないでしょう。
問題の従業員を辞めさせることによる利益は大きい
従業員を辞めさせるのはかなりの労力が必要になり、解雇することはリスクが大きいことはご理解いただけたと思います。
「そんなに労力がかかるなら、問題があっても放置するか・・・」と辞めさせることを諦めたくなるかもしれませんが、問題の多い従業員を辞めさせることによるメリットはかなり大きいです。
会社の雰囲気が良くなる
まずは会社の雰囲気が良くなるでしょう。問題社員が周りの社員にマイナスの影響を与えていることは確かなのでその社員がいなくなれば、社内の雰囲気が良くなり、他の社員のやる気も出て、社員同士のコミュニケーションも円滑になることが期待できます。
無駄な人件費を削減できる
問題の多い従業員に支払う給料やボーナスをなくせば、その分人件費をカットできます。カットできた分、資材に投資したり新しい事業を始めたり、新しい人材確保に使ったりできるでしょう。
雇う側のストレスがなくなる
問題社員がいると、その社員に関わる他の社員が負担を受けます。問題社員の研修や面談を行ったり、悪影響がほかの社員にいかないようにフォローしたりすることは雇う側や関わる他の社員の負担が大きくなってしまいます。
問題の従業員が辞めれば、他の社員や雇う側の負担がかなり軽減されるでしょう。
間違った方法で辞めさせると会社にとって大きなリスクに!
問題のある従業員を辞めさせる事は会社にとって大きなメリットではあるのですが、間違った方法で辞めさせてしまうとリスクも伴います。 間違った方法で辞めさせるとどのようなリスクがあるのかも念頭に置いておくといいでしょう。
解雇期間の給与を支払わなければいけない可能性
裁判で解雇が無効であると判断された場合、その従業員が実際には働いていなくても、会社はその従業員にお給料を支払わなければならなくなってしまいます。 解雇もできず、働いていないのに給料も支払わなければいけないのは大きな損失です。
辞めさせた従業員に訴えられる可能性
解雇した従業員から、「不当解雇」だと裁判を起こされるリスクも考えられます。 もし本当に裁判を起こされることになったら、裁判の準備にかなりの時間をかけなければいけなくなりますし、通常は弁護士に依頼すると思いますので弁護士費用もかかってしまいます。
慰謝料が発生する可能性
解雇した従業員から裁判を起こされ、裁判によって不当解雇だと判断されてしまうと、慰謝料を支払わなければいけなくなる場合もあります。 その場合、慰謝料の減額などで弁護士を雇うと、さらに弁護士費用がかさんでしまうことになるでしょう。
従業員を辞めさせる前に確認しておくべきこと
従業員を円満に辞めさせるためには解雇の前に退職勧奨をしたほうがいいことはすでにお伝えしましたが、それ以外にも確認しておきたいことがあります。 後々トラブルにならないよう、以下の項目もチェックしておいてください。
本人に問題点を伝えているか
まず、本人に問題点をストレートに伝えて、指導し、改善を促すようにしてください。しっかりと問題点を直接伝えていないと、本人は何が問題なのか把握できていないことがあります。 もしかすると、指摘されたことで自ら改善し、質のいい社員に変わってくれることもありえるかもしれません。
問題点を改善するために会社として対応しているか
問題点を本人に伝えたら、その問題点を解決するために会社として対応を取ることも重要です。 定期的に面談を実施したり、研修を行ったり、改善のための指導を行っているかどうか確認してください。
会社が「辞めさせないために雇う側も努力した」という事実が大切になってくるのです。
別の部署に異動して対応できないか
本人の性格自体は問題ないが今の仕事では能力が発揮できず成績が上がらないというケースや今のポジションでの人間関係がうまくいかずにトラブルが起きているケースでは、他の部署に異動してもらって様子を見ることも大切です。
部署異動などの対応をとってもやはり問題行動が収まらない場合は本格的に辞めさせることを検討してください。
まとめ
問題のある従業員を辞めさせる際は、辞めさせた後に従業員から訴えられるなどのトラブルになって会社が大きな損失を被ることを避けることが重要です。
そのため、必要な知識をつけ、十分な準備をし、慎重に判断していく必要があるでしょう。 また、不正行為がある場合はその明確な証拠の確保も必要不可欠です。不正行為の証拠は探偵に依頼すればしっかりと調査してもらえますし、裁判で使える証拠を取ってくれます。