会社のお金を横領してしまったらどうなる!?罪の重さと対処法

KW経理担当者や会社の重役だと、会社のお金を扱える立場にありますよね。しかもかなりの大金を扱うことができるでしょう。

 

そんな状況だと、つい魔が差して会社のお金に手を付けてしまった・・・なんてこともあるかもしれません。そのときは軽い気持ちで会社のお金に手を付けていただけでも、それが繰り返されてしまうと横領の罪はどんどん重くなっていきます。

 

横領してしまい、それが会社にバレると、懲戒解雇などの重い処分をうけるだけでなく、実名で報道されて起訴される可能性も考えられるでしょう。

 

起訴されて有罪になってしまうと、その後の人生に大きな影響を及ぼしてしまいますし、懲戒解雇されれば即座に職を失って金銭的にもかなり辛い状況になってしまうのが予測されます。

 

この記事では、横領をしてしまった方がどのような罪に問われる可能性があるのか、横領してしまった場合にどのように対処すれば最悪の事態を免れることができるのかについて詳しく解説していきたいと思います。

 

 

横領ってどんな罪?横領したときに発生する刑事責任や民事責任

横領とは、他人から預かっている他人のお金や物を自分のものとして使ったり処分したり売り渡してしまったりという犯罪行為のことです。

 

犯罪なので、当然罪に問われることになるのですが、横領した場合、刑事責任と民事責任、そして他にも会社における責任が問われることになります。それぞれについて詳しく見ていきます。

 

 

横領行為の刑事責任

刑事責任とは、刑事罰のことです。

 

会社があなたの横領を疑って警察に被害届を出し、警察が捜査した結果、逮捕されたり勾留されたりします。また、逮捕されなくとも取調べを受けることになるでしょう。起訴されて横領の事実が証明されてしまうと刑事罰が課されることになります。

 

横領行為に対しての刑事罰は次の3種類です。

 

✓単純横領罪(刑法第252条)

✓業務上横領罪(刑法第253条)

✓遺失物等横領罪(刑法第254条)

 

単純横領罪は、たとえば友人から借りた本を勝手に売却したり、借りていた車を勝手に売ったりといった場合に成立し、刑罰は「55年以下の懲役」です。

 

業務上横領罪は、業務において管理や占有しているお金や物を自分のものにした場合に成立する罪です。たとえば経理担当の従業員が売上金を勝手に引き出して、私物を買ったり生活費にあてたりといったケースが該当します。刑罰は「1010年以下の懲役」で、他の22つに比べると重い刑罰になっています。

 

遺失物等横領罪は、たとえば、道に落ちていた財布を拾ったにも関わらず警察に届け出ず、中に入っていた一万円札を自分のものとして使ったといった場合に成立する罪で、刑罰は「11年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」です。

 

会社で横領してしまった場合は、業務上横領罪に該当しますので、刑罰は重くなってしまう傾向にあります。

 

 

横領行為の民事責任

横領行為は民事責任が追及されることもあります。

 

会社で横領した場合に問われる民事責任では、会社に与えた損害に対する賠償の責任を負うことになります。多くの場合、被害者である会社側が直接横領された金銭の返済を請求してきます。その際、横領をした犯人から謝罪がなかったり、十分な返済を期待できなかったりする場合、民事裁判を起こされる可能性もあります。

 

民事裁判によって損害賠償を命じる判決が出された場合、判決に応じず賠償金を払わなければ給与を差し押さえられたり、持っている不動産などの財産を差し押さえられたりすることもあります。

 

 

横領行為の会社における責任

横領行為を行ってしまった場合、会社における責任追及を受けることも考えられます。いわゆる懲戒処分を受けることになります。

 

懲戒処分とは、企業が不正行為を行った従業員に対して行う制裁のことで、不正行為を懲戒規定と照らし合わせたたうえで、従業員の不正行為の内容に応じて制裁を決定していきます。横領という不正行為の場合、横領した金額がメインで考慮され、他にも横領した状況や動機なども考慮されて懲戒処分の内容を決定していく流れになります。

 

どのような懲戒処分を下すのかという懲罰の基準は、各企業によってさまざまです。

 

懲戒処分の具体的な内容としては、

✓戒告

✓譴責

✓減給

✓出勤停止

✓降格

✓諭旨解雇

✓懲戒解雇

がありますが、横領行為の場合、一般的に罪が重いとされますので、諭旨解雇や懲戒解雇となる可能性があることは覚悟しておいたほうがいいでしょう。

 

なお、最も重い処分である懲戒解雇になれば、会社を辞めさせられる上に退職金の一部の支払いが行われないなどという懲罰が決定することもあります。

 

また、たとえ横領した金額が少額であったとしても、経理担当者や支店長など職務上お金を扱う地位にあった人物が横領した場合は、会社の信頼を裏切ることの重大性が考慮され、懲戒解雇が認められる可能性が高くなってしまいます。

 

 

横領罪に問われた場合の罪の重さは?

刑事責任としての横領罪に問われた場合、どれほどの罪になるのでしょうか。

 

会社で横領の罪を犯した場合、種類としては業務上横領罪となりますが、業務上横領罪は非親告罪といって告訴されていなくても起訴される可能性のある犯罪です。

 

業務上横領罪で逮捕され、起訴された場合、有罪になると10年以下の懲役に処せられます。業務上横領罪は罰金などの刑罰がないため、有罪となってしまうと執行猶予が付かない限り、刑務所に入ることになってしまうので、かなり重い罪と言えます。

 

ただ、10年以下の懲役と言っても具体的にどのくらいの実刑になるのかわかりにくいと思いますので、以下に量刑の目安について見ていきます。

 

 

業務上横領罪の量刑の目安

業務上横領罪の量刑は横領した金額によって変わってきます。量刑の目安については以下の通りです。

 

✓横領金額が100100万円以下の場合 : 執行猶予

✓横領金額が500500万円の場合 : 22年の実刑

✓横領金額が10001000万円の場合 : 22年6か月の実刑

✓横領金額が30003000万円の場合 : 33年の実刑

 

量刑を決める要素としては、他にも前科があるかどうかや、横領が発覚した後に示談ができているかどうかが考慮されて刑罰が決まります。

 

示談ができていて、弁償することになっていれば同程度の横領金額であっても刑が軽くなる傾向になります。

 

 

横領したお金を返済できなかった場合どうなってしまうのか

刑事責任を追及されそうになったとしても、横領したお金を返済できれば刑事告訴を免れることができたり、罪を軽くしてもらえたり、懲戒処分で済ませてくれたりする可能性があるため、横領したお金を返済したいと考えている方も多いでしょう。

 

しかし、実際には横領したお金はすぐに使い切ってしまっていることが多く、手元にお金がないケースがほとんどです。では、横領したお金を返済できない場合、どうなってしまうのでしょうか。

 

 

返済しないと重い刑事責任が問われる可能性が高くなる

横領をされた被害者の会社側にとって最も望むことは、横領された会社のお金が戻ってくることでしょう。そのため、横領を犯した犯人がお金を返してくれるという見込みがあれば、わざわざ時間と労力をかけて刑事告訴することを辞める可能性も期待できますが、反対に返済される見込みがない場合には、会社は警察に被害届を出し、刑事告訴する可能性が上がります。

 

また、もともと刑事告訴される状況であっても、横領したお金を返済することで、量刑が軽くなったり、執行猶予が付いたりなどの措置が取られる可能性が高くなります。

 

横領したお金の返済を行えば、会社として事件を公にせずに示談をして当事者間で解決することも少なくありませんし、刑事告訴されたとしても起訴は避けられることが期待できます。

 

 

自己破産したらどうなるか

横領したお金を返せない状況の時、自己破産したらどうなるのだろうと気になった方もいらっしゃるでしょう。

 

自己破産すれば、借金の返済義務を無くすことができますが、自己破産しても横領したお金の返済義務は無くなりません。自己破産しても横領などの「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」については、免責されないのです。

 

自己破産して横領金の返済義務から逃れようと思っても、そうはいかないのです。

 

 

横領してしまったらどう対処すればいい?

会社で横領してしまい、それが会社にバレる事態となったら刑事責任や民事責任を追及されることになるでしょう。そんなとき、どのように対処すれば最悪の事態を免れることができるのでしょう。

 

この章では、横領の罪を犯してしまった場合の適切な対処法について解説していきます。

 

 

すぐに返済できなければ分割払いを提案する

横領をしてしまっても、横領したお金を返済することができれば、刑事責任の追及を逃れることができたり、量刑を軽くしてもらうことができたり、重い懲戒処分を回避することができたりします。しかし、横領したお金が多額であったり、ほかにも借金があったりした場合、すぐに横領したお金の全額を返済することが難しい場合も多いでしょう。

 

そのような、手元に返せるだけのお金がなく一括で返済するのが難しい場合には、分割での返済を提案してみましょう。

 

横領された被害者である会社側も、返済する意思があり、お金が返ってくることが見込めるのであれば、分割払いでの返済に応じてくれる可能性があります。ただ、その場合は誓約書を書くことや、連帯保証人をつけるなどの、何かしらの措置に応じなければいけないこともあります。

 

また、あまりにも横領した金額が大きく、すべて返済するのが難しい場合には、返済額の減額をお願いするというのも一つの方法です。その場合は、減額してもらう代わりに一括で返済するなどと交渉してみると良いでしょう。

 

 

弁護士に相談する

横領をしてしまった場合、刑事事件に強い弁護士に相談するというのも適切な対処法と言えます。

 

刑事告訴された場合に示談に持っていくという方法がありますが、この示談の交渉は素人ではなかなか難しいのが現実です。そのため、弁護士に相談して示談交渉を依頼するのが得策と言えるのです。

 

示談が成功すれば、刑事責任の追及を逃れることができるかもしれませんし、量刑がかなり軽くできることが期待できます。また、示談書のなかに「今後、被害届を出さない。刑事告訴をしない。」という内容の項目をいれておけば、その後、改めて刑事責任を問われる可能性は著しく減るので安心できるでしょう。

 

弁護士が間に入って交渉してくれることで、返済金の分割払いや減額にも応じてくれやすくなります。会社側は、横領の犯人である人物の言うことは簡単には信用してくれない可能性が高いですが、弁護士が代わりに交渉すれば信用して示談に応じてくれる可能性が高くなります。

 

弁護士に示談交渉を依頼するデメリットとしては、かなり高額な弁護士費用がかかってしまうという点です。業務上横領罪に関して弁護士に依頼すると、案件にもよりますが、100万円~200万円の弁護士費用がかかってきてしまいます。

 

弁護士に依頼する際は、費用との兼ね合いも含めて検討していくのが良いでしょう。

 

 

交渉力を身に付けて自分で交渉する

横領してしまったときの適切な対処法として弁護士に示談交渉を依頼するという方法をお伝えしましたが、弁護士費用がかなり高額になってしまうというのがネックでした。

 

そのため、別の対処法として、自分で交渉のスキルを身に付けて、自分自身で会社との交渉を進め、自分で自分を守っていくという方法があります。決して簡単な方法ではありませんが、しっかりとプロの交渉術を学ぶことができれば、ご自身で会社との交渉を進めることは不可能ではありません。

 

ラフな言い方をすれば、弁護士に依頼して弁護士がやってくれる会社側との交渉を自分で行うというイメージです。もちろん、すぐに弁護士レベルの知識やスキルを身に付けることはできませんが、「自分の横領の罪に関しての交渉を行う」という1点だけに絞って考えれば交渉を行うことは可能なのです。

 

自分で交渉のテクニックを身に付けることのメリットは、交渉のスキルは一度身に付けてしまえば何度でも使えるという点です。さらに、弁護士に依頼する費用に比べると、交渉のスキルを身に付けるためのお金はかなり安く抑えることができます。

 

交渉のスキルを身に付けることに関しては、こちらの【問題解決のための交渉コンサルティング】のサイトでより詳しく見ていただけるので参考にしてみてください。

 

http://nego-consulting.com/

 

 

まとめ

会社のお金を横領してしまい、それが会社にバレてしまったら、「逮捕されるかもしれない」「返済するお金なんてない」「今後の人生、終わってしまうのか」などと目の前が真っ暗になってしまうでしょう。

 

しかし、逃げていても問題が解決することはありません。できるだけ早く適切な対処法を取ることが重要です。最悪の事態を避けるためにできることは必ずありますので、一人で抱え込まず、交渉の専門家に相談してみてくださいね。