これって横領になる⁉横領として有罪になったら問われる罪と量刑の目安

KW経理部の担当者や会社で大金を扱える立場の社員だと、「少し借りるだけ」「あとでちゃんと返すから」とついつい会社のお金に手を付けてしまい、そのまま横領してしまったという経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

 

あのときはむしゃくしゃしていて、つい魔が差しただけ・・・と自分では思っていても、会社にバレてしまったらどうなってしまうのか不安ですよね。

 

会社に横領が知られてしまったら、クビや減給などの懲戒処分を受ける可能性だけでなく、刑事告訴され刑事罰を受ける可能性も考えられます。

 

今回は、どのようなことをしたら横領に当てはまるのか、横領罪が成立するときはどういう状況なのか、そして横領の罪に問われる場合、刑期などはどれくらいなのか、詳しく見ていきましょう。

 

また、横領の罪に問われるかもしれないと不安になった場合、どのように対処すべきなのかもご紹介していきますので、会社で横領を疑われていて不安になっている方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

当てはまる可能性のある横領罪の種類とそれぞれの刑期

「横領」と一口に言っても、実際には横領が罪に問われる場合、刑罰には3つの種類があります。

 

会社でお金を横領してしまった場合は、そのうちの1つである業務上横領罪に問われることになるかと思いますが、量刑がどれほど重くなるのかを比較するために、ここでは3つすべての横領罪についてみていきましょう。

 

 

単純横領罪

単純横領罪は、他人の物を自分のものとして扱ってしまった場合に成立する罪のことです。

 

たとえば、他人から借りているものを返さずそのまま自分のものとしてしまった場合や、友人から借りていただけのものを他人に売却してしまった場合などがこれにあたります。

 

単純横領罪の罪に問われた場合、有罪となれば「55年以下の懲役」が科せられます。

 

 

業務上横領罪

業務上横領罪は、業務として他人の物を預かっている人物が、その物を自分のものとしてしまった場合に成立する罪です。

 

例で言えば、集金担当として顧客からお金を集めている人がそのお金を自分のものとしてしまった場合や、会社の経理担当者が、金銭管理を任されている立場を利用して会社のお金を勝手に引き出し、生活費に充てたり自分のものを購入したりする場合に業務上横領罪が成立します。

 

業務上横領罪で有罪となれば、「1010年以下の懲役」が科せられます。業務として受けていた立場を利用して信頼関係を裏切る行為とみなされるため、単純横領罪よりも罪が重いとされています。

 

また、業務上横領の特徴として、犯罪が発覚して露見するまで、長期間にわたり反復的に横領が行われるケースがしばしばあり横領金額が数百万円、数千万円となるケースも珍しくありません。

 

その場合、被害額の弁償ができなければ、初犯であっても執行猶予のつかない実刑を覚悟しなければいけなくなるでしょう。

 

 

遺失物等横領罪

遺失物等横領罪は、遺失物や漂流物など、他の人の所有や占有を離れた他人の物を横領したときに成立する罪です。

 

簡単な例で言えば、路上に落ちていた財布を拾ってその中身のお金を横領した場合などが該当します。

 

遺失物等横領罪で有罪になると、「11年以下の懲役」もしくは「1010万円以下の罰金」または「科料」が科されます。科料とは、10001000円以上11万円未満の金銭を徴収する罰則のことです。遺失物等横領罪は横領罪のなかで唯一罰金刑が設けられている犯罪で、他の22つの横領罪に比べると軽くなります。

 

 

業務上横領の実際にあった事例

ここでは、会社での横領である業務上横領についてより詳しく見ていきましょう。どのような場合に横領罪として罪に問われるのか、実際にあった事例をもとにご紹介していきます。

 

 

事例1

よくある事例として、営業マンなどが顧客から商品代金を集金し、そのお金を横領してしまうケースです。会社には未収金として報告したり、集金済みと報告して実際には現金が足りないままにしておいたりなど手口はさまざまです。

 

 

事例2

店長や支店長など、ある程度権限を与えられている立場の従業員によって横領が起きることもしばしばです。

 

店長や支店長が、売上金の管理など金銭管理を任されていて、本社には売上額を少なく申告したうえで、実際と報告額との差額を横領するという手口です。

 

 

事例33

経理担当者によって業務上横領が起きる事例は非常に多いです。

 

経理担当者である従業員が会社の口座から架空の顧客を装った自分の口座にお金を振り込んで横領するという手口や、社外の第三者と共謀して架空の請求書を出してもらい、会社の口座から請求書先の口座に送金して共犯者とお金を山分けするという手口などがあります。

 

経理担当者による業務上横領は、口座から口座にお金を移す手口がほとんどなので、横領が発覚した時には被害金額がかなり高額になっているケースが多いです。

 

 

例外:交通費の不正受給は横領?

従業員の中には、交通費を水増し請求して差額を着服するという人も少なからずいるかと思います。例えば、新幹線で出張したと会社に報告しておいて、実際にはバスを使って移動して差額分を着服する、というようなケースです。

 

このような交通費の不正受給が横領になるのかどうか、気になっている方も多いかと思いますが、結論から言えば、交通費の不正受給は業務上横領には該当しません。

 

業務上横領罪は、「業務上、人から預かっている金品を自分のものにする」ときに成り立つ犯罪なので、交通費を不正に受給することはこれに該当しないと判断されるからです。

 

ただし、交通費の不正受給が業務上横領罪にはならないからといって、何の罪にもならないかというとそうではありません。会社に嘘の通勤経路や出張経路などを届け出て、本来受け取るべき通勤手当よりも高額の通勤手当を受け取るという交通費の不正受給は、場合によって詐欺罪に該当します。

 

 

業務上横領罪の量刑はどのくらい?

先ほどの章で、業務上横領罪の実際の事例を見てきて、どのような場合に業務上横領罪として罪に問われるのかなんとなくおわかりいただけたかとおもいます。

 

では、業務上横領罪となったら、量刑はどれほどになるのでしょうか。

 

前述したように、業務上横領が有罪となれば1010年以下の懲役とされていて、罰金刑で済むということはありません。業務上横領罪において、実際の刑の決定に最も影響を及ぼすのは横領した金額です。

 

ここでは、横領した金額がいくらだとどのくらいの量刑になるのか見ていきましょう。

 

 

業務上横領罪の量刑の目安

業務上横領罪の横領金額による量刑の目安は以下の通りです。

 

✓横領金額が100100万円以下の場合 : 執行猶予

✓横領金額が500500万円の場合 : 22年の実刑

✓横領金額が10001000万円の場合 : 22年66か月の実刑

✓横領金額が30003000万円の場合 : 33年の実刑

 

量刑を決める要素としては、他にも前科があるかどうかや、横領が発覚した後に示談ができているかどうかが考慮されて刑罰が決まります。

 

示談ができていて、弁償することになっていれば同程度の横領金額であっても刑が軽くなる傾向になります。

 

 

よくある疑問|横領したお金をすぐに返せばセーフ?

会社のお金を横領してしまった方が疑問に感じることとして「横領してしまったのは事実だけど、横領したお金をすぐに返せばセーフなんじゃない?」ということが挙げられるでしょう。

 

確かに、横領してもすぐに元のお金を返せばなかったことにできそうなものですが、実際には横領したお金をすぐに返したとしても、罪に問われることは避けられません。

 

横領罪は、刑法第252条に定められているように「自分が占有している他の人の財物を無断で使ったり、処分したりすること」なので、手に取った会社のお金を使った時点で犯罪は成立していて、たとえすぐであっても後からお金を返しても罪を犯した事実は消えることはありません。

 

ただし、横領してそれが会社にバレたからと言って全てのケースで立件されたり逮捕されたりするわけではないことも事実です。

 

会社の方針によっては、横領の至った経緯や事情、それまでの会社への貢献度などを考慮して、横領したお金を返済するだけで解決してくれる可能性もありますし、懲戒処分を実行されるだけで刑事告訴はされないという可能性もあります。

 

会社の大切なお金を横領された経営者の立場になってみれば、重要視するのは「横領されたお金が返って来るのか、来ないのか」なので、もし、横領した本人がきちんと全額を返す意思があると判断できれば、事を大きくせずに解決してくれる可能性もあるのです。

 

そのため、横領が発覚した場合は、お金を返済する意思があることを示すことや、会社側とうまく交渉するための交渉力をつけておくことが重要なのです。

 

 

業務上横領罪以外にも会社から問われる懲戒処分という罪もある

ここまで、横領という罪を犯した場合に問われる業務上横領罪について見てきましたが、刑事責任である業務上横領罪以外にも会社から問われる懲戒処分という罪も考えなければいけません。

 

懲戒処分とは、会社が従業員に対して行う制裁のことで、横領などの不正行為を懲戒規定と照らし合わせ、従業員の違反内容に応じて制裁を決定していくものです。具体的には

 

✓戒告

✓譴責

✓減給

✓出勤停止

✓降格

✓諭旨解雇

✓懲戒解雇

があります。

 

会社からの懲戒処分は、会社のお金を横領した場合だと軽くても減給や降格、横領した金額によっては諭旨解雇や懲戒解雇の可能性があるでしょう。

 

懲戒解雇とは、いわゆるクビのことです。懲戒解雇とされてしまうと、退職金が減額や不支給になる場合がありますし、失業保険の給付日数が自己都合退職と同じ扱いになるという特徴があります。

 

懲戒解雇になると、即座に職を失ってしまう上に次に再就職したいと思ってもすぐにできず、金銭的に困窮してしまう危険性がありますので、一人で会社との交渉が難しいと感じた場合は刑事事件や企業法務に強い弁護士に相談するのが良いでしょう。

 

 

自分が横領の罪を犯してしまったときにどう対処すべきか

自分が会社のお金を横領してしまい、ふと自分の罪の重さに気が付いた時や、会社が横領事件に気が付き始めた時など、かなり焦ってしまうでしょう。

 

今後自分がどうなってしまうのか、どんな量刑になってしまうのか、など不安でいっぱいになってしまうと思います。

 

この章では、そんな不安を抱えてしまったときにどのように対処したらいいのかを解説していきます。

 

 

弁護士に相談する

会社のお金を横領してしまい、しかもその金額がかなり高額になってしまっているような場合、刑事事件を得意とする弁護士に相談すると良いでしょう。

 

横領したという事実が明らかになり、あなたが犯人であるという証拠を掴まれてしまうと、たとえどのような理由や事情があったとしても、あなたの立場は確実に悪くなりますし、会社から高額な損害賠償請求をされてしまう可能性もあります。

 

刑事事件に強い弁護士であれば、会社との示談交渉をうまく進めてくれ、和解になれば告訴に至らず、不起訴となる可能性も期待できるでしょう。さらに、懲戒解雇のような重い懲戒処分についても会社との交渉を進めて追及される責任を軽くしてもらえる可能性もあります。

 

弁護士に交渉を依頼するデメリットとしては、依頼費用がかなりかかってしまうということでしょう。弁護士にすべてを依頼できるので、労力をかけずに解決を期待できる分、弁護士費用として100万円~200万円はかかると覚悟しておいたほうが良いです。

 

 

交渉のスキルを身に付ける

横領の罪を犯してしまい、会社にバレてしまうとなったときの対処法としてもう一つ挙げられるのか自分自身で交渉のスキルを身に付けるということです。

 

1つ目の対処法として弁護士への依頼がありましたが、これは弁護士に代わりに交渉を依頼するということなので、自分自身で交渉力を身に付けてしまえば、自分で自分のことを守ることができるようになります。

 

自分自身で交渉のスキルを身に付けて闘うことのメリットは、一度スキルを身に付けてしまえば何度でも使えるようになるということ、そして、弁護士費用と比べ物にならないくらいの金額で問題を解決できるということです。

 

会社側とも戦えるような交渉力を身に付ける方法については、こちらの【問題解決のための交渉コンサルティング】のサイトを参考にしてみてください。

http://nego-consulting.com/

 

 

まとめ

会社のお金を盗んだり、使い込んでしまったりした場合、業務上横領罪に問われる可能性があります。

 

業務上横領罪に罰金刑はなく、もし逮捕されて有罪になってしまった場合は、執行猶予が付かなければ刑務所に行くことになります。

 

示談交渉が成立すれば、量刑が軽くなったり懲戒処分の内容が軽くなったりする可能性はありますが、そのような交渉を行うためには最低限の法律知識やかなりの交渉力が必要になるでしょう。

 

もちろん、刑事事件に強い弁護士に依頼するという方法もありますが、ご自身で交渉のスキルを身に付け、自分自身で自分の身を守れるようにしておくことも大切です。交渉スキルの身に付け方について疑問点や気になることがあれば、ぜひお気軽に当事務所にご相談ください。