KW: コロナ禍の影響を受け、会社の経営に四苦八苦されている経営者の方は少なくないのではないのでしょうか。
今の状況を乗り切って、なんとか売上を維持し、やっとのことで社員たちを守り、大切にしている会社を守って経営を安定させていきたいと思っている経営者にとっては、会社の要である経理担当者が不正を犯すなどということは信じがたいことかもしれません。
しかし、実際には経理担当者による社内不正は後を絶たず、経営を揺るがして倒産にまで追い込んでしまうような事態になることもありえます。会社の経理担当者による不正はどこの会社で起こってもおかしくはなく、すべての会社にとってのリスクであり、対策を取るべき問題なのです。
会社を守りたい、社員を守りたいという強い意志をお持ちの経営者の方は、ぜひ経理担当者による不正を予防し、万が一に備えて対策を取っておくことが必要不可欠と言えるでしょう。
今回は、社内不正に対して経営者の方が知っておくべき基本的な考え方を始め、経理担当者が不正に走ってしまう要因や不正を防止するための対策についてご紹介していきたいと思います。
社内の不正行為に対して経営者の方が知っておくべき考え方
経理担当者が不正を犯してしまう原因や社内不正を防止する対策について見ていく前に、前提として押さえておいていただきたい基本の考え方についてお伝えしていきたいと思います。
それは、【経理担当者を含め、社員たちの不正行為を防ぐための仕組み作りは経営者の責任である】という考え方です。
社員による横領行為や着服行為が起きた場合、賠償額を犯人である社員に請求することになると思いますが、被害金額が大きく膨れ上がってしまっていたり、当該社員の金銭状況によって全額の回収が難しくなったりすることは珍しいことではありません。
また、不正を犯した社員は解雇することになると思いますが、解雇すればその人の穴を埋めるために新しい社員を採用するためにリソースを割かなければなりません。
つまり、会社の順調かつ安定的な経営を支えていくためには、社員による横領や不正を起こさせない仕組みを作ることが非常に重要であることがおわかりいただけるかと思います。
もちろん、一番悪いのは不正行為を行ってしまう社員ですが、社員たちがちょっとしたきっかけから横領や不正行為に手を染めてしまわないような環境づくり、体制の構築は経営者の責任であると心得ておくことが重要なのです。
社内において経理の不正が起きてしまう原因
経理担当者による社内不正を防ぐためには、そもそもなぜ経理による不正行為が起きてしまうのかという原因を把握しておく必要があります。
ここでは、経理の不正が起こりやすくなってしまう原因について見ていきましょう。
会社のチェック体制が甘い
経理による社内不正が起きる原因は、「会社のチェック体制が甘いから」に他なりません。会社全体でお金に関するチェック体制が万全でしっかりと機能していれば不正をするスキも生まれませんし、そもそも不正を働こうという意欲さえ湧いてこないでしょう。
ほとんどの不正は最初バレにくい少額の横領から始まります。少額の不正でバレないことがわかったら、同じ手口の不正を繰り返し、定期的に不正行為が行われていきます。そして、結果として大きな金額に膨れ上がってしまい、会社が気付いた時には経営にも影響を与えるほどに被害が大きくなってしまっていることがあるのです。
逆に言えば、チェック体制が整っている会社であれば、少額の横領でもすぐに発見できる可能性が高いです。少額だからといって見逃してしまうような体制だと、塵も積もって被害が拡大してしまうのです。
経理担当者への信頼が大きすぎる
中小企業やベンチャー企業などでは、人件費を抑えるために経理担当者を一人だけしか置いていないケースは珍しくないでしょう。
また、経理はお金を扱う部署なので、長年会社で働いているベテラン社員や、起業を手伝っていた社員であり親友である立場の人を経理担当者にするケースも多いです。いずれにしても付き合いが長い社員を経理担当者にすることが多いので、「経理担当者は信頼できる人」という思い込みを必要以上に持ってしまう経営者の方も少なくありません。
しかし、長年勤めた付き合いの長い社員であっても一人の人間です。魔が差すことだってあるでしょう。さらに、経営者の方が経理担当者を信頼しすぎるとチェックも甘くなってしまいます。
「経理を任せられるくらいの人物なのだから、横領なんてそんな悪いことをするはずなんんてない」「信用してこそ社員だ」と安心しきってしまっていると、経理による不正行為を誘発してしまうということは頭に入れておくべきでしょう。
過度に信頼することで「少額であれば気がつかれないだろう」と不正を行ってしまうかもしれませんし、それが実際にバレなければ、それ以降、少額ずつ横領をすることを企ててしまうことになるかもしれません。
経理担当者が不満を抱えている
上記で、経営者が経理担当者を信頼しきってしまっていることが原因で不正に走る可能性を指摘しましたが、反対に経理担当者をないがしろにしたり、経理の仕事を軽視したりすることで社員が不満を抱えて不正行為が起きてしまうケースもあります。
本来、経理は会社の運営を支えるうえで極めて重要な部署ですが、経営者の中には軽んじてしまうケースもあります。たとえば、会社において営業部は花形部署と言われていますが、経営者が営業部出身だと経理部の仕事を軽視してしまうことがあるようです。
営業部は「大きな契約を取ってきて会社に貢献」「新規の取引先を開拓」などとわかりやすく華々しい評価をもらいますが、そのような環境にいた経営者の方だと、経理部の仕事を「ただお金の計算をしているだけの部署」と捉えてしまうこともあり、経理部を軽視して不満を溜めさせてしまうことにもつながります。
日々の扱いや評価の仕方によって不満が溜まりに溜まってしまい、会社への復讐として横領などの不正行為に及んでしまうケースも多いのです。
なお、仕事内容を軽視されたなどの不満が溜まって復讐として不正行為を行ってしまうのは、経理部に限ったことではありません。経営者としては、すべての部署に対して敬意を払い、一人一人の社員に対して誠意をもって接していくことが重要です。
経理の不正を防止するための対策を知ろう!
ここまでで、経理が社内不正をしてしまう原因やきっかけについて確認してきました。では、原因を把握したうえでどのような対策を取れば経理の不正を予防することが可能になるのでしょうか。
経理の不正に限らず、社内不正を防止するために会社としてできる対策について確認していきましょう。
切手や印紙も徹底管理する
外部との取引において、切手や印紙を使用する場合もあると思いますが、切手や印紙の管理にはさらなる注意が必要です。
切手や印紙などは現金よりも管理が甘いことが多く、不正に使用されて横領行為に利用されるケースが多いからです。現金ではないからと考えず、切手や印紙の枚数を日常的にきちんと把握し管理を徹底しておきましょう。
切手や印紙を購入したときや使用したときには必ず帳簿をつけ、何のために使っているのかを一目瞭然でわかるように管理しておけば経理による不正も起きにくくなります。
経理担当者だけでお金を引き出せないようにする
経理担当者一人だけで会社のお金を引き出すことができる仕組みの場合、明らかに不正が発生する確率が高くなります。
通帳を管理する人物と銀行印を管理する人物をわけて2人そろわないと引き出せないようにしておくだけでも不正の防止になります。
ネットバンキングを利用している場合、ワンタイムパスワードを活用して、送金を担当する人物とワンタイムパスワードを管理する人物を分けておくといいでしょう。
いずれの場合も、経理担当者一人だけではお金を引き出すことも送金することもできないような仕組みにしておくことが重要です。
小売店舗の現金は当日入金にする
小売店舗を抱えている会社の場合は、売上である現金の管理に注意しましょう。小売り店舗では現金でのやりとりが多くなりやすく、複数の店舗を経営している場合は横領の不正に気がつきにくくなってしまいます。
横領などの不正を防ぐためには「当日の売り上げ現金は当日に必ず入金する」ことを徹底させる方法が有効です。現金を数日店舗に置いたままにしておくと横領のチャンスを与えてしまいますし、万が一横領されても誰が犯人か突き止めにくくなります。
そして、入金する担当と、売上の報告をする担当を別の人物にすることも重要なポイントです。経営者の方は報告を受けた金額と入金された金額が一致するか、しっかりと定期的に(できれば毎日)チェックするのが望ましいです。
定期的に企業調査を実施する
定期的な企業調査も経理の不正を防止するうえでとても有効な方法です。
「企業調査にそんなにお金をかけられない」
「社員のことを信用していないみたいで気が引ける」
と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、経理の不正を長期間見逃してしまうと、横領の被害額が数億円に及ぶこともあり、会社の経営にも多大なる影響を与えるでしょう。
会社を守っていくためにも、定期的に企業調査を行うことをお勧めします。
特に、支店を持っている場合、支店には経営者が常にいるわけではありませんので、監視されているという意識が薄れて不正に手を染めてしまう社員が出てきやすい環境です。ぜひ定期的かつ抜き打ちで企業調査を行っていきましょう。
まとめ
経理担当者に対して経営者の方が大きな信頼を置いているケースは多いと思いますし、社員を信頼することは経営者として必要なことではありますが、人は誰でも何かしらのきっかけで不正を犯してしまうことがありうる、ということは頭に入れておかなければいけません。
特に、経理が不正を犯してしまうと、会社に与えるダメージは相当大きなものになってしまうことが多く、会社を守るためにも不正防止に向けての対策を強化していくようにしましょう。