うつ病の社員を辞めさせたい!解雇までの安全な手順とうつ病調査

KWうつ病は自殺の原因の4割をも占めると言われていて、100人に7人がかかると言われている、いわば現代病です。

 

社内にうつ病になった従業員がいると、通常業務に支障が出たり、うつ病の社員のフォローに他の社員のリソースを取られてしまったりと、会社にとって様々な不利益が生じてきます。そのため、うつ病の社員を辞めさせたいと思う会社は少なくないでしょう。

 

しかし、労働法によって労働者は守られる立場にあるため、簡単に社員を解雇することができないことは多くの方がご存知の通りです。

 

では、うつ病を理由に社員を辞めさせることはできないのでしょうか。辞めさせることができるとしたら、どのような手順で解雇を進めていけばいいのでしょう。今回の記事では、うつ病になった社員を辞めさせたいと考えた時に知っておきたいことや、うつ病の社員が出た時に会社として対応しておくべきこと、そして本当にうつ病なのかどうか調べるための社員への調査について詳しく見ていきます。

 

 

うつ病の社員を辞めさせたい|うつ病を理由に解雇することは可能?

うつ病になってしまった社員は、通常業務もあまりできませんし、突然の欠勤や早退を繰り返すようになるため、雇う側としては辞めさせたいと考えてもおかしくはありません。

 

会社への不利益が大きくなってしまっている場合、うつ病を理由にすぐに解雇することはできるのでしょうか。

 

 

うつ病を理由にすぐに解雇することはできない

結論から申し上げますと、社員がうつ病になったからという理由ですぐに解雇することはできません。

 

労働契約法で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。

 

単にうつ病になったからという理由だけでは、客観的に合理的な理由とはみなされませんし、社会通念上相当とは認められず、うつ病を理由にすぐに即解雇するというのは「権利の濫用」とされてしまいますので、解雇の法的効力は認められないのです。

 

 

休職期間が過ぎたら辞めさせることは可能

うつ病になった社員をすぐに解雇することはできませんが、休職期間を過ぎた場合には辞めさせることが可能です。

 

社員からうつ病になったことを申告された場合、会社としてはまず医師の診断書を求めましょう。診断書を確認し、通常通りに働くことが困難だということが明らかであれば、休職の手続きを行ってください。

 

一般的な休職規定では、休職期間が満了した時に社員のうつ病が治っておらず復職できない場合は退職となると定められていますので、休職規定に従って処理していけば、辞めさせることは可能になります。

 

ただし、休職期間が満了した際に復職が可能なのかどうかの判断は医学的な観点から行わなければならないので、会社側が独断で判断するのは危険です。医師の診断とともに弁護士とも相談しながら決めていくのが安全でしょう。

 

 

復職が可能であれば解雇はできない

休職期間が満了する際に、医師から「復職が可能」だと判断されていて、本人も復職したいと望んでいる場合は、すぐに解雇をすることはできません。

 

どうしても辞めさせたいからと言って会社が一方的に「復職できないから退職」などと判断することは危険で、しっかりと医学的な判断を元に決定していかなければなりません。焦って会社の独断で解雇を決定することは避けるべきです。

 

 

無理やり解雇した場合は不当解雇のリスクも

うつ病の社員に対して休職の対応を取らなかったり、休職期間満了時に医師の判断を仰がず会社の一存で解雇を決めたりすると、「不当解雇」として訴えられるリスクがあります。そして、残念ながら多くの場合、会社は負けてしまいます。

 

不当解雇と裁判で判断されてしまうと、解雇が無効になり再び雇わなければならなくなりますし、解雇したうつ病の社員から損害賠償請求されてしまう可能性もありますので、無理やり解雇することは絶対に避けましょう。

 

 

うつ病の原因が会社にある場合は解雇できない

うつ病になってしまった原因が会社にある場合は、本人が復職を希望する限り、実質解雇することは不可能だと考えたほうが良いでしょう。

 

会社が与える可能性のあるうつ病の原因としては、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、長時間労働などが考えられます。

 

労働基準法では、業務上の理由でうつ病などにかかった場合はその休職期間とその後30日間は解雇できない、と定められています。つまり、仕事や職場環境が原因でうつ病になった場合には原則としてその社員が復職できる状態になるまで待たなくてはならないということです。

 

うつ病の社員を解雇したい場合は、うつ病になった原因がどこにあるのか、会社が原因の可能性はあるのかなどを事前にしっかりと調査して把握しておくことも大切です。

 

 

社員がうつ病になってしまった場合に会社が取るべき対応

会社にとってうつ病の社員の存在はデメリットが大きいとは言え、うつ病を理由に簡単に社員を解雇してしまうと、不当解雇として訴えられたり、高額な損害賠償請求をされたりと、さらなるトラブルを招く可能性があるため、慎重に対応していかなければなりません。

 

では、もし社内でうつ病を発症した社員が出てしまったら、どのように対応を取っていけばいいのでしょうか。具体的な対応例を見ていきましょう。

 

 

医師の診察を受けさせる

うつ病だと思われる社員が出た場合は、まず、医師の診察を受けさせるように勧め、診断書をもらってくるように求めましょう。

 

今後、そのまま働かせても大丈夫なのか、休職させるべきなのかの対応を考える上で、素人の判断では危険ですので専門医の診断を元に決めていきます。なお医師の診断書は休職を認める際にも必要です。

 

本人も会社の人事や経営者の方も医学的な知識はほとんどないかと思いますので、医学的知識がない状態で「うつ病だ」「うつ病ではなくただの仮病だ」「単なる思い過ごしだ」などと判断してしまうと、別のトラブルに発展しかねませんし、うつ病の症状がさらに悪化してしまう危険性もあります。

 

「うつ病かも?」と思う社員がいたり、社員から直接うつ病だと申告を受けたりした際には、早急に医師の受診をしてもらい、診断書をもらうようにしましょう。

 

 

配置転換や業務量の軽減を検討する

うつ病の社員が出てしまった際でも、様々な理由からすぐに休職という対応を取らない場合もあると思います。

 

軽度のうつ病で、一見通常業務は可能であるように見える場合や、仕事内容が直接症状に影響しているわけではない場合であっても、会社としては、配置転換や業務量の軽減を検討することが重要です。

 

労働契約法では、会社には社員が安全で健康に働けるように配慮する義務(安全配慮義務)が定められていますので、うつ病を発症している社員をこれまで通り働かせて、病状が悪化するなどした場合は会社の安全配慮義務違反と判断されてしまうリスクが出てくるのです。

 

うつ病が疑われる際には、会社としては可能な限り、配置転換や業務量の調整を行うようにしてください。

 

 

休職制度や復職の流れを本人に説明

うつ病になった社員に対して休職制度を利用する際には、就業規則や休職規定を示しながら、休職できる期間や休職期間中の給料について、復職の際の流れなど、休職制度の内容をわかりやすく丁寧に説明してあげましょう。合わせて健康保険からの手当金など公的な制度についても説明してあげるとベターですね。

 

なお、休職制度は労働基準法などの法律に規定された制度ではなく、会社でそれぞれ定めているものになります。どのような場合に休職制度を利用できるのか、休職期間はどの程度なのか、その間の給与はどうするのかといった休職制度の概要についてはあらかじめ就業規則に定めておくことが大切です。

 

もし、うつ病になった社員への対応をしている際に、休職制度についての規定を設けていないことに気が付いたら、すぐに企業法務を得意としている弁護士に相談するようにしてください。

 

 

休職期間満了時に医師に復職可能か確認する

休職制度を利用し、十分に休養を取ってもらった後は、休職期間満了が近づいたタイミングで医師に復職が可能なのかどうか判断を求めましょう。

 

休職期間が満了する時点で復職できないと医師から診断されれば、就業規則の規定に基づいて自然退職となり、うつ病の社員を辞めさせることができます。

 

ただし、社員を担当している医師は労働者の意向を強く受ける傾向が強いですし、業務内容や勤務実態についてもあまり理解していないため、実際は復職が難しい状態であっても「復職可能」という診断を下す場合もあります。主治医の判断は正確性を欠く場合もあり、バイアスがかかっている可能性もあるのです。

 

そのため、できれば会社の指定する病院の専門医の受診も同時に行い、セカンドオピニオンとして復職が可能なのかどうかの判断を合わせて行うのが適切と言えます。

 

 

退職勧奨で交渉する

うつ病の社員を辞めさせたいと考えた時、退職勧奨で交渉するという対応も可能です。退職勧奨は基本的にどのタイミングで行うことも可能ですが、できれば休職制度を利用してもらい、休職期間が満了しても復職が難しいという状況で行うのがベストでしょう。

 

うつ病にかかってすぐに退職勧奨を行ってしまうと、病気と相まって相当な精神的ショックを受けさせることになってしまいますので、退職勧奨の対応を取るときは社員の状況に配慮してあげるのが重要です。

 

また、退職勧奨で交渉する際には、社員本人と現状についてよく話し合いをし、「あくまで退職勧奨なので拒否することもできること」「退職勧奨を拒否したからと言って不利益を与えられることはないこと」「仮に受け入れて退職した場合はどのような条件になるのか」などを丁寧に説明しながら、交渉を進めていくことが大切です。

 

 

解雇の話をする際は弁護士に相談する

うつ病の社員を辞めさせることはとてもデリケートな問題になります。焦って無理やり解雇してしまったり、強引に退職勧奨の話を進めてしまったりすると、不当解雇や損害賠償請求など大きなトラブルに発展してしまうリスクもあります。

 

解雇の話を進める際や退職勧奨の交渉を行う際には、前もって法律の専門家である弁護士に相談してから進めていくと安心です。労働問題や企業法務などを専門にしている弁護士に相談することで、安全にうつ病の社員を辞めさせるために適切なアドバイスをもらうことができるでしょう。

 

 

労働環境を見直す

社内からうつ病の社員が出てしまった場合は、労働環境の見直しも必要不可欠な対応です。社員がうつ病を発症した原因が、会社の労働環境にある可能性もありますし、今後同じようなうつ病の社員が出てくる危険性もあります。

 

具体的には、長時間労働をさせていないか、パワハラやモラハラ、セクハラやいじめが起こっていないか、過度なノルマを与えていなかったか、などの労働環境を見直してみましょう。

 

労働環境に少しでも問題点がある場合は、さらなる問題が起こらないよう、早急に改善措置を取るようにしてください。

 

 

そもそもうつ病は本当?うつ病が仮病かどうかを調査することも必要

ここまででうつ病の社員への対応やうつ病の社員を辞めさせる手順などを解説していきましたが、そもそも本当にうつ病かどうか疑っていらっしゃる経営者の方も少なくないのではないでしょうか。

 

実際、うつ病の診断書を出してもらっていた社員が実は副業に精を出していた、という事例や、うつ病を理由に長期で休職していた社員がパチンコ店に入り浸っていた、といった事例も存在します。

 

大切な社員ですので、うつ病が本当であると信じたい気持ちもあると思いますが、もし本当にうつ病というのが嘘の理由で他の理由で不正に休職しているのであれば、会社としては無駄なお金を支払っていることとなりますし、余計な労力を使ってしまうことになりますので容認することはできないでしょう。経営者としてうつ病は嘘で仮病なのか、本当にうつ病を患っているのかの事実を知っておく必要はあります。

 

「もしかして、うつ病って言っているのは嘘なのではないか?」と疑わしく感じているのであれば、社員の素行調査を行って真実を見極めることも必要ではないでしょうか。

 

社員の素行調査によってうつ病というのは嘘で仮病を使っていることがわかれば解雇や減給などの処分がスムーズに行えますし、本当にうつ病を患っているとわかれば復職を待つこともできます。

 

社員の素行調査は、調査のプロである探偵に依頼するのが最も安全で効率が良いので、少しでも社員に対して疑念を持っている場合は、企業調査に精通している探偵に相談してみると良いでしょう。

 

 

まとめ

今回お伝えしてきたように、社員がうつ病だからといってすぐに辞めさせることはできません。まずは休職制度を利用してもらったり、労働環境を見直したりなど会社としてできることを行い、医師の診断を仰ぎながら解雇の話を進めていくのか、復職をしてもらうのかを判断していくことになります。

 

辞めさせるとなると、うつ病の社員の解雇は非常にデリケートで、不当解雇などのリスクも伴いますので、企業法務を専門としている弁護士に相談しながら進めていくのが安心です。また、うつ病が本当かどうかの調査も合わせて行っておくことで、正しい判断をすることができるでしょう。