近年、SNSの普及により、真実ではない嘘の情報が拡散されてしまうフェイクニュースによる被害や、誹謗中傷の書き込みが拡散されて多くの人が信じてしまう被害が増えています。

さらに、人々の生活に大きな悪影響を及ぼしている新型コロナウイルスは誹謗中傷やフェイクニュースにも関わっていて、コロナによってもたらされる健康不安や金銭的不安のせいで、誹謗中傷の炎上事件が増えていると言われています。

今回は、フェイクニュースや誹謗中傷によって起こる被害の実態や問題点、フェイクニュースを発信する犯人の目的、そしてフェイクニュースや誹謗中傷の被害を受けてしまったときの適切な対処法についてお伝えしていきます。

フェイクニュースとは

フェイクニュースとは、一見すると正しい情報や真実に見えるけれど、実際には偽の情報のことを指し、嘘の情報にも関わらず、インターネットや、時には有識者がSNSなどで拡散するために混乱を招いてしまいます。

目立ちたい人物が目立つような内容のフェイクニュースを創作して拡散していることもありますし、ライバル企業が悪意を持ってフェイクニュースを流していることや政治的な影響を与えるためのものもあります。 また、中にはフェイクニュースを拡散することによって自分の運営するショッピングサイトに誘導して儲けることを目的としているケースもあります。

新型コロナウイルスをめぐるフェイクニュースも後を絶たない

猛威を振るっている新型コロナウイルス関連のフェイクニュースも数多く報告されています。 新型コロナウイルスのフェイクニュースがきっかけで、トイレットペーパーが品切れになったことは記憶に新しい方も多いでしょう。

「マスクと同じ原料が使われている」「原料が中国から輸入できなくなる」といったフェイクニュースがSNSなどで拡散されて、多くのスーパーや薬局でトイレットペーパーの買占めが起こってしまいました。 また、欧米では、「アジア人がウイルスを拡散している」「コロナウイルスは中国政府による生物兵器である」といったフェイクニュースが拡散され、それを信じた欧米人が、マスクをしているアジア人女性に暴行を加える事件も発生しています。

これは、社会全体が不安に包まれると、常に人々はストレスや不安を抱えてしまうため、不安を解消するために「悪者」を見つけて批判することで、心を満たそうとする心理によるものかもしれません。

フェイクニュースを発信する犯人の目的

フェイクニュースにはいろいろな種類のものがありますが、フェイクニュースを発信する人の目的にはどのようなものがあるのでしょうか。この章では、フェイクニュースを流す人の代表的な目的について見ていきます。

単純に目立ちたい

単純に目立ちたいという個人的な目的からフェイクニュースを発信する人も存在します。最近は有名無名関わらずYoutuberが増えていて、なかなか再生回数を伸ばしたり、チャンネル登録者数を伸ばしたりするのに苦労している人がとにかく目立つことでYoutuberとして活躍したいと間違った方向で頑張ろうとしているケースもあります。 また、SNSでいいね数をより多く稼ぎたいという人も目立つフェイクニュースをわざと発信することもあるようです。

特定の企業や個人の評判を落としたい

フェイクニュースは特定の企業や個人、飲食店などのお店を陥れるために使用されることがあります。 企業の評判を落とす目的のフェイクニュースはライバル企業が発信していることもありますし、会社を辞めていった元従業員がフェイクニュースを流していることもあります。このケースのフェイクニュースは誹謗中傷が含まれていることがほとんどなので、もしご自身や経営している会社が対象となっていることに気が付いたらすぐに対処することが大切です。

政治的誘導のため

自分たちの陣営に有利なフェイクニュースを拡散したり、逆に相手陣営に不利なフェイクニュースを流したりして、投票を操作する目的で政治誘導の手段として使われることがあります。

アメリカ大統領選挙において、「ローマ法王がトランプ氏を支持、世界に衝撃」などというフェイクニュースがアメリカを中心にネット上で広く拡散されてしまい有権者を混乱させたこともありますし、イギリスの国民投票でEU離脱の是非を問う際に、事実よりも誇張された数字が使用されたことで国民投票に大きな影響を与えたこともありました。 フェイクニュースは様々な種類がありますが、沈静化する気配はなく、どんどん過激化しているのが事実です。

フェイクニュースによって起こる被害や問題点

フェイクニュースは真実ではない情報が拡散されるので良い出来事は起きないことはなんとなく感じるところだと思いますが、具体的にはどのような被害や問題が起きるのでしょう。

売り上げや評判が下がる

「●●会社の製品は品質管理がずさんだからすぐに壊れる」

「△△企業はサービス残業を毎日させて残業代を払わないブラック企業だ」

「××のお店の肉は賞味期限の切れた腐った肉を使っている」

など、事実無根で誹謗中傷目的のフェイクニュースを拡散されてしまうことによって、確実に売り上げや評判に影響を与えてしまいます。 フェイクニュースであったとしてもそれを信じてしまう人の顧客離れは避けることが難しいのです。

参考記事:ブラック企業という誹謗中傷を受けたら名誉棄損になる?適切な対処法

健康被害が起こる

キュレーションサイト(特定の話題についてのまとめ記事)の中には医学的知見が必要で医師の監修無くしては記述や公開をするべきではないにも関わらず、誤った情報が書かれて公開されているものもあります。

そして、誤った情報が書かれていくつかの医学系のキュレーションサイトが検索結果の上位に表示されたことで多くの人に閲覧され、フェイクニュースをもとに間違った薬を買ってしまったり、病院にいく必要があるのに病院に行かないなどの選択を取ってしまったりという問題も起きました。 検索結果の上位に表示されているために多くの医学的知識を持たない人たちがフェイクニュースを信じて健康被害が起きてしまったのです。

買占めが起こる

2020年のコロナウイルス騒動では、「トイレットペーパーの生産地が打撃を受けているため、もうすぐ品切れになる」「マスクと同じ原料を使っているからトイレットペーパーがなくなる」というフェイクニュースが発生しました。 これを信じてしまった多くの人々が次々にトイレットペーパーを買い占めてしまったため、どこに行ってもトイレットペーパーが手に入らないという品不足が発生しました。

同じようなフェイクニュースによる買占めは、コロナウイルスのときだけでなく、大規模地震や洪水のときにもよく起こることです。 人々は不安な状況に陥るとその情報が本当に正しいのかどうかの判断が難しくなるため、普段から情報のファクトチェックを癖付けておくことが大切だと言えます。

政治的なトラブルが起こる

先ほど、フェイクニュースを流す目的の部分でも触れましたが、フェイクニュースは政治にも大きな影響を与えてしまいます。 過去にアメリカ大統領選挙やイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票でもフェイクニュースが大きく影響を与え、本来であれば別の候補に投票していたかもしれない人たちがフェイクニュースによって誘導されてしまったという問題が起きているのです。

フェイクニュースや誹謗中傷を書き込んでいるのはほんのわずか!?

フェイクニュースや誹謗中傷は一度インターネット上に出回ってしまうとどんどん拡散されてしまい、書かれた対象者はものすごく焦ってしまうでしょう。 その結果、会社やお店が倒産の危機に追い込まれたり、個人の方が自殺にまで追い込まれたりする最悪の事態も招きます。

しかし、実際には誹謗中傷の炎上に参加しているユーザーはほんのわずかと言われています。過去1年以内のインターネットの炎上に参加している人は、約0.5%しかいなかったというデータも出ています。 さらに、誹謗中傷の炎上に参加している人も、ほとんどの人は炎上1件に対して1~3回しか書き込みをしませんが、中には50回以上書き込む人がいたり、数百のアカウントを使って誹謗中傷の攻撃をしたりする人もいるのです。

つまり、フェイクニュースや誹謗中傷の被害が起きているとわかったら、すぐに書き込みをしている犯人を特定し対処すれば、さらなる被害は防ぐことが可能になるということです。

参考記事:わが国における誹謗中傷・フェイクニュースの実態と社会的対処

もし自分の会社やお店がフェイクニュースの誹謗中傷を受けてしまったら・・・

フェイクニュースや誹謗中傷は真実でない情報なので、それらの情報に振り回されないよう、自分自身できちんと情報元を確認して、情報として頭に入れるかどうかを判断していくことが大切です。

しかし、もし自分自身や自分の会社、お店がフェイクニュースや誹謗中傷のターゲットにされてしまったらどうすればいいのでしょうか。 フェイクニュースや誹謗中傷をそのまま放置してしまうと、それらの情報を信じてしまう人によってさらなる被害が拡大してしまう恐れもあります。

適切な対処法としては、フェイクニュースや誹謗中傷の内容の削除依頼をサイト運営者に対して迅速に行うとともに、書き込んでいる人物を特定し損害賠償請求や刑事罰で訴える方法を取るのが一番です。 フェイクニュースや誹謗中傷を書き込んでいる加害者の特定方法や特定した後の対処法については、こちらの【誹謗中傷に対して企業ができる対策と誹謗中傷を受けた時に取るべき対応】や【発信者情報開示請求して誹謗中傷投稿者を特定しよう!流れとポイント 】で詳しく書いておりますので、合わせて参考にしていただければ幸いです。

まとめ

今となってはインターネットを使わない日はなく、その影響力は計りしれなくなってきています。便利である反面、リスクが伴うことも事実で、フェイクニュースや誹謗中傷などは今後も増えていくことが予想されます。

フェイクニュースに騙されないためにも、情報の出どころが信頼できるものなのか、真実とフェイクが入り混じってはいないかなどしっかりと確認し、自分自身で情報の信頼性を見極めることが大切です。

そして、もし万が一、自分自身や大切な人、自分の会社やお店などがフェイクニュースや誹謗中傷のターゲットにされてしまったら、そのまま放置して泣き寝入りするのではなく、適切に対応して法的手段に訴えていくことをお勧めします。 誹謗中傷やフェイクニュースの拡散についてのご相談は当事務所でも数多く請け負っておりますので、お悩みの方はぜひご相談していただければと思います。