新型コロナウイルスの影響で、事業が立ち行かなくなり、倒産する会社も増えています。

自分の会社はちゃんと経営もうまくいっているし大丈夫!と思っていても取引先が倒産してしまうことも十分に考えられます。 また、取引先の場合、自分の会社と違って経営状況が掴みにくいため、ある日突然倒産してしまったという事態に陥ることも珍しくないのです。 そこで今回は、取引先が倒産した場合に売掛金をどのように回収すればいいのか、そして、倒産する可能性を視野に入れてどのように事前準備をすればいいのかをお伝えしていきます。

また、取引先の倒産によって自社も連鎖倒産してしまうのを防ぐために活用できる探偵による企業調査についてもご紹介していきます。

コロナで取引先の倒産が増加?

コロナの影響で経営が厳しくなったと実感している経営者の方は多いと思いますが、実際にどの程度影響が出ているのでしょうか。

株式会社帝国データバンクの調査によると、新型コロナウイルス関連で倒産した法人や個人事業主は2021年5月時点で、全国で1488件と言われています。 2021年にはいり、コロナ関連の倒産は急激に増え、2月以降3か月連続で月間の倒産最多件数を更新し続けています。

コロナが原因での倒産は他人事ではなく、自分の会社がなんとか持ちこたえられたとしても取引先が倒産して打撃を受けることは確率的にもかなり高いことだと言えるのです。

取引先が倒産した時のリスクとは

取引先が倒産した場合、どのような影響が出てくるのか、具体的にはイメージしにくいかもしれません。取引先が倒産した場合、どのようなリスクがあるのでしょう。

売掛金が回収できない

破産法42条1項により、取引先が倒産して法的整理をした場合、個別の対応として売掛金を回収するということは原則として禁止されています。つまり、売掛金が回収できなくなってしまうというリスクがあります。

倒産した場合、配当手続もありますが、現実問題として、倒産する会社に配当を期待できるほどの財産が残されていることはほとんどありません。取引先が倒産したら、債権回収がかなり困難になってしまうことは念頭に置いておいたほうがいいでしょう。

共倒れで倒産する

自社の取引における割合が大きい取引先が倒産した場合、自社の売上が激減してしまうことが考えられます。売掛金の回収もできなくなってしまうことを考えると、会社の財政的な体力によっては共倒れで倒産するリスクも高くなります。

また、取引先の倒産により業績が悪化することは避けられないと思います。そうなった場合、金融機関からの融資も受けられなくなる可能性があり、今後の事業継続にも影響が出てくるでしょう。

取引先が倒産したときの売掛金の回収方法

取引先が倒産した場合、売掛金の回収はかなり厳しくなりますが、できる限りのことで回収もしくは回収に近い形を目指すことができます。 なお、売掛金の時効は原則5年と定められているので、可能な限り速やかに回収の対応を進めなければなりません。

取引先の情報を収集する

まずは、取引先の実情について確認する必要があります。

・倒産の事実が本当かどうか

・倒産の種類が再建型か清算型か

・債権の種類や金額

・代表者の所在はどこか

・納品済商品の所在はどこか

・取引先への債務が有るかどうか

・担保・保証人の有無

・ほかの債権者の動向はどうなっているか

などの情報を集めてください。

相殺する

倒産してしまった取引先に買掛金などの債務がある場合は、お互いの債権を相殺することによって売掛金の回収に近い納得感が得られるでしょう。 なお、相殺するためには「相殺したい」という意思を取引先に知らせなければなりません。

できるだけ早いタイミングで相殺したい意思を取引先に伝えましょう。伝え方は内容証明郵便などの公的文書でももちろん可能ですが、特に規定されているわけではないのでEmailなどでも可能です。

商品を引き上げる

商品を引き上げることで売掛金の回収と同等の納得感を得る方法もあります。 ただ、商品を引き上げるためには「商品代金を完済するまでは商品の所有権は自社に留保する」などと契約段階で事前に取り決めている必要があります。

また、商品の引き上げを行う場合には倒産した取引先に了承を得る必要がありますので、勝手に商品を引き上げないように注意してください。勝手に商品を引き上げてしまうと、場合によっては請求した側のあなたの会社が不利な立場になる可能性があります。 商品の引き上げに対する合意を得られたら、同意書など文書を作成して証拠として保存しておきましょう。

担保権を実行する

取引先が保有している不動産などについて、担保権を所持しているのであれば、担保権を実行することで売掛金の回収の代わりとすることも可能です。

差押をする

もし、取引先と前もって、公正証書を交わしていて、事前に契約書に「未回収の債権が発生した場合、強制執行をする」ということを記載していたならば、取引先の財産を差し押さえることができます。この手続きは裁判での手続きを経ることなく実行することができますので、売掛金の回収の代わりの対応としてある程度納得ができるでしょう。

ただし、取引先が破産手続きを行った場合は、強制執行による効力が消滅してしまいますので、その場合は差し押さえ以外の別の方法で対応する必要が出てきてしまいます。

債権譲渡する

売掛金回収の見込みがほとんど無い場合は、取引先に対する債権を債権回収会社などの専門業者へ譲渡するのもひとつの方法として検討してもいいでしょう。

その場合、買い取ってもらえる金額は当然、債権額よりも小さくなるため、ほかの方法での回収と比べると回収できた場合のメリットは少なくなってしまいますが、回収できる可能性がほとんどない場合は無駄な債権回収にかける負担や労力から解放されますので、総合的に考えて判断するといいですね。

連鎖倒産を防ぐ!取引先が倒産した時に備えて事前にできる対策

取引先が倒産してしまうと、売掛金の回収などでかなりの苦労を迫られることはご理解いただけたと思います。 売掛金をスムーズに回収するためには、速やかに対応することが極めて重要ですが、取引先の倒産により、連鎖倒産しないためには事前にしっかりと対策しておくことが何よりも重要です。 連鎖倒産を回避するために事前にしておくべき具体的な対策について解説していきます。

契約書の作成

取引先との関係が長期に渡っている場合や取引実績がある場合など、契約書を作成しないで口約束で契約するケースは少なくありません。

しかし、口頭での契約だと、契約内容が不明確になっていたり、取引先が倒産した際に債権回収が困難になったりするリスクがあります。 取引先の倒産に備えて、契約内容や契約金額、代金の支払い方法などしっかりと契約書にまとめておきましょう。

相殺権を確保しておく

万が一の倒産に備えて、相殺できるための権利を確保しておくことも大切です。「取引先からも商品を購入する」という内容など、相殺権を確保しておくことで、倒産してしまった場合に相殺による回収対応が可能となります。

担保権を確保しておく

取引先と契約する際、あらかじめ抵当権のような物的担保や連帯保証のような人的担保などの担保を確保しておくことで、倒産に備えることもできます。 取引先が倒産して未払いの債権がある場合、担保権を実行することによって回収できる可能性を高めることができるのです。

時効期間を調査しておく

売掛金はいつまでも請求できるわけではなく、債権には時効が存在します。債権の時効は、支払期限の翌日から数えて原則5年と定められていますので、何年の何月まで請求することができるのかあらかじめ調べておく必要があります。 時効が消滅してしまう前に回収するような手順を考えることが重要になります。

もしかして取引先が倒産するかも?倒産する取引先の予兆

取引先が倒産しそうになっていることをいち早く察知することができれば、もろもろの準備を余裕をもって進めることができます。では、取引先が倒産しそうかどうかを察知することはできるのでしょうか。

ここでは、倒産しそうな取引先の予兆についてみていきます。このような予兆が出ている取引先には注意を払ったほうが賢明だと言えます。

経営者、責任者が変わった

経営状況が悪化してくると、経営者や責任者はお金を集めるために、銀行や取引先への対応に追われるようになります。その結果、経営者や責任者がどんどん会社からいなくなってしまうのです。 経営者や責任者が最近変わったなと感じたら、倒産するかもしれないと注意してみていたほうが良いでしょう。

また、しょっちゅう社員が退職していたり、役員が頻繁に入れかわっていたりする場合も、その会社に見切りをつけて退職している可能性もありますので、注意したほうがいいかもしれません。

支払いに関する取引の内容が変わった

取引先が支払わなければいけない期限を引き延ばしたり、逆にこちら側の支払い期限を前倒しにされたりなど、支払いに関する取引内容を急に変更したいと言われた場合も要注意です。

倒産の危機にある企業は資金繰りに困っているため、支払いに関する取引内容を急に変更しようとしてくる可能性があるのです。 このような変更があった場合は慎重に判断するのがいいでしょう。

会社の不祥事が発生した

会社の不祥事が発生した場合も倒産の予兆として考えたほうがいいですね。 資金繰りに困り果てた結果、不正会計や偽造、捏造など不正行為を責任者や役員、会社経営者自身が指示を出すこともあるのです。

まとめ|取引先の倒産を早めに察知!倒産リスクを図る企業調査は必須

取引先が突然倒産することは、決して珍しいことではありません。あなたの会社の取引先が明日突然倒産することだってあるのです。 避けられないことかもしれませんが、できるだけ早めに察知することによって対応をスムーズにできますし、連鎖倒産からあなたの会社を守ることができます。

できるだけ早い段階で取引先の倒産リスクを察知するためには、企業調査をして会社のリスクを調べておく方法が一番確実です。

企業調査は探偵が得意とする調査の一つで、取引先を調査したり、取引を検討している会社を前もって調べたりすることも可能です。 様々なリスクから大切な会社を守るためにも、企業調査を徹底して行っていくことが大切だと言えます。