KW特に大きな揉め事もなく、スムーズに自主退職したと思っていた従業員であっても、後に会社に対して嫌がらせをしてくるケースは少なくありません。
元々いた会社と競業するような事業を立ち上げたり、会社の顧客と接触して引き抜こうとしたり、会社の優秀な社員を引き抜こうとしたり、ありもしない会社の悪口や誹謗中傷をネットに流したりなど、会社にとって不利益になるような行動を取る元従業員に悩まされている会社も多いでしょう。
実際、当事務所にも、退職した後に元従業員が嫌がらせ行為をすることで、業務に支障が出てしまった、取引先との関係が悪化した、新規採用に苦労している、などのご相談が最近多くなってきています。
今後も、雇用の流動化が進んでいくと考えられますので、このような元従業員からの嫌がらせに関するご相談は増えていくでしょう。
今回は、元従業員からの嫌がらせに関してどのように対処していくべきか、探偵に相談することでどのような調査を行ってくれるのか、嫌がらせに関する調査は自社内ではなくプロに任せるべき理由などを解説していきます。
元従業員からの嫌がらせにお困りの経営者の方はぜひ参考にしてみてください。
元従業員からの嫌がらせでよくある事例と会社の対応
まずは、退職した元従業員からどのような嫌がらせが考えられるのか、よくある事例を見ていきましょう。合わせて、会社はどのように対応するのがいいかもワンポイントアドバイスとしてご紹介していきます。
競業行為
会社を退職した後に元従業員が同じようなビジネスモデルで事業を始めたり、取引先に働きかけて取引先を奪っていく行為をしたりすることはよくある行為です。このような行為は競業行為で、会社としては見過ごすことができないですよね。
しかし、会社を辞めた従業員に対して取引先を奪うような行為を法的に禁止できるかというと必ずしもそうとは限りません。元従業員はすでに会社を辞めているので、元いた会社から制限されたり指示されたりする筋合いはないと考えられるからです。
会社として、辞めた従業員からこのような競合調査を防止するためには退職後も引き続き競業避止義務を負わせられるようにしておく必要があります。そのためには、退職する際や雇用期間中に競業避止義務に関して両者で合意を取っておかなければなりません。
ちなみに、競業避止義務に関して、法的義務はありませんので、従業員は拒否することも可能ですし、競業避止義務について同意を得ていても100%法的義務を追及することができるかというとそうではありませんので、一筋縄ではいかないと覚悟しておいたほうがいいでしょう。
法律において、どのようなケースで競業行為に法的責任を追及できるのかは専門家にしか判断が難しい場合が多いですので、弁護士に相談しながら対応を検討していくのがいいでしょう。その際、元従業員による行為の違法性についての証拠が重要となりますので、それについては調査のプロである探偵に相談するのがお勧めです。
機密情報を漏らされる
会社によっては情報そのものが重要な資産となっている場合は多いですよね。顧客情報、技術情報、配合情報など、その情報があることによって企業価値を生み出すことができるものもあります。
このような会社の機密情報を持ち出されたり漏洩されたりしては、会社としても黙っているわけにはいかないでしょう。これに関しても、情報漏洩されたからといって必ずしも元従業員に法的責任を追及できるとは限りません。
退職した後も秘密保持義務を発生させるように対策を取っておく必要があります。また、元従業員が情報を漏らしたという確固たる証拠や情報の扱い方が本当に違法行為に該当しているのかという証明も必要となってきます。
弁護士や探偵と連携しながら対応を進めていくのが安心でしょう。
なお、機密情報を漏らされたことに対して損害賠償請求を考えるケースも多いですが、情報それ自体の経済的価値を客観的に算定することが難しいため、損害額の立証も難しいことが多いです。そのため、情報漏洩そのものに対する損害賠償というよりは情報漏洩によって会社的信用が失われたことに対しての損害賠償や、情報を持ち出したことで取引機会が失われたことへの損害賠償として対処していくほうが賢明な場合が多いです。
SNSやインターネットへの誹謗中傷の書き込み
最近特に多くなっている元従業員からの嫌がらせのパターンとしては、元従業員が転職サイトや就活サイトのネット掲示板に、会社を誹謗中傷する内容の投稿を行ったり、ありもしない悪口をSNSなどに載せたりするものがあります。
古典的な嫌がらせとしては、取引先に誹謗中傷が書かれた怪文書を送り付けるというものもあります。
SNSやインターネット上に誹謗中傷を書かれてしまった場合は、サイト運営者に削除申請を行って投稿を消してもらうというのが初動になるでしょう。投稿した犯人が特定できていない場合などは、ネットトラブル調査に強い探偵に調査してもらい、犯人を特定してもらうことも重要です。
ネットに誹謗中傷を書き込まれた場合、あっという間に広まってしまいますし、それによって顧客や取引先からの信頼を失う恐れがありますが、それに対しての対処としては、説明文書を配布したり、会社のホームページで説明文書を掲載したりという対応が考えられます。
元従業員による情報漏洩や競業行為は調査によって明らかにする必要がある
元従業員によって競業行為をされたり、機密情報を漏洩されたりする場合、会社の社会的信頼や業績にも影響を与えかねません。それくらい、元従業員による嫌がらせ行為は会社に与える影響が大きいものです。
退職後に競業行為をすることは、競業避止義務違反に該当する可能性がありますし、情報漏洩は秘密保持義務違反になる可能性があります。
そのため、場合によっては捜査機関へ告訴を考えることになると思いますが、これらの違反行為は立証できなければ告訴を受理してもらえる可能性が低くなってしまいますし、民事訴訟を有利に進めることも難しくなります。会社として嫌がらせ行為にしっかりと対処していくためには、元従業員が不正行為をしたという証拠を固めることが何より重要です。
嫌がらせ行為や不正行為の証拠収集は、素人の方が調査しようとしてもなかなかうまくいかずに時間を浪費してしまいますし、相手にバレて証拠隠滅をされてしまうリスクがありますので、専門家である探偵に依頼するのがお勧めです。
この章では、探偵が行うプロならではの素行調査の手法や調査内容を解説していきます。
探偵による素行調査とは
告訴や民事訴訟を有利に進めるための証拠は素行調査によって得られる可能性が高いです。
素行調査とは、尾行や張り込み、関係者などへの聞き込みによって、調べたいターゲットが「いつ・どこで・誰と・何をしていたか」を明らかにする調査です。
素行調査中に競業に関する行為や情報漏洩行為の決定的瞬間があれば、写真や映像として記録に残し証拠とします。
尾行はターゲットが自宅を出てから、勤務先や外出先に出かけ、帰宅するまでのすべての行程を追跡し記録していきます。
張り込みは、ターゲットの自宅や勤務先、外出先などの近辺で待機して、決定的瞬間がないか見張ります。
聞き込みでは、ターゲットについてよく知っているであろう従業員や元従業員、取引先の人物など直接接触したことのある人物や、それ以外にも近隣住民やよく立ち寄っている飲み屋やカフェの関係者などからもターゲットに関する情報収集を行っていきます。
尾行、張り込み、聞き込み、どれを取ってみても社内の人間が行ってしまうと元従業員本人に警戒されやすくなりますし、関係者からの不審がられてしまうので、やはり専門家に依頼するのがベストでしょう。
素行調査によってどんなことがわかる?
素行調査はプロに依頼したほうがいいとお伝えしましたが、具体的にどのようなことが明らかになるのでしょうか。探偵が行う素行調査では、元従業員の普段の生活や行動、嫌がらせ行為に関する行動はもちろん、元従業員の交友関係や借金の有無などプライベートな内容まで、幅広い情報が証拠として集めてもらえます。
具体的には以下のような情報を入手することができます。
✓退職後の勤務先
✓退職後の仕事内容
✓退職後の勤務先での役職
✓退職した理由
✓退職した従業員が接触している人物
✓接触中の会話の録音データ
✓自社の他の従業員を引き抜いたかどうか、引き抜こうとしたかどうか
✓自社の従業員と未だに連絡を取り合っているか
✓自社の機密情報を持ち出したかどうか
✓自社の顧客情報を持ち出したかどうか
✓自社のシステムへ不正にアクセスしていないか
✓自社の社会的信用を損ねるような投稿をネット上でしていないか
✓自社の社会的信用を損ねるような投稿をSNSでしていないか
✓退職後の生活状況
これらの情報を探偵は尾行や張り込み、聞き込み調査によって入手し、調査中に得られた写真や映像、音声を調査報告書として依頼主である会社に提出します。探偵による調査報告書は嫌がらせ行為の全容解明をするうえで役に立つことはもちろん、告訴や民事訴訟する際の有力な証拠としても使うことが可能です。
元従業員からの嫌がらせを解決するための調査はプロに依頼するのがベスト
元従業員からの嫌がらせ行為を辞めさせ、本人に法的責任を追及するためには素行調査を行って証拠を入手することが有効とお伝えしました。
ただ、素行調査を探偵に依頼するのはタダではできませんし、費用が高くなるというイメージから自社の社員でなんとか調査をしようと考える経営者の方もいらっしゃると思います。
確かに、探偵に調査を依頼するのは安いものではありませんが、ご自身で行って調査に失敗してしまい、証拠を取れなくなってしまっては問題の解決に至らないため、お金をかける価値があります。
ここでは、嫌がらせ調査をプロに依頼するべき理由について改めてみていきましょう。
素人の調査は法律違反になる恐れがある
素人の方が自力でターゲットに関する素行調査を行った場合、最も懸念されるのが法律違反になる恐れです。
元従業員に関する調査は嫌がらせ行為や不正行為を暴くために行うものですが、やり方を間違えてしまったり無理に行おうとしたりすれば逆に相手からプライバシー侵害やストーカー行為として訴えられてしまう恐れがあるのです。
元々は会社が被害者なのに、無理に調査してしまったために会社が訴えられれば加害者とされてしまい、社会的信頼を自身で失うことになります。
嫌がらせ行為の証拠を取るための素行調査ですが、傍から見れば元従業員のプライベートを詮索しているとも取れますので、もしターゲットが調査されていると気づいてしまったらプライバシー侵害として訴えてくる可能性もあります。
また、聞き込み調査によって関係者に話を聞いていることが知られた場合は名誉毀損として訴えてくるリスクもあるでしょう。
一方、探偵に調査を依頼した場合は探偵業法という法律に基づいて調査を行います。探偵業法では、探偵業務として行う尾行や張り込み、聞き込み調査は合法とされていますし、調査によって得られた情報は秘密保持義務によってしっかりと守られますので、相手から訴えられる心配もなくなります。
また、探偵ではない素人の方が尾行や張り込みを行うとストーカー行為として訴えられる恐れが大きいですが、探偵が法律に則って行う素行調査であれば、探偵業法で正当性が認められているれっきとした調査ですので、仮に尾行や張り込みを元従業員が気付いたとしてもストーカー規制法違反が適用されることはありませんので、安心です。
調査の難易度が高く素人では困難
素行調査はドラマや映画などでも探偵が行っているシーンがよくありますので、簡単にできそうに見えますが、実際にはかなり難易度が高い調査です。調査自体も難しいですが、告訴や民事訴訟の際の証拠として認められるような証拠能力の高いものを取るとなるとさらに難易度は上がります。
素行調査では、元従業員が隠したい、知られたくないという証拠を取るための調査ですので、当然元従業員に気づかれないように行うことが大前提となります。もし万が一、元従業員が調査されているのに気がついてしまえば、警戒心が強くなり尻尾を出さなくなりますし、証拠も集められなくなってしまうでしょう。
素人の方が尾行や張り込みをしようとすると、どうしてもターゲットに近づきすぎてしまったり、視線を送りすぎてしまったりして調査が失敗に終わることがほとんどです。一方、探偵は相手に気づかれない尾行や張り込み調査についての特殊な訓練を積んでいますし、技術だけでなく知識もつけていますので、元従業員に気づかれてしまうリスクはかなり回避することができます。
また、尾行中にはターゲットを見失ってしまうというリスクもあります。元従業員に気づかれないようにするために距離を取りすぎてしまったり、相手が徒歩からタクシーに交通手段を変えてしまったりすると見失い、調査が失敗に終わってしまうことはよくあります。探偵であれば複数人のチームで調査を行いますし、行動の予測をしながら計画を立てていますので、すぐに探し出すことが可能です。
調査時間が長時間になり通常業務ができない
元従業員の嫌がらせ行為や不正行為を明らかにするための調査は朝から晩まで一日中かかることもありますし、証拠を取るためには一日では終わらないケースがほとんどです。
ターゲットにバレそうになったら一時中断しなければなりませんし、見失ったら後日出直しということもあるでしょう。
社内の人間で調査を行おうとすると、通常業務を放っておいて調査に時間をかけなければいけなくなってしまいますので、調査時間を確保することは非常に困難です。
さらに、尾行や張り込みは片時も目を離すことができませんので交代する要因が必要です。少なくとも2名以上は調査にあてなければいけませんので、社内から2名も出すのは効率的とは言えないでしょう。
本来の業務に関わる貴重な従業員を調査に駆り出すより、プロの探偵に任せたほうが賢明といえます。
まとめ
元従業員からの嫌がらせに困らされている経営者の方は少なくありませんし、元従業員だからこそ、会社に多大なダメージを与えるような嫌がらせができてしまうのも事実です。
一緒に働いていた元仲間だからこそ、あまり問い詰めたくはないという気持ちもあるかもしれませんが、嫌がらせの内容によっては会社の業績に関わるほどのダメージを与えられるリスクもあります。
嫌がらせの被害が今以上に大きくなってしまう前に、専門家の力を借りながら慎重に対処していくようにしてください。