社内不正をしたら確実にクビになる⁉社内不正に対する処分とは

KWちょっとした出来心から、つい社内で不正を犯してしまった方も中にはいらっしゃるでしょう。最初は軽い気持ちで始めた社内不正も、「バレていない」という安心感からどんどん歯止めが利かなくなり、大きな不正につながってしまうこともあります。

 

大きな不正になってしまったときには社内でもバレる寸前で「このままだと自分はクビになってしまうのではないか・・・」と大きな不安を抱えることになります。

 

反対に、あなたが会社の経営者で、自分の会社で社内不正が起きている事実を知ったとき、「社内不正を犯した社員をクビにしていいのだろうか?」「社内不正に対してどのような処分をするのが妥当なのだろうか」と疑問に感じるかもしれません。

 

今回は、誰でも犯しうる可能性のある社内不正について、社内不正をしたら確実にクビになるのか、クビ以外にどのような処分を受ける可能性があるのか、社内不正をしてしまったらもしくは社内不正が自社内で起きてしまったらどのように対処するべきかを詳しくお伝えしていきます。

 

 

社内不正=クビというわけではない

社内不正を犯してしまった側も、社内不正をされた経営者側も、「社内不正をしたら即刻クビにされるORクビにできる」と考えてしまう方が多いのですが、たとえ社内不正を行ってしまったからといって、クビ(懲戒解雇)が正当化されるわけではありません。

 

クビ(懲戒解雇)にされることで、その従業員は今までの職を失うことになりますので、収益源が無くなりますし、退職金の全額もしくは一部がもらえなくなることになります。さらに、懲戒解雇を受けたという事実が再就職も困難にしてしまいますので、懲戒解雇にした時点で、従業員の生活に著しい不利益をもたらしますことが決定します。

 

そのため、懲戒解雇が法律的に認められるにはそれを満たす厳しい要件が必要とされています。つまり、社内不正をしたからといってすぐに懲戒解雇になるわけでは決してないのです。

 

懲戒解雇という処分は、従業員の生活を確実に困難にしてしまう最も重い処分とも言えますので、社内不正の内容が懲戒解雇に値するものであることが必要ですし、その証拠も当然必要になってきます。

 

もし、社内不正の内容がそれほど重くない場合は、懲戒解雇ではなく、他の懲戒処分を科せられることになるでしょう。

 

 

「解雇」にも3種類ある

ここまでのご説明で、クビ=懲戒解雇と表現してきましたが、一言で解雇と言っても大きく分けて3種類あります。それは「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3つです。

 

会社が従業員を解雇する際にはこのうち3つのどれかを理由として解雇することになります。それぞれについて簡単に見ていきましょう。

 

 

普通解雇

普通解雇とは客観的合理性・社会的相当性のある理由によって解雇をする方法です。簡単に言えば「うちの会社で働いてもらう契約をしていたけれど、●●の理由で労働契約の持続が難しくなったので解除しますよ。」というのが普通解雇です。

 

この「●●」の理由が客観的合理性・社会的相当性を持っていなければなりません。もし、解雇理由に客観的合理性・社会的相当性が無ければ解雇は、解雇権濫用となり解雇は無効となります。

 

また、解雇予告と言って、会社は30日以上に解雇する旨を解雇する従業員に伝えなくてはならないと定められています。

 

 

懲戒解雇

今回のテーマとなっている「クビ」は正式には懲戒解雇のことを指します。

 

懲戒解雇とは、会社内の秩序を著しく乱した従業員に対して、ペナルティとして行われる解雇のことです。なお、懲戒解雇にも普通解雇と同様に客観的合理性と社会的相当性が必要となります。つまり、社内不正を行ったということが明確に記せるような証拠が必要になるということです。

 

また、懲戒解雇を行うにためには、あらかじめ懲戒解雇についての詳細を就業規則に明記しておかなくてはなりません。さらに、普通解雇では、30日前からの解雇予告が必要だとお伝えしましたが、懲戒解雇の場合、即時解雇を受けることもありえます。

 

 

整理解雇

整理解雇とは、いわゆるリストラのことで、会社が事業を存続させるために行われる人員整理による解雇です。

 

ほかの2つの解雇は従業員側に問題があった場合の解雇ですが、整理解雇は会社の経営など、従業員の行いとは関係のない理由による解雇です。

 

整理解雇をするためには様々な要件を満たす必要がありますが簡単に言えば、リストラの最終手段としての解雇なのか、それまでに解雇以外の方法(配置転換など)をとっているのか、という要件を満たしていなければ整理解雇は認められません。

 

仮に、整理解雇を行っているのに、役員報酬は以前と同じだったり、新規で従業員の採用活動をしていたりした場合は、整理解雇は認められないことになります。

 

 

社内不正に対する社内での処分の種類

社内不正をしたからといって、すぐにクビ(懲戒解雇)が決定するわけではないことはすでにお伝えした通りです。

 

懲戒解雇にする以外にも、社内での処分は様々あります。ここでは、社内不正を行った従業員に対して会社として行える懲戒処分の種類についてご紹介していきます。

 

 

戒告・けん責

懲戒処分の中で最も軽い処分とされるのが「戒告」や「けん責」です。いわゆる指導や注意、警告と言えるもので、社内不正を行った従業員に改善を求める処分です。

 

社内不正の内容によって会社に与える悪影響の大きさが小さい場合や不正を行ったのが初めての場合などは、戒告・けん責の処分で解決させるということも十分考えられるでしょう。

 

 

減給

減給は、その名の通り給料を減らす処分のことです。減給と聞くと、際限なく給料を減らされてしまうと思っている方もいるのですが、減給の上限は法律によって決められていて一回の不正について1日の賃金額の5050%が最大の減額となります。

 

また、複数の不正を行った場合であっても減給合計額は賃金支払期間の1010%と決まっています。

 

減給は戒告・けん責の次に軽い懲戒処分とされていますので、社内不正による会社への影響がそこまで大きくない場合かつ、戒告などでは軽すぎると判断される場合に減給処分となるでしょう。

 

 

出勤停止

出勤停止とは、その名の通り社内不正を行った従業員に対して勤務することを一定期間禁止する処分のことです。

 

なお、出勤停止期間中は無給となりますし、勤続年数にも算入されません。

 

出勤停止期間中は給料を受け取ることができなくなりますので、ここまでにご紹介した懲戒処分の中では重い処分となります。

 

懲戒処分を出す側の会社は出勤停止の処分が不正行為に対して妥当なのかどうかを慎重に判断しなければならないでしょう。

 

 

降格

降格処分は、社内不正を犯した従業員の職位を下げることです。「社内不正を行ったことで部長から課長に降格する」などが例として挙げられます。

 

降格されることで給料の額にも影響が出てきますし、将来的な出世にも大きく影響を及ぼすため、かなり重い懲戒処分と考えることができます。

 

 

諭旨解雇

諭旨解雇は社内不正を犯した従業員に対して退職届の提出を促す処分です。

 

もし従業員自ら退職届を提出しない場合は懲戒解雇に移行することになりますので、実質懲戒解雇(クビ)となるかなり重い処分です。

 

懲戒解雇は極めて重く、深刻な処分になりますので、会社としてこれを回避するために自主退職を促すという意味合いの処分です。

 

 

懲戒解雇

今回の記事のテーマともなっている懲戒解雇、いわゆるクビですが、懲戒解雇は最も重いとされる処分です。最も重い懲戒処分のため、懲戒解雇は横領行為を行ったり背任行為を行ったりなどの重大な犯罪的行為をしたケースや、会社の経営にも関わるほどの重大な経歴詐称を行ったなどの深刻な不正に対して科せられます。

 

懲戒解雇は処分を受けたらすぐに職を失うことになってしまいますし、再就職する際にも足かせになり大きな悪影響を及ぼす可能性が高いため、そうそうの社内不正では懲戒解雇になる可能性はかなり低いでしょう。

 

会社側も、安易に懲戒解雇の処分としてしまい、労働者側から不当解雇だと訴えられてしまうと大きなダメージになりますので慎重に判断するはずです。懲戒解雇以外の出勤停止や降格などの処分を一切受けずにいきなり懲戒解雇となることは考えにくいですが、社内不正の内容によっては懲戒解雇と判断されるケースも稀にあります。

 

 

社内不正をしたらクビ以外にも処罰を受ける可能性がある

「社内不正をしてしまったことが会社にバレたら、クビになってしまう・・・!(汗)」と会社をクビになることだけに気を取られがちですが、懲戒解雇をはじめとする懲戒処分以外にも処罰を受ける可能性があります。

 

懲戒処分は、会社に対する責任を追及されるという位置づけですが、民事上、刑事上の責任を追及される可能性も十分に考えられます。それぞれの責任追及について少し詳しく見ていきましょう。

 

 

民事責任の追及を受ける

民事上の責任追及は主に損害賠償請求を受けることです。

 

例えば、会社のお金を横領した場合や、会社の機密情報を故意に他社に漏らし会社に多大なる損害をもたらした場合、SNSなどに会社の誹謗中傷を書き込んで社会的信用を落とした場合などは、民事訴訟を起こされて損害賠償請求を受ける恐れがあります。

 

なお、会社として社内不正を行った従業員に対して損害賠償請求などの民事責任を追及したい場合は、社内不正を行ったという確固たる証拠や犯人であるということを証明できる法的にも通用する証拠を集める必要があります。

 

証拠収集については、かなり専門的な知識を要する調査をする必要がありますので、社内だけで解決しようとせず調査の専門家である探偵に依頼するのがベストでしょう。

 

 

刑事責任の追及を受ける

社内不正が明らかに犯罪行為であるという場合は、刑事上の責任追及を受けることも覚悟しておかなければなりません。会社は社内不正という名の犯罪行為を行った犯人に対して刑事告訴をすることになりますので、警察が刑事事件として動き出すと、警察に逮捕されて取り調べを受けることになります。

 

刑事告訴されて訴えられる罪の多くは、業務上横領罪、詐欺罪、不正アクセス禁止法違反、名誉毀損罪などでしょう。

 

刑事裁判で有罪になれば、罰金・禁錮・懲役などの処罰を受けることも十分考えられますし、前科が付いてしまうので今後の生活に大きな影響をもたらすでしょう。

 

今後のことを考えるのであれば、刑事告訴されて前科が付くよりかは民事罰として損害賠償請求を受けて賠償金を支払ったほうが自分にとってデメリットが少ないケースも少なくありませんので、そのような交渉をしていくことが重要になるでしょう。

 

交渉に関しては、プロの弁護士に依頼するという方法もありますが、かなり依頼費用がかさんでしまいますので、自分で自分のことを守り、会社側としっかりと交渉していければベストです。ただ、交渉力に関して一朝一夕ですぐに身につくものではありませんので、プロに直接交渉力を教わるという方法がお勧めです。

 

交渉力に関しては、こちらの【問題解決のための交渉コンサルティング】を参考にしてみてください。

http://nego-consulting.com/

 

 

まとめ|社内不正が起きてしまったらOR起こしてしまったら・・・

社内不正は、決して行ってはいけない犯罪ですが、ちょっとした出来心から誰であってもつい犯してしまう可能性のあるものです。

 

小さな社内不正が蔓延していて、従業員同士のモラルの意識が低くなっているような社内環境であれば、なおさら社内不正を行ってしまいがちでしょう。一見優秀で社内不正なんて犯さなさそうに見える社員ですら、社内不正をしてしまう恐れがあるのです。そして「どうせバレないから」とどんどん犯行が大担になっていき、より大きな不正を犯してしまうことも考えられます。

 

また、中には「不正行為」であるという認識を持たずに不正を犯して刑事告訴されてしまう可能性も否定できません。

 

いずれにしても、社内不正が明るみに出て民事上、刑事上、会社上の責任を追及されてしまったら、今後の人生に大きなマイナスとなることは避けられません。そのため、もし社内不正をしてしまったことが会社に知られてしまうようなことになれば、すぐにでも対処をし、円満な解決を目指すべきです。もちろん、社内不正に気が付いた会社側も即座な対応が会社を守るために重要となることは変わりありません。

 

もし、あなたが会社の経営者で自分の会社の社内で社内不正が起きていることがわかったら、すぐに社内調査を慎重かつ迅速に進めていき、法的にも認められるような証拠を掴んでください。そして、会社側が不正行為によって受けてしまった損害を担保できるように不正社員に対してどのような責任追及を行っていくべきかを慎重に検討していってください。

 

もし、あなたが社内不正を行ってしまった従業員側であったとしたら、できるだけ自分の罰則を軽くできるように考えていかなければなりません。もちろん、弁護士に弁護を依頼して交渉してもらうというのも一つの方法です。他にも自分自身に交渉力を身に付けて会社側と交渉をし、刑事告訴は避けるなどの対処を取るべきでしょう。

 

いずれの立場にしても、不正の加害者、被害者の両者が納得し、双方にメリットがあるような解決方法を見つけ出していくことが重要です。

 

「社内で不正が起きてしまったけれど、できれば内々に解決していきたい」

「数年前から社内不正を日常的に行ってしまっているけれど、どうにか処罰を軽くして解決したい」

などのお悩み、ご相談があれば、ぜひ当事務所にご相談ください。最も円満に解決できる方法を一緒に考えていきましょう。