社員が不正を行っているなんて信じたくないと思いますが、実際には社員によって会社の資金を横領されたり、内部情報を漏らされたりといった不正行為が後を絶ちません。

会社を守るためには、社員が不正を起こしてしまう原因を把握し、未然に防ぐための防止策を講じていく必要があります。

今回は、社員による不正が起きやすい会社の特徴や不正を働いてしまう動機についてみていき、具体的な防止策をご紹介していきます。

社員による不正のパターン

社員による不正の発生には大きく分けて3つのパターンがあります。

1人の社員が単独で不正を行う

社員による不正で最も多いのがこのパターンです。

たいていは大きな被害金額にはなりにくいですが、常習的に不正が行われやすいので、長期にわたって不正を行い続けた結果、被害が拡大するという恐れもあります。

社員同士が共謀して不正を行う

複数人の社員同士が共謀して不正を行うパターンもあります。

このパターンでは、手口が巧妙になりやすく、発見が難しくなるのが特徴です。 さらに、一人の社員で不正を行う場合よりも犯行が大規模かつ複雑になるため、会社としての被害も大きくなってしまいます。

社外の人と共謀して不正を行う

数としては少ないですが、社員が取引先など社外の人と共謀して不正を行うパターンもあります。

このパターンでは、社外で請求書などを偽造されてしまいますので、不正の発見が非常に困難になり、経営者が不正に気付くころには被害がとても大きくなってしまっているケースが多いです。

社員による不正が起きやすい会社の特徴

社員による不正はどの会社でも起きうる被害ですが、特に不正が起きやすい会社というのは共通した特徴があります。 以下に紹介する特徴にあなたの会社が当てはまっていたら、すぐに防止策を講じることを考えたほうが賢明です。

1人の特定社員に仕事が集中している

ほとんどの中小企業では社員が足りていないために、一人の社員が単独で業務を任されていることが多いでしょう。

さらに、長年勤務している社員に対しては経営者も絶大なる信用を寄せているため、その社員に特定の業務を任せっきりにしてチェックを入れないことも多いと思います。 このような特徴がある会社では、不正が起こりやすいうえに、不正が起きてもなかなか気付きにくくなってしまいます。

監視体制ができていない

各社員のアクセスやログなどの監視体制がしっかりとできていないと、不正行為の前触れを発見することが難しいです。

また、実際に不正が起きていても監視がしっかりとされていないと、発見が遅れてしまい、被害が大きくなってしまうでしょう。

経営者が金銭管理にルーズ

中小企業の多くは、経営者が会社のお金を牛耳っていると思います。

その経営者が、しっかりと会社のお金を管理している姿勢を見せていればいいのですが、経営者自身が公私混同で会社のお金を使っているようだと、会社全体にルーズな金銭感覚が浸透してしまいます。 このような状況下にある会社では社員による不正が発生しやすくなってしまいます。

社員が職場環境や処遇に不満を持っている

いわゆるブラック企業など劣悪な労働環境の会社でも不正が発生しやすい傾向にあります。 膨大な業務量、長時間労働、低賃金などの異常なまでのストレスが社員にかかっていると、そのプレッシャーとストレスで内部不正を働く動機になってしまいます。

また、給料や昇進について不満を持っている社員がいる場合も、不正を犯してしまう可能性が高くなりますので、定期的に上司や経営者がコミュニケーションをとって不満を把握し吐き出させる必要があるでしょう。

不正防止のための仕組みが十分でない

経営者としては最初から社員のことを疑うことはしたくないですよね。多くの会社の経営者が社員を信じたいという気持ちから、不正防止のための仕組みを取れていない状況にあるようです。

しかし、社員による不正が発生してしまうと他の社員にも迷惑がかかりますし、会社への被害も出てしまいます。 社員を疑っていなくても、社員を守るという意味で不正防止のための仕組みをしっかりと取ることが大切です。具体的な防止策については後述します。

社員が不正を働いてしまう動機

内部不正を行った社員はどのような動機から不正を行ってしまうのでしょうか。 ある調査によると、以下のような動機から不正を働いたという結果になりました。

1位:不当だと感じる解雇勧告を受けた

2位:給料や待遇に不満がある

3位:社内の人事評価に不満がある

4位:自分以外にも社内不正が横行している

5位:管理体制がずさんなことを知っている

参考:「組織内部者の不正行為によるインシデント調査」報告書の公開

1位~3位の動機は、いずれも会社や経営者、上司に対しての不満から仕返しという意味で不正を行っていることがわかります。

つまり、どの会社でも社員による不正は発生するリスクがあり、そして、社員の不満を早い段階で把握し、解消していけば社内不正は未然に防ぐことが可能なのです。

社員の不正を発生させてしまう3つの要因

社員による不正が発生してしまうのは、3つの要因がすべてそろったときだと言われています。 不正を発生させてしまう3つの要因とはどのようなものなのでしょうか。

動機・プレッシャー

動機については先ほどの章で詳しく見てきました。

ノルマや業務量などへ異様なプレッシャーを感じていたり、待遇に不満を抱えていたりすると、不正行為を引き起こす1要因となります。

機会

不正を行えるチャンスがあるかどうかです。 業務を自分が単独で行っている、チェックする体制が整っていない、監視のルールがない、技術的に不正をバレないようにできるなどの環境が不正を引き起こしてしまいます。

正当化

不正行為を正当化しやすい環境になっていることも不正を起こさせる要因となります。

経営者や上司が倫理観がない発言をしていたり、社員全体がコンプライアンスを軽視していたりすると、不正を正当化しやすくなるため、不正行為を起こしやすくなるのです。

これら3つの要因は、「不正のトライアングル」と呼ばれています。これは、米国の組織犯罪研究者のドナルド・R・クレシャーが提唱した理論です。 3つの要因がそろえば不正が行われますが、逆に言えば、3つのうち1つでも要因を回避できれば不正を防ぐことができるという理論です。

社員の不正防止のための原則

社員の不正を防止するためには、不正のトライアングルである3つの要因を回避すればいいのです。 そのための原則をご紹介します。

不正を困難にする

不正を起こさせないための対策を強化し、不正を起こすことを難しくさせればいいです。「機会」をなくすということですね。

リスクを高める

不正を起こしたことが見つかるというリスクを高めることも防止のために必要です。

監視や管理を強化することで不正発覚のリスクを高めましょう。こちらも「機会」をなくすことにつながります。

不正を行う動機を減らす

不正を起こしてしまう動機については先ほどお伝えしました。

給料や社内の待遇についての不満をこまめに解消させたり、ノルマや業務についてのプレッシャーを軽減させたりするなどの対策を講じることが大切です。 これにより「動機・プレッシャー」をなくすことができます。

正当化の理由を排除する

コンプライアンスについての同意書を書かせる、不正を犯したときのペナルティについて同意を得ておくなど、言い訳させないようにしておくことも不正防止の原則です。 その名の通り、「正当化」を回避します。

社員の不正を防止するための具体的な対策

不正を防止する原則を確認したところで、具体的な不正防止のための対策をご紹介していきます。

出金する際の承認制度を整備する

出金が起きる際に必ず出金伝票を書かせるようにしましょう。

そして、書かせるだけではなく、承認制度を整えることが大切です。 最初は簡単なものでかまいませんので、社員に対して「しっかりと会社のお金は管理されていて監視されているんだ」ということを認識させましょう。

一人の社員に経理業務を任せない

中小企業で一つの業務に複数の人間をつけることは簡単ではないかもしれませんが、特に経理業務などお金がからむ業務は最低2人の社員に担当させるようにしましょう。

たとえば、通帳を管理する社員と銀行員を管理させる社員をわけたり、送金処理を実行する社員と送金処理に必要な書類やカードを管理する社員をわけたりするだけでも不正防止に効果があります。

少額の現金の移動は毎日帳簿に記録し確認する

現金を引き出したり送金したりする場合は、都度帳簿に記録させ、帳簿は毎日確認することを徹底しましょう。

毎日確認することで、仮に不正が行われてもすぐに気が付きますし、どの社員が不正を行ったのか犯人の特定も比較的容易になります。

毎日管理されていることが社員にも認識されることで、たとえ少額であっても不正を行えばすぐに見つかってしまうという意識が生まれ、抑止力にもなるでしょう。

会社通帳の出金履歴は定期的に確認する

会社通帳は主に経理担当者が管理していると思いますが、履歴について定期的に経理担当者以外の人物が確認する体制を整えることも不正防止に効果的です。

できれば週に1度くらいの頻度が理想ですが、難しければ1か月に1度でも、いいので、定期的に通帳の出金履歴は経理担当者以外で確認するようにしてください。

売り上げの現金は当日の入金を徹底させる

会社の業務形態的にお客様から現金で支払ってもらうような場合は、売り上げの現金は当日に会社の口座に入金させることを徹底させましょう。

現金で支払いを受ける業態だと、複数店舗を経営している場合、不正が起こりやすいのです。数日分をまとめて入金させる方法だと不正に気が付きにくいうえに、不正を起こすチャンスも与えやすくなってしまいます。

まとめ|社員の不正を防止したいなら社員の素行調査も有効

社員の不正行為は起きてしまってからでは対処も面倒ですし、不正に気付いた時には被害が大きくなっていることが多いので不正は未然に防ぐことが大切です。

社員の不正を未然に防ぐ方法としては、社員の素行調査を探偵に依頼する方法もとても有効です。 「社員が不正を行っているかも」と疑惑が出てからの素行調査も証拠を集めるうえでとても重要ですが、疑惑が一切ない状態でも、社員の素行調査を行うことで不正を防止することが可能になります。

社員の素行調査、不正調査と聞くと仰々しく感じてしまうかもしれませんが、当事務所ではより気軽に、そして手軽に調査ができる【オンライン監視調査】という最新の技術を導入しております。この方法であれば、張り込む必要もないですし、設置してからはみるだけで調査が完了できます。

社員の不正を防止する方法として、当社が行っているオンライン監視調査もありますし、社内でできる対策や社外の専門家に依頼する対策がありますので、ご不安に思うことがあれば、ぜひ当事務所にもご相談にいらしてください。