今の時代、ありとあらゆる人たちがSNSを利用し、SNSから多くの情報を得ています。

うまく使えばとても便利なものですし、企業にとってはマーケティングの有力な手法としても使えますが、一方で、誹謗中傷やフェイクニュースに代表されるSNS上のトラブルに巻き込まれるリスクもあります。

今回は、SNSでの誹謗中傷が企業に与える影響や被害、誹謗中傷を受けてしまった場合に取るべき対策、そして必要不可欠になりつつある「SNSリスクマネジメント」についてお伝えしていきます。

SNSに潜む企業にとってのリスクやトラブル

SNSは多くの人が利用していますので、マーケティングにうまく活用できれば強い味方ですが、一方で様々なリスクやそれに伴うトラブルも社会問題化しています。

企業が注意していかなければいけないSNSでのリスクとしては

・誹謗中傷

・フェイクニュース(デマ)

・炎上

・個人情報流出

・アカウントのっとり

・なりすまし

・情報漏えい

などが挙げられます。

こうしたリスクを見ていくと「わが社ではSNSを利用するのを辞めよう」という考えが出てくるかと思いますが、SNSを避けるだけではトラブル回避にはつながりません。 逆に、SNSを企業として使用しないことで、知らない間に他の人のSNS上で誹謗中傷を受けていたり、いつの間にかSNSで炎上してしまっていたりして対応が遅れてしまう恐れも出てきます。

SNSでの誹謗中傷に対応していくためには、SNSを使用しないことではなく、リスクを認識して正しく使用していくことが重要になります。それについては後ほど「SNSリスクマネジメント」の章で詳しくお伝えしていきます。

企業が受けやすい誹謗中傷の具体例

企業の業種にもよりますが、企業が受けやすい誹謗中傷はある程度傾向があります。具体的にどのような誹謗中傷がありえるのか実際にあった事例をいくつか挙げていきます。

「〇〇会社はブラック企業だ」

「〇〇会社の社長は過去に殺人を犯している犯罪者だ」

「〇〇会社では散々サービス残業させて残業代を払わない」

「〇〇店の料理には廃棄されるはずの豚肉を使っている」

「〇〇の冷凍食品にはミミズが入れられている」

「〇〇の製品を頼んだら血痕らしきものがついていた」

企業がこのような誹謗中傷を受けてしまい、それがSNSで拡散されてしまったら企業イメージややブランドイメージの低下は免れないでしょう。 このような誹謗中傷はSNS上で拡散されるケースもありますし、Amazonや楽天サイトなどショッピングサイトの口コミで誹謗中傷されるケースもあります。

企業が誹謗中傷を受けた時に考えられる被害

企業が誹謗中傷を受けてしまうと、様々な悪影響が考えられます。特に、SNSを通じて情報発信されると瞬く間に広まり、話題性によっては全国ニュースにまでなってしまうケースも少なくありません。

企業が誹謗中傷を受けた場合に考えられる被害を把握しておくことでリスクマネジメントへの意識も変わってくるはずです。

不買運動・来店拒否運動が起こる

TwitterやFacebookは多くの人が利用していますし、ある程度の信用性もあるSNSなので、これらのSNSで誹謗中傷を受けてしまうと、尾ひれ羽ひれがついて拡散していくケースが非常に多いです。

そして、対応が遅れるとあっという間に全国レベルで誹謗中傷が広がり、多くの人の間で不買運動や来店拒否運動などにつながる恐れがあります。 全国レベルで不買運動などが起これば、会社の業績悪化は避けられませんし、企業の体力によっては倒産まで追い込まれてしまうこともあります。

イメージダウン

誹謗中傷が広まると、たとえそれが根も葉もない噂だったとしても多くの人の中でその企業へのイメージは低下してしまいます。

企業が後からSNSでイメージアップのためのマーケティングをしたとしても「嘘くさい」「わざとらしい」と誹謗中傷のほうを信じられてしまうこともあります。 誹謗中傷の内容が真実でなくても、一度落ちたイメージを回復させるのはかなり難易度の高いことなのです。

取引の減少・取引先離れ

誹謗中傷が広まってしまうと、顧客だけでなく取引先まで離れていってしまう可能性があります。 取引先も周りからのイメージや体裁を気にしていますので、「〇〇会社と取引しているなんて・・・」と言われるリスクを回避するために取引を解消したり減らしたりする恐れがあります。

社員のモチベーション低下

企業への社会的信用が失われてしまうと、社内の人間のモチベーションが下がってしまうことは避けられないでしょう。

「お前、〇〇会社で働いてるんだって?」 「あんな会社で働いていて大丈夫?」 などと家族や友人に言われると、どんなに会社へ貢献しようとしていてもモチベーションは下がってしまいます。 社員のモチベーションが下がれば業務効率も下がりますし、最悪の場合、社員が大量に辞めていってしまうことも考えられます。

採用の難化

誹謗中傷を受けている会社として認識されると、就職希望者は激減してしまいます。また、すでに内定を与えている内定者も辞退する可能性が高くなります。

人材確保がうまくいかなければ会社の運営にも大きな支障が出てきてしまいますので、企業へのダメージは大きくなるでしょう。

SNSリスクマネジメントが企業にとって必要不可欠に

「SNSリスクマネジメント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。SNSが多くの人に利用されている現代では、企業にとって必要不可欠な対策になってきていると言えます。

通常のSNSマーケティングとの違い

企業のSNSマーケティングというと、

・公式SNSアカウントの運用

・SNS上でのキャンペーン

・SNS広告

・インフルエンサーマーケティング

など、攻めマーケティングをイメージされる方が多いのではないでしょうか。

企業の中にSNS担当を設けて企業の広報部としてSNSマーケティングを活用している会社も多くなっています。 しかし、SNSリスクマネジメントは、守りの施策として重要度を増しています。

SNSを火種として発生する誹謗中傷の拡大を防ぐために、誹謗中傷を発生させない体制づくりやSNSでの誹謗中傷をいち早く察知する仕組みづくりなどを行い、様々なきっかけから起こりうるSNSリスクに対して準備をすることがSNSリスクマネジメントなのです。

具体的にどう施策をすればいい?

SNSリスクマネジメントの重要性はご理解いただけたかと思いますが、具体的にどのように施策を打っていけばいいのか迷ってしまいますよね。

具体的なSNSリスクマネジメントの手法としては、

・SNSリスクリテラシー研修を社内で行う

・SNSガイドラインを策定する

・SNS監視を行う

ことが挙げられます。

SNSリスクマネジメントにおいて一番意識してほしいことは、従業員がSNSを利用するのを禁止することではなく従業員のSNSリテラシーやSNSモラルを向上させることです。

そのためにリスクリテラシーの研修は効果が期待できますし、ガイドラインの策定も有効です。 そのうえで、SNSの監視を行うことで、予防と早期発見が両立できるようになります。SNS監視には専用のツールを導入するか、専門業者に依頼する方法がお勧めです。

SNSで誹謗中傷を受けた場合に企業が取るべき対策

SNSで誹謗中傷を受けたらできるだけ早く対応することが、炎上を防ぐうえで重要になります。 誹謗中傷は早期発見、早期対応ができるかどうかでその後の被害を抑制できますので、企業が取るべき対応についてはしっかりと押さえておきましょう。

誹謗中傷の内容の真偽を判断する

まずは、誹謗中傷の内容が真実なのか、デマなのかを判断してください。

仮に「残業代を支払っていない」ことが事実であれば、会社として早急に改善していかなければいけませんし、デマであればそれを周囲に公表していく必要があります。 誹謗中傷の内容がSNSで拡散されてしまったら事実確認を行いましょう。

ホームページなどで誹謗中傷の内容について公表する

事実確認を行った結果、誹謗中傷の内容が事実とは異なるデマだと判明したら、拡散されている誹謗中傷の発言について、根拠のないデマであることを自社のホームページなどで伝えて、公表することが重要です。

拡散されている内容が事実ではないことを、しっかりとアピールするために、自社で行っているワークライフバランスへの取り組みや品質管理、社内での教育体制などについて公表することも有効です。

ネットトラブルに強い弁護士や探偵に相談する

誹謗中傷を書き込んだ犯人に対して法的措置を取ることを考えているのであれば、ネットトラブルに強い弁護士や探偵に相談するようにしましょう。

そして、ホームページなどで、根拠がない書き込みをした人に対して、断固たる法的措置を取る意思があることも表明しておくと、今後の予防策にもつながります。

削除要請をする

SNSだけでなく、ネットの掲示板やブログで誹謗中傷を書き込まれた場合は、サイト運営者に対して投稿の削除を求めることができます。

サイトに設置されているお問合せフォームから、削除を求める投稿内容や削除を求める理由を記載して削除要請をしましょう。 もしサイト運営者が削除に応じてくれない場合は、弁護士から削除依頼をすることも考えられます。

自社で削除依頼をしても応じてくれないこともありますが、弁護士を通じて削除依頼をすると強いプレッシャーを与えられますので、誹謗中傷についてのガイドラインに詳しい弁護士が削除請求をした方がスムーズなケースが少なくないのです。

発信者情報開示請求をする

誹謗中傷を受けた場合の対策として、投稿自体を削除するだけでなく誹謗中傷の内容を投稿した人物を特定するための発信者情報開示請求を行うことが考えられます。

発信者情報開示請求をすることで投稿者の氏名や住所などを特定することができます。氏名や住所を特定し、投稿者に対して損害賠償請求や刑事告訴を行うことで、今後誹謗中傷が繰り返されることを防ぐことも期待できます。

発信者情報開示請求については、こちらの【発信者情報開示請求して誹謗中傷投稿者を特定しよう!流れとポイント】を参考にしてみてください。

損害賠償請求などの法的措置を取る

誹謗中傷の内容があまりに悪質だった場合には、損害賠償請求や刑事告訴などの法的な対応も検討したほうが良いでしょう

投稿の内容次第では名誉毀損罪や業務妨害罪に問える可能性もありますし、実際に損害を被った場合は民事事件として損害賠償請求することも可能です。

このようなケースでは、SNSやネットトラブルに詳しい弁護士に相談することをお勧めします。 なお、法的措置を取る場合は証拠保全が重要になりますので、誹謗中傷の投稿やコメントの画面キャプチャ、誹謗中傷の発信者のプロフィール画面のキャプチャなどは必ず保存しておきましょう。

法的措置を取ることができる証拠について収集が難しいと感じた場合は、SNSトラブルに強い探偵への相談もお勧めです。

SNSでの誹謗中傷を受けないために普段からすべきこと

SNSでの誹謗中傷はできる限り未然に防ぎたいですよね。 また、もしも誹謗中傷の内容が投稿されても早い段階で発見できれば大きな被害は防ぐことができます。 普段から意識して実践しておきたいことをお伝えしていきます。

SNSを日ごろからチェックする

本格的なSNS監視ツールを入れることが難しくても、SNSを毎日こまめにチェックすることで誹謗中傷の投稿を発見することも可能です。 自社の名前や名称、商品名や社長名でSNSでエゴサーチしてみましょう。投稿内容によってすぐに拡散される恐れがありますので、注意深く観察し弁護士などに相談しておくと安心ですね。

従業員への教育を徹底する

すでにお伝えしていますが、SNSのリスクマネジメントにおいて従業員へのSNSリテラシーやSNSモラルの教育はとても重要です。 なぜなら、誹謗中傷の投稿をするのが社内の人間であるケースが非常に多いからです。従業員に対してきちんと教育を行っておけば、社内から誹謗中傷のトラブルが発生することは未然に防ぐことができるでしょう。

従業員のメンタルケアを行う

従業員が会社に対しての誹謗中傷を書き込むケースでは、従業員が会社に対して大きな不満を抱えていることが多いです。 従業員がストレスを抱えたことでそれを発散するためにSNSで会社を誹謗中傷してしまうのです。そのようなトラブルを防ぐために普段から従業員のメンタルケアを行うことも有効とされています。

まとめ

SNS時代において、どのような企業であっても誹謗中傷を受けたり炎上が起こったりすることは避けられないものです。

そのため、SNSトラブルの予防法や鎮静化のための体制を構築することはあらゆる企業にとって必要不可欠になってきていると言えるでしょう。

今回ご紹介した誹謗中傷対策を参考にしていただき、もし誹謗中傷対策や受けた被害でお悩みがあればインターネット問題に詳しい探偵や弁護士に相談してみることをお勧めします。