社内で横領被害が起きているらしい・・・ という噂を耳にしたら、経営者や人事部は大きな焦りを感じてしまいますよね。

 

まさか自分の会社の従業員が横領をするなんて信じたくないですし、どうやって対応していけばいいのか、横領した従業員にどのような処分をすればいいのかわからず悩んでしまうでしょう。

 

社内で横領事件が起きているということが社外に大きく知れ渡ってしまうと、取引先からの信用を失ったり採用活動に支障をきたしたりなど余計なトラブルを招きかねませんので、できるだけ早く適切に対処していくことが重要です。

 

今回は、従業員の横領でよくあるケースや、横領が発覚した場合にどのような対処法がありえるのか、具体的にどのような流れで対応していけばいいのかについて、注意点やポイントも含めて詳しく解説していきます。

 

そもそもどういう行為が横領にあたるの?

そもそもどのような行為が横領と呼ばれるのか、横領の定義や種類についてみていきましょう。また、従業員によって行われる可能性が高いよくある横領のケースについても説明します。

 

横領の種類

横領とは、他人の所有物や金銭を不法に自分のものにすることを指します。 刑法に規定されている横領の種類には単純横領罪、遺失物等横領罪、業務上横領罪の3つがあります。

 

【単純横領罪】

友人から借りた本やCD、DVDなどを無断で売却するなどをする場合がこれにあたりますほかの人から依頼を受けて持っていた物を横領した場合に成立します。

 

【遺失物等横領罪】

依頼を受けたわけではなく忘れ物や放置された他人のものを横領した場合に成立するのが遺失物等横領罪です。 例で言うと、道に落ちていて拾った財布を届け出ずに自分のものにしたり、放置された自転車を勝手に乗って帰ってしまったりなどがこれにあたります。

 

【業務上横領罪】

業務として委託を受けていた他人の物を横領した場合に成立するのが業務上横領罪で、会社の従業員が行う横領はこれにあたります。 業務として請け負っていた経理の金銭や売上金を盗んだ場合などは業務上横領の代表的なものと言えるでしょう。

 

従業員による横領のよくあるケース

従業員による横領は業務上横領にあたりますが具体的にはどのようなケースが多いのでしょうか。

 

よくある業務上横領のケースとしては

・売上管理を任されている支店長が本部に売り上げを実際より少なく申告して差額を着服する

・経理担当者で金銭の管理を任されている従業員が預かっている金銭を盗む

・売上金回収をしている営業マンが企業には未回収として報告し、金銭を横領する

などがあります。

 

つまり、どこの企業でも業務上横領は起こり得ることで、他人事ではないのです。

 

業務上横領をした従業員に対して企業が取れる対処法

業務上横領をしてしまった従業員に対してどのような対処が適切か悩んでしまうかもしれません。 ここでは、企業が取ることのできる対処法について法的措置を含めて解説していきます。

 

懲戒解雇をする

横領に限らず、社内で不正行為を行った従業員に対しては就業規定に基づいて処分をすることができます。それを懲戒処分と言いますが、横領に対する主な懲戒処分として懲戒解雇が挙げられるでしょう。

 

懲戒解雇は就業規則に基づく懲戒処分として最も重い処罰であり、従業員を解雇することを指します。懲戒解雇は退職金を減額できたり不支給にできたりする場合があるという特徴や、通常の解雇で必要な30日前の解雇予告が不要な場合があるという特徴があります。

 

懲戒減給をする

懲戒解雇よりも軽い処分としては、就業規則に基づいて従業員の給与を減少させるという懲戒減給があります。

 

ただし、懲戒減給については労働基準法第91条において限度が規定されていて、1回の減給額が平均賃金の1日分の半額を超えないことと、減給の総額が賃金の総額の10分の1を超えないことが決められています。

 

損害賠償請求をする

横領した従業員に対してとれる法的措置として、民事上の責任を追及する損害賠償請求という対処法があります。 たとえば従業員が現金1000万円相当を横領した場合は、損害賠償として1000万円を請求することが考えられます。

 

ただし、横領したお金をすぐに使ってしまうケースも多く、そのような大金をすぐに支払える従業員ばかりではありません。 給料と相殺したり、退職金から減給したりすることを考える経営者の方も多いと思いますが、それには注意が必要です。詳しくは後の章で注意点をまとめていきます。

 

刑事責任を追及する

企業の従業員が横領した場合は、民事責任の追及の他にも刑事上の責任を追及する方法が考えられます。 なお、業務上横領罪を起こしている場合はその他にも、詐欺罪や私文書偽造等罪などを同時に追求できるケースが多いです。

 

警察に告訴状を提出して告訴するという手順になりますが、その際に横領を起こしたという事実の証明やその従業員が犯人であるという証拠が必要不可欠です。 それらの証拠は前もって調査事務所などの専門家に依頼して集めておくといいでしょう。

 

ただし、逮捕や起訴されることで横領事件として世の中に広く知れ渡ってしまう可能性が高くなりますので、企業にとってのリスクも大きくなることは頭に入れておき、慎重に判断するようにしてください。

 

横領した従業員を懲戒解雇する際の注意点

横領した従業員に対しての処分として懲戒解雇を挙げましたが、横領したからと言って簡単に懲戒解雇をしていいというわけではありません。 懲戒解雇をする際の注意点を見ていきましょう。

 

懲戒処分をする際は法的に有効な証拠が必要

懲戒解雇を含め、懲戒減給や降格、出勤停止などの懲戒処分をする際には、横領したという確固たる証拠が必要になります。

 

さらに、就業規則において、会社が特定の状況においては労働者に懲戒処分をすることができる旨の規定を設けて、処分の種類についても規定しておくことが必要です。

 

横領の証拠や犯人であるという証拠については、社内の人間が調査をしてもなかなか手に入れることが難しいですし、通常業務に大きな支障をきたしてしまうことが明白ですので、専門の調査会社を活用して証拠を取ってもらうことをお勧めします。

 

横領であっても懲戒解雇は簡単にはできない

懲戒解雇は懲戒処分の中でも、もっとも厳しい処分です。解雇されて職を失い、稼ぎを失ってしまうので労働基準法によって解雇については厳しく規定されていて、たとえ横領という罪を犯していても簡単に解雇することはできないことになっています。

 

そのため、安易に懲戒解雇をしてしまうと、従業員から不当解雇であると裁判を起こされるリスクもあり、最悪の場合、裁判所から懲戒解雇できるための要件を満たしていないと判断されてしまうと懲戒解雇が無効になる可能性もありますし、不当解雇として会社が訴えられてしまう可能性もあるのです。 懲戒解雇したいけれど、要件を満たせているのかどうかの判断に迷う場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

 

横領した従業員に損害賠償請求をする際の注意点

民事責任を問う損害賠償請求をする際の注意点についても見ていきましょう。ご自身の判断で対処してしまうと誤った対応を取ってしまう可能性があるので、ぜひこちらの注意点をチェックしておいてくださいね。

 

支払いについて書面に残しておく

横領した従業員に損害賠償請求をし、支払いをすることを承諾してもらったら支払うことを承諾したという旨を書面に残しておくことが重要です。 従業員の署名押印のある支払い誓約書などの書面として残しておくようにしてください。

 

必ず記載すべき内容としては、【横領の事実を認めること】【横領した金額】【横領した金額を企業に返還すること】の3点は欠かさずに書いておきましょう。

 

給料との相殺や退職金からの減給は要注意

横領した金額にもよりますが、損害賠償請求をする場合は500万以上など大金に上ることが多いでしょう。 そのような大金をすぐに用意できる従業員ばかりではありませんので、経営者としては「給料と相殺すればいいのではないか」「退職金を減額してそれを充てればいいのではないか」と考えますよね。

 

しかし、労働基準法で給料は法律上全額を支払うものとされていて、給料と相殺するためには従業員の同意が必要ですので勝手に相殺するのはNGです。 退職金も同様に、経営者の判断で勝手に減額することはできませんので、注意しましょう。 すぐに支払ってもらえない場合は分割での対応にするように書面に残しておくことも必要になります。

 

支払い誓約書は公正証書にしておくのが安心

損害賠償請求について支払うことを誓約書にまとめて書面にしていたとしても、従業員が退職したら後々支払いが滞ってしまう危険性もありますよね。そのような場合に備えて、支払い誓約書を強制執行が可能な公正証書にしておくのも有効な方法です。

 

従業員による横領が疑わしい場合の対応の流れ

それでは最後に、従業員による横領が発覚した場合、具体的にどのような流れで対応していけばいいのかについて解説していきます。

 

横領が事実かどうかの調査を実施

まずは、横領の事実確認と被害状況についての調査を実施します。 横領があったことは事実なのか、横領された金額はいくらにのぼるのか、を確認してください。

 

横領したであろう犯人が想定できていると、どうしても本人に話を聞きたくなってしまうかもしれませんが、疑いのある従業員に話を聞くのは、ある程度調査が進み、証拠らしきものがつかめてきてからにしてください。証拠がない段階で話をしてしまうと証拠を隠されたり逃亡されたりするおそれがあります。

 

なお、横領された金額が確かなものでなければ損害賠償請求する際に請求ができなくなります。横領の事実証明や犯人であるという証拠確保などの詳しい調査については専門の調査会社に依頼するのが安全でお勧めです。

 

横領した従業員への事情聴取

事実関係の調査がある程度進み、証拠もつかめてきたら次のステップとして横領をした疑いのある従業員本人に事情聴取をする段階に入ってください。

 

事情聴取をする際は、必ず質問をする担当とやりとりのすべてを記録する担当の最低2名で行うようにしてください。 また、行き当たりばったりの質問になって話題がそれてしまわないよう、あらかじめ質問内容をまとめておくことも大切です。

 

弁護士に相談しながら法的措置を取る

損害賠償請求などの法的措置を取る場合は、法律の専門家である弁護士に相談しながら進めていくのがスムーズです。 また、弁護士に相談しながらであれば、懲戒解雇の要件にあてはまるのか、どのような処分が妥当なのかというアドバイスをもらうこともできます。

 

なお、時間をかけすぎていると横領した従業員が証拠隠滅をして突然退職するということも考えられますので、できるだけ早めに弁護士に相談するのがおすすめです。

 

まとめ

企業の従業員が横領をしたとわかった場合、懲戒解雇などの懲戒処分や損害賠償請求、刑事告訴などの方法があります。 いずれの場合も、対処する前に事前に調査を行い、法的に有効な証拠を確保し、被害金額についても確定しておくことが重要です。

 

なお、横領などの甚大な社内不正被害を事前に予防するためには定期的な企業内調査が有効です。深刻な社内トラブルを防ぐためにも、ぜひ調査事務所の企業調査をご検討いただければと思います。