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企業を経営していくうえで、下請け、元請けを含む取引先との関係はとても重要ですよね。

 

下請けや元請け企業とトラブルになってしまうと、支払いが滞ってしまったり、自社のイメージダウンにつながってしまったりして、後々の経営悪化を招いてしまう恐れがあります。

 

下請けや元請け企業とうまく関係を築いて企業間のトラブルをいかに減らしていくか、また、もしトラブルが起きてしまったときにいかに適切に対応できるかが、企業の経営をスムーズにするうえで極めて重要になってくるでしょう。

 

今回は、下請け企業の目線、元請け企業の目線それぞれの立場から見て、陥りやすいトラブルについてご紹介するとともに、そのトラブルへの対応方法を見ていきます。さらに、そのような取引先とのトラブルに巻き込まれないために事前にできる対策についてもご紹介していきます。

 

元請け企業や下請け企業とトラブルになってもめてしまっている経営者の方、今後取引先とのトラブルに巻き込まれないか心配な経営者の方、ぜひ今回の記事を参考にして会社を守っていくための知恵を手に入れてください。

 

 

元請け、下請け、取引先とのトラブルはどの企業にも起こりうること

日本の多くの企業が抱える問題として、元請けや下請け企業との関係にまつわるトラブルが挙げられます。

 

特に、建設業界や運送業界はその業界の特質から、下請け、元請け企業との間でのトラブルが多数発生していると思われます。

 

発注者から元請けが仕事の依頼を受け、それを下請けの会社に依頼し、さらに対応しきれなかった分などを孫請けの会社に依頼するといった多層構造になっている業界もあるでしょう。構造が複雑になればなるほど、関係会社も増えてくるので結果的にトラブルが発生する確率も上がってきてしまいます。

 

また、下請けや孫請けのポジションにあるのは、会社としてではなく1人の社長が個人事業者として対応していることも珍しくありません。本来は会社同士の契約として進めなければなりませんが、相手が個人事業主となるとなかなかスムーズにはいかないこともありますし、逆に本来は対等な関係であるはずなのに、発注する側の元請け企業の方が事実上の立場が強いこともあります。

 

このように、元請け、下請けという立場や構造を考えると、いつどこでどの会社がトラブルに巻き込まれても不思議ではなく、常に金銭トラブルや納期のトラブルが発生するリスクがあると言えるのです。

 

 

下請け企業が巻き込まれやすい元請けとのトラブル

元請けや下請けという立場がある以上、様々なトラブルが発生する可能性があり、今も実際にトラブルに巻き込まれてしまっている経営者の方も大勢いらっしゃると思います。

 

では、具体的にどのようなトラブルが考えられるのでしょうか。まずは、下請け企業が巻き込まれやすいトラブルについて見ていきましょう。

 

 

元請け企業が引き起こす様々なトラブル

元請け企業が引き起こすトラブルとして以下のようなことが起こりえます。

 

 

✓正式な理由なく、代金を払おうとしない

✓正式な理由なく、減額要求をしてくる

✓何かと難癖をつけて、代金を払おうとしない

✓何かと難癖をつけて、減額要求をしてくる

✓納期が少し遅れただけで下請け代金を払えないと言ってくる

✓少し納期に遅れただけで、巨額の遅延損害金を請求してくる

✓頻繁な仕様変更や無理な要求など、納期が遅れた原因は元請けなのに遅延金を請求してくる

✓納期が遅れた原因は元請けにあるのに、代金を支払おうとしない

✓工期遅延の遅延金として高額な金額を請求してくる

 

一般的には、発注する側の元請けの方が取引における立場が強く、仕事をもらう側である下請けは取引上立場が弱くなってしまいがちです。本来の取引では、元請けも下請けも立場は同じはずですが、現実問題はそうはいかないことも多いでしょう。取引での立場が弱いと、値引きやその他の行為を求められた際に、断り切れないこともあります。

 

ただし、このような行為は必ずしも合法ではなく、下請法に違反している可能性もあります。

 

 

※下請法:資本力の大きな企業(元請け企業)が資本力の小さな企業や個人事業主(下請け企業)に発注した商品やサービスに対して、不当な代金の減額や不当な返品、支払いの遅延を禁止するための法律です。公正な取引を行うための独占禁止法を補完する法律として位置付けられています。簡単に言えば、下請け企業を守るための法律を考えられるでしょう。

 

 

下請法で定められている内容に違反した行動を元請けが取っている場合、下請け会社は自社を法律上守ることができます。そのため、法的に問題があることを証明できれば、法律が守ってくれるということを頭に入れておきましょう。

 

 

不当な要求を安易に受け入れるべきではない

確かに、下請け企業にとっては元請け企業との信頼関係はとても大事で、今後仕事を発注してもらえるかどうかを考えると、多少の無理には応じざるを得ない状況かもしれません。

 

しかし、元請け企業という地位を濫用した不当な要求を受け入れていては、下請け企業の経営の根幹にかかわってきます。また、先ほどもお伝えしたように、不当な要求は下請法に反している可能性が高いため、不当なことは不当であると、毅然として対応する必要があるのです。

 

元請け企業からの不当な要求や理由がはっきりしない未払いがある場合は、出来るだけ早く不当であるという証拠を掴み、法的対処を考えていくことが大切です。

 

なお、元請け企業の不正行為はあらかじめ企業調査に精通している探偵に調査を依頼して証拠を掴み、証拠が揃った段階で企業法務に精通している弁護士に相談するという流れが良いでしょう。

 

 

元請け企業が巻き込まれやすい下請けとのトラブル

先ほどの章では、下請け企業が巻き込まれやすいトラブル、つまり、元請け企業が引き起こすトラブルについて見てきましたが、元請け企業が巻き込まれるトラブルももちろんたくさんあります。

 

ここでは、元請け企業が巻き込まれてしまう厄介なトラブルについて具体例も含めてみていきましょう。

 

 

下請け企業が引き起こす様々なトラブル

元請け企業が巻き込まれるトラブルとして以下のような内容のご相談がよく見受けられます。

 

 

✓発注していないにも関わらず勝手に追加作業をして追加請求してくる

✓仕事が完了していない状態で代金の請求をしてくる

✓かなり雑な仕事をし、相場以上の金額を請求してくる

✓雑な仕事にも関わらず改修の対応に全く応じない

✓少し支払いが遅れただけで元請会社に押し掛けてくる

✓支払いが遅れると腹いせに、建設業者などの高価な工事器具を持ち去る

✓自社の社員と下請け企業が通じていて勝手に発注が行われる

✓明らかに個人事業主で社員はいないのに社員の残業代を請求してくる

 

先ほど、下請法の存在について触れましたが、下請け企業が下請法に守られるのと反対に、元請け企業は下請法によって責められる立場にあります。

 

そのため、下請け企業が多少のわがままのような行動を取っていても、見て見ぬふりをして事なかれ主義を通してしまう経営者の方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、下請け企業がわがまま放題にやってしまうと、金銭的にも経営を圧迫することは目に見えていますし、あなたの会社の評判も下がってしまうことになるでしょう。

 

下請法は下請け企業を守るための法律ではありますし、守られる存在であることは間違いありませんが、違法行為をしてもいいということでは決してありません。そのため、こちらに不利になるような行動を取っている場合はその証拠を押さえて法的に戦うことを視野に入れておくべきでしょう。

 

 

勝手な追加作業やミスには毅然とした態度で臨む

下請け企業の中には、自分勝手な理由で了承もなく勝手に追加作業をして追加料金を請求してくる業者も存在します。また、ずさんな仕事でずさんな成果物であっても平気で代金を請求してくる場合もあるでしょう。

 

また、少しでも代金の支払いが遅れるとすぐに会社に乗り込んでくる下請け企業のケースも過去にはありました。このような自分勝手な行動を取られてしまうと、あなたの会社の従業員にとってもいい影響はありませんし、依頼主との信頼関係に亀裂が入る可能性も十分にあります。これはまぎれもなく業務妨害行為であるといえるでしょう。

 

下請け業者は、たとえ仕事でミスをしたとしても、「結局は元請け企業から支払いをしてもらえる」と勝手に思い込んでいる可能性もあります。だからこそ、平気でミスをしたり、勝手に追加作業をしたりするのかもしれません。

 

しかし、このようなミスや勝手な追加作業は依頼主との信頼関係にも影響が出ますし、あなたの会社の経営状況にも悪影響を及ぼしますので、毅然とした態度で対応することが必要です。下請け企業がミスをしたのであれば、しっかりとやり直しをさせないといけませんし、こちらが要求していない勝手な追加作業については契約書を見直してこちらの要望ではないことを明らかにしていく必要があるでしょう。

 

 

元請け、下請け以外の取引先とのトラブルにも注意

ここまでは、元請け企業、下請け企業でのトラブルとその対応について見てきましたが、企業が抱えるトラブルは、元請けの企業と下請けの企業の間の関係にとどまらず、取引関係にある企業間でもありえます。

 

長年の取引がある企業同士だと、お互いの信頼関係を理由に契約書を交わさないケースも少なくありません。また、新規で初めて取引をする企業同士でも、どうしても契約を取りたいからという理由から、仰々しい形での契約書を交わさないケースがあります。

 

このような契約内容がはっきりしない場合、ちょっとしたトラブルがきっかけで「言った、言わない」という争いになり、事が大きくなってしまう場合もあります。そのようなトラブルを避けるためには、契約書などの書面をきちんと取り交わすことが必要です。

 

もし、取引先から代金が支払われないという問題が続くようであれば、出来るだけ早く行動し、未払い金額を回収できるようにしなければいけません。

 

 

元請けや下請けとのトラブルを未然に防ぐためには

今回は、元請け企業や下請け企業、そして取引先企業とのトラブルの内容やトラブルが起きてしまった際の対応について見てきました。

 

トラブルに発展してしまった場合は、当事者だけでの解決は難しくなりますので、証拠を集めるための探偵や法的に解決するための弁護士に相談して進めていくことが必要になるでしょう。

 

しかし、そのような企業間でのトラブルは未然に防ぐことも可能です。トラブルを未然に防ぐことができれば、解決のために時間と労力、弁護士費用などのお金を余分に負担する必要もなくなります。

 

そこで、この章では、元請け企業や下請け企業とのトラブルを未然に防ぐためのポイントについて解説していきます。

 

 

取引しても問題ない企業か事前に調査しておく

受けられる仕事をたくさん増やしたい、仕事を請け負ってくれる下請け企業を増やしたい、と考えると、ついつい焦って元請け企業や下請け企業との取引を増やしてしまいがちですが、企業間のトラブルを未然に防ぐためには、取引をしても問題ない企業なのかどうかをしっかりと見極めることが重要です。

 

特に、個人事業主として下請けをしているような規模の小さい会社では、できるだけ安定した収益を得るために、多少の無理をして元請け企業との取引をしてしまいがちですが、問題のある取引相手だと、未払い金のトラブルに巻き込まれる可能性が高くなるので注意が必要です。

 

反対に、より多くの収益を上げるために下請け企業を安易に増やしてしまい、雑な仕事をする下請け企業との取引をしてしまうと、自分の会社の信用問題にもつながってきます。

 

過去に取引相手と揉めたことはないか、経営状況は良好なのか、経営者の人柄に問題はないか、今後未払いトラブルが起きる可能性はないか、などを事前にしっかりと調査しておきましょう。取引を検討している企業の調査に関しては、企業調査を得意としている探偵事務所に依頼するのがより確実に調べることができて安心です。

 

 

契約書が自社に不利になっていないかチェックする

下請け、元請けとの関係に限らず、ビジネスにおいてはある程度自社にとって不利な内容であっても、その条件を受け入れて取引を開始することがありますが、不利な条件によって将来リスクが大きくなる可能性は否めません。

 

そのため、契約書が自社にとってどれほど不利になっているのかを契約前にしっかりと確認しておくことが大切です。あまりにも自社に不利な条項があるときには、取引相手にきっちりと修正を求めるか、もし受け入れてもらえなければ思い切って取引を辞めるという勇気も必要です。

 

また、契約書に権利と義務が明確に記載されているかもチェックしましょう。契約書の各項目において、どちらの会社がどのような権利を有していて、どちらの会社がどのような義務を負うのかについて明確に記載されていることが重要です。

 

権利と義務が不明瞭になってしまうと、将来トラブルが発生した時により重大な問題に発展するリスクがあります。

 

契約書について不安が大きければ、企業法務に精通している弁護士に相談しながら取引について検討していくと良いでしょう。

 

 

まとめ

下請け企業、元請け企業とのトラブルは、会社を経営していくうえで避けては通れないトラブルの一つと言えます。また、経営をどれだけしっかり行っていてもどの会社でも巻き込まれる可能性のあるトラブルです。

 

そのため、今回ご紹介したトラブルが起こる可能性が自分の会社にもあることを念頭に置いて、対策を考えていくことが重要だと言えます。

 

また、取引先とのトラブルを未然に防ぐために、事前に候補の企業に企業調査や信用調査を行っておくことも大切です。もし理由もなく代金を支払わないなどのトラブルになってしまった場合も冷静に対応し、どのような理由で未払いになっているのかを専門家に調査してもらったうえで、法的な対応を検討していきましょう。