会社のお金を横領してしまった場合に問われる罪と正しい対処法とは

KW会社のお金を管理できる立場にあったり、ふとしたときに会社のお金に触れる機会があったりしたとき、出来心で会社のお金に手を付けて横領してしまった・・・という経験がある方も少なくないかもしれません。

 

もちろん、少額であっても会社のお金を横領することは決して許されることではありませんし、罪に問われることですが、誰にでも起こりうる可能性のある出来事とも言えます。

 

今回、この記事にたどり着いていただいた方の中にも、「会社のお金を横領してしまってどうすればいいのか?」「どんな罪に問われてしまうのか?」「横領した金額を返せない。どうしよう。」と不安を抱えている方がいらっしゃると思います。

 

そこで本記事では、会社のお金を横領してしまった場合に問われる可能性のある罪やお金を返せなかったらどうなってしまうのか、どのように対処していけばいいのかについて詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

 

会社のお金を横領したことがバレてしまう理由とは

横領行為は社内における不正行為の中でも案外発覚しにくい犯罪と言えます。

 

会社のお金を盗むという大胆な犯行をしてはいるものの、会社の経営者も周りの同僚や上司たちも「まさか自分の会社で横領犯罪が起こるわけがない」と心のどこかで思い込んでいる節があるため、案外発覚がしにくいのです。

 

では、これまでに発覚してきた横領犯罪は何がきっかけで明るみに出ることになったのでしょう。横領が発覚した理由や原因はどこにあるのでしょうか。

 

 

横領する回数や横領金額が増える

テレビやネットのニュースで話題になるような大きな横領事件では、横領被害額が何億円にも上るというケースも珍しくありません。

 

しかし、このような大規模な横領事件でもはじめから多額の金額を横領しているというケースは稀で、始めは恐る恐る少額を横領し、「今回はバレなかったからもう一回くらい大丈夫」と横領をもう1回、さらにもう1回と繰り返し、気が付いた時には合計の横領金額が多額になっていたり、「バレない」という安心感から犯行が大胆になっていき、1回あたりの横領金額が上がっていったりするようになるのが典型的な横領行為です。

 

横領する回数が増えていけば当然その分、バレてしまうリスクが高くなりますし、1回あたりの横領金額が増えていけば不審に思われる可能性も高くなります。

 

このように横領行為の回数や金額が次第にエスカレートしくことで、必然的に被害が発覚していくのです。

 

 

担当者が変わる

経理担当者が会社のお金を横領するというのは横領事件のケースとしてよくある事例ですが、このような場合、経理の担当者が変わることで事件が発覚する場合も多いです。

 

長年にわたって1人で経理などの業務を担当していて、自分の裁量でお金を出し入れし、それに紛れて横領行為を行っていたようなケースでは後任が引き継いだ途端に横領行為の不正が見つかるというのはよくあるパターンです。

 

大きな会社であれば、人も多く所属しているので定期的に配置換えを行い、一人の従業員にすべての経理業務を任せ続けるというのはありませんので、不正も防止できますが、小規模な会社では、人員も足りていませんし、新しい業務をそれぞれゼロから教えるというのは実際問題難しいです。

 

そのため、なかなか配置転換も難しく、特に経理のような重要かつ専門業務になるような場合だと、担当を定期的に変えるのは難しく、一人の従業員に長期間にわたって任せるという状態になってしまいます。

 

横領行為をしている本人も「自分が担当者として管理している限りは横領行為はバレない」横領行為を続けてしまうことも多いのです。

 

しかし、実際は事故や病気などで長期間の休みが必要になることもありますし、配置転換が行われることも考えられます。そうなれば、別の誰かがその仕事を代わりに引き継ぐことになりますので、そのタイミングで横領行為の不正が明るみに出るきっかけとなるのです。

 

仮に、一度も配置転換が行われないとしても、いつかは定年を迎え、会社を去る時が来ますので、最後まで完全に横領という不正行為を隠し通すなど不可能なのです。

 

 

外部から怪しまれる

会社内部から怪しまれたり気がつかれたりしない場合であっても、外部から怪しまれて横領行為が発覚するケースも少なくありません。

 

ここで言う外部というのは顧問税理士や会計士、取引先、税務署などです。

 

例えば、横領したお金で豪遊したり、新しく高級車や家を買ったりするなど、いきなり不自然に生活が派手になれば、税務署に申告している収入額と生活が見合わなくなるので、当然、「この派手な生活はどの収入源からなのだろう?」と税務署に目をつけられることになります。

 

そうなれば税務調査が入りますし、それがきっかけで横領の発覚につながります。

 

他にも、取引先との会食などで気前よく高級レストランや高級クラブをご馳走したりするようになれば「最近、●●さんは羽振りがいいけどお宅の会社は儲かっているんだね」などと会社の経営者や関係者に話をするきっかけにもなります。

 

そのような何気ない会話のやり取りや世間話から横領行為が明るみに出ることもあるのです。

 

 

会社のお金を横領してしまったらどんな罪に問われるの?

会社のお金を横領してしまった人たちが一番気になるのは、横領行為がバレてしまったらどんな罪に問われてしまうのだろう・・・?ということではないでしょうか。

 

この章では、横領行為が会社にバレた時に問われる可能性のある罪について見ていきましょう。

 

 

刑事責任と民事責任を問われる

会社のお金に手を付けて横領行為をしてしまった場合、刑事責任と民事責任が問われる可能性があります。

 

刑事責任とは、刑事罰のことで、テレビなどでも「●●罪で容疑者が逮捕されました」などと報道されているのを見たことがある人が多いと思います。

 

警察から横領を疑われていると、逮捕や勾留をされたり、逮捕されなくとも取調べを受けたりされますし、起訴されて裁判となり横領したことが事実と判断されれば横領罪などの刑事罰が課されることになります。

 

刑事責任を問われ起訴されれば、懲役や過料などの法定刑を受けるだけでなく、前科が付くことになってしまいます。

 

刑事責任の他にも民事責任を問われる可能性もあります。民事責任では、被害者に与えた損害に対する賠償の責任を負うことになるでしょう。会社のお金を横領した場合、会社という被害者から訴訟を起こされて損害賠償請求される可能性が高いです。

 

 

刑事責任としての横領罪

横領罪にも単純横領罪、業務上横領罪、遺失物等横領罪の三種類ありますが、会社のお金を横領した場合は業務上横領罪の責任が追及されます。

 

自分が仕事上会社で管理していたり占有していたりする物やお金を自分のものにした場合に適用される刑事罰です。例で言えば経理担当の従業員が売上金を無断で引き出して生活費にあてたり、営業担当者が取引先からの売上金を着服して私用にお金を使ったりなどがこれにあたります。

 

法定刑はほかの横領罪に比べて重い、10年以下の懲役とされています。

 

 

横領行為の民事責任

横領行為に対しては刑事責任以外にも民事責任を追及される場合も多いです。横領行為によって、会社は財産上の損害を受けていますので、被害を弁償してもらうための請求をしてくるでしょう。

 

会社のお金を横領したことが事実で、横領行為の証拠も提示されているにも関わらず、謝罪をしなかったり、十分に返済しなかったりした場合は、民事裁判を起こされてしまう可能性も十分考えられるでしょう。

 

 

懲戒解雇など会社における処分を受ける可能性がある

刑事責任や民事責任の他にも、会社における責任追及をされる場合も多いでしょう。

 

会社における責任追及としては、降格や減給、出勤停止などさまざま種類がありますが、横領行為はかなり重い不正行為とみなされるため、懲戒解雇など懲戒処分の中でも重い判断を下される可能性が高いです。

 

懲戒解雇にされてしまうと、強制的に解雇されることはもちろん、退職金が支払われないだけではなく、再就職が難しくなってしまうなど、今後の人生において多大なデメリットが生じることになるでしょう

 

 

横領したお金を返せなかったらどうなる?

会社から多額のお金を横領していたとしてもその場ですぐに使ってしまっていて、横領行為が会社に知られてしまった段階では手元にほとんど残っていない・・・・という状況も考えられるでしょう。

 

横領したお金が多額であってもそれをすべて使ってしまっている場合、損害賠償請求をされてもすぐに返済することはかなり難しいはずです。では横領したお金を返済できない場合、どうなってしまうのでしょうか?

 

 

返済できないと刑事責任を追及される可能性が高い

従業員に横領されてしまった会社としては、横領した犯人を解雇することよりも何よりも、横領されてしまったお金が手元に戻ってくることは何よりも大切だと思っています。

 

しかし、横領した従業員がすでに横領金を使い果たしていて手元に被害金が残っていないことが判明すれば、被害者である会社は警察に被害届を出し、刑事告訴することを検討する可能性が上がります。

 

警察は、被害届や刑事告訴があれば捜査を進め、刑事罰に該当する可能性があると判断すれば刑事事件としてより一層の捜査を開始します。そして、犯人が逃亡する可能性があると判断される場合や証拠隠滅される恐れがあると判断される場合には、逮捕されることもありえます。

 

逆に言えば、横領してしまったとしても被害金をしっかりと返済したり、返済の意思をはっきりと示してその根拠も示すことができたりすれば、事件を公にせずに示談にして当事者間で解決できることも少なくありません。

 

 

自己破産したらどうなる?

「借金があっても自己破産すれば返済義務はなくなるから、横領したお金を返せない場合も自己破産すればいいのでは?」と考えている方も少なくないと思いますが、結論から言えば、自己破産しても賠償責任は残ります。

 

自己破産で免責を受けた場合、借金の返済義務はなくなりますが、横領などの悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権については、免責されないことになっています。

 

つまり、たとえ自己破産したとしても横領したことによって生じた損害の賠償はしていかなければならず、その責任を消すことはできません。

 

 

横領したお金を返せない場合の対処方法

横領したお金を返すことができないと、刑事責任を追及されてしまう可能性が一気に上がるとお伝えしましたが、実際にどう頑張ってもすぐに横領金を返せないという場合もあるでしょう。

 

その場合、どのようにして対処していけばいいのでしょうか。

 

 

分割払いにしてもらう

横領したお金が多額ですぐに返済できない場合や、横領したお金をすべて使い果たしてしまい手元に資金がなく返済が難しい場合には、分割返済をお願いしてみましょう。

 

もちろん、被害者としては一括ですべて被害金額が返ってくることが理想ですが、返済してもらえる期待が持てるのであれば分割返済にも応じてくれる可能性があります。

 

また被害金額が大きい場合には、減額をお願いするのも一つの方法です。当然被害者の会社側は全額を返してもらいたい気持ちが強いですが、一円も支払われずに逃げられてしまったり、返済が何十年にも渡ったり、被害金額を返済してもらうために労力を割き続けたりするほうが避けたいはずです。

 

そのため、多少返済額が満額に満たなくても「これだけ返してくれるなら・・・」「これ以上返済請求に労力を割かなくてよくなるのであれば・・・」と減額請求に応じてもらえる可能性は期待できます。

 

ただし、分割返済や減額返済においては、連帯保証人をつけるなど、何かしらの担保を求められることがありますので、あらかじめ準備しておくと良いでしょう。

 

 

示談交渉を行う

横領してしまったお金を全額返済するのが難しい場合には、会社側に示談の交渉を申し込むのも一つの手段です。

 

減額された金額であっても、一括で返済できるのであれば、会社は示談に応じてくれる可能性が高いですし、分割返済であっても保証人がいて全額返済を約束できるのであれば示談が成立することが多数です。

 

会社的には、自社内で横領事件が起きてしまった事実や横領を起こした従業員に対して怒りの感情がぬぐえないのは事実だと思いますが、横領した本人が逮捕されてしまうと、被害金額の返済はさらに難しくなってしまいますので、現実的に返済が見込める示談に応じてくれる可能性は十分に期待できます。

 

示談を行う際は、必ず示談書として文書にまとめておくことが大切ですが、示談書のなかに「被害届を出さない」「刑事告訴をしない」のように記載してもらえば、その後、刑事責任を問われる可能性を回避できるためこちらにも大きなメリットがあります。

 

会社側との示談交渉は、一般的には弁護士に依頼することが多いでしょう。素人の方が分割返済や示談交渉を進めてもなかなかスムーズにいかないことが多いです。

 

普段から、取引先などと交渉テクニックを駆使して取引をしている方であればご自身でも示談交渉は可能だと思いますが、ほとんどの方が交渉テクニックを使うことなく日々を過ごしていると思います。

 

そのため、示談交渉は弁護士に依頼してしまうのが手っ取り早い方法ではあるのですが、弁護士にも当たりはずれはありますし、弁護士費用がかなり高額になってしまうことになります。

 

そのため、もしご自身で交渉テクニックを身に付けて会社側と直接交渉していくことができれば、ご自身も納得がいく内容で決着がつきますし、弁護士費用もかけずに解決することができます。

 

参考サイト:問題解決のための交渉コンサルティング

http://nego-consulting.com/

 

 

まとめ

会社のお金を横領してしまい、それが会社に発覚してしまうかもしれないと思ったら、誰でも気が気ではなくなるでしょう。

 

「逮捕されるかもしれない」「どんな罪になるのだろう」「返済なんてできない」と目の前が真っ暗になるかもしれません。

 

しかし、大切なのは、冷静になること、そして今できる最大限の対処方法を取ることです。ぜひ、困ったときは専門家の力を借りてくださいね。