どこの会社にも問題社員と呼ばれるような社員は存在しますよね。
遅刻や無断欠勤の常習犯、パワハラやセクハラをする社員、不正経費需給をする社員など、経営者が頭を悩ませるような問題社員はできることならば解雇したいと思うでしょう。 しかし、一度雇った社員を解雇することは簡単なことではなく、安易に解雇してしまうと不当解雇として会社側が訴えられてしまうリスクもあるのです。
そこで今回は、問題社員を解雇する際にチェックしておくべき重要ポイントやトラブルを起こさないように安全に解雇する具体的な手順について徹底解説していきます。 問題社員でお困りの経営者の方はぜひ参考にしてみてください。
日本では解雇するハードルがかなり高いのが現実
ご存知の方も多いかもしれませんが、日本は解雇規制が厳しく、簡単に社員を解雇することはできないのが現状です。下手に解雇してしまえば、不当解雇として会社側が訴えられてしまうことも珍しくありません。
解雇によって労働者が被る不利益が非常に大きいと考えられているため、労働者保護の観点から解雇については厳しく判断されるのです。 大前提として、企業が従業員を解雇するためにはあらかじめ就業規則などでどのような場合に解雇するかを明記しておく必要があります。
安全に解雇できるように、日本における解雇に関しての知識をしっかりとつけておくことが重要なのです。
経営者が解雇したくなる問題社員とはどのような存在?
最近では経営者を困らせる存在の社員のことを「モンスター社員」と呼ぶこともあり、耳にしたことがある人もいるかと思いますが、経営者が解雇したくなるような問題社員とはどのような社員を指すのでしょうか。
もし、以下に記載するような社員が会社にいれば、問題社員として適切に解雇できるかどうかを検討していくのがいいでしょう。
会社の規律を無視するタイプ
営業の外回り中にサボる、無断欠勤や遅刻早退が多い、業務命令に従わず自分の判断ですべて進めるなどの社員はこのタイプの問題社員です。
社内の人間関係でトラブルを起こすタイプ
社内不倫を繰り返す、パワハラやセクハラをしている、弱い立場の人間をいじめる、上司や部下など特定の人物に誹謗中傷を行うなどの問題社員はこちらにあたります。 社内不倫や社内でのパワハラやセクハラはきちんと証拠として集めておくことが重要です。
能力不足のタイプ
勤務成績が悪いのにその自覚がなく改善意欲もない、ミスが多すぎる、中途採用で過去の業務経歴書と実態が違う、能力不足のせいで業務が滞っているなどの問題社員はこちらのタイプです。 解雇できるまでの証拠をそろえることが難しいですが、経営者が解雇したいと思ってしまう問題社員のタイプでしょう。
なお、このタイプは義務は果たさないのに権利ばかりを主張する傾向が強いので、解雇やそのほかの処置を進めていくうえで十分に注意しながら行うことが必要です。
メンタルや体調に問題を抱えているタイプ
病気で長い間休職している、体調不良による欠勤を繰り返す、うつ病で通常の業務ができない、などメンタルや体調に問題を抱えている社員も経営者からしてみると問題社員と言えます。
このタイプは、メンタルや体調が戻ればきちんと会社に貢献してくれる可能性がありますので、医療機関の受診や産業医の面談などをフォローしてあげるといいですね。
問題社員を解雇するうえでチェックすべき重要ポイント
問題社員をどうしても解雇したい!と思ったら、自分の会社では問題社員を解雇できるだけの状況が整っているのか最初に確認する必要があります。
解雇したいという思いだけで先走って不用意な解雇を行ってしまうと、後になってその社員からの仕返しを受けてしまうリスクもあります。そうならないためにも、問題社員の解雇を行う前に確認すべきポイントについてこの章で解説していきます。
就業規則について
解雇を行うためには、解雇事由があらかじめ明示されている必要があります。 労働基準法では、就業規則と労働契約書に解雇事由を記載しておくように定められていますので、解雇する際には就業規則を確認する必要があるのです。
そして、就業規則が社員たちに通知されているか、労働基準監督署に届出がされているか、就業規則の作成時に社員の意見を聴取したかなどもポイントになります。これらに不備があるまま解雇を進めるのは危険ですので、その場合は弁護士などと相談しながら社内体制の整備を見直すべきでしょう。
解雇する方法
問題社員を解雇する場合、解雇には【普通解雇】と【懲戒解雇】の2つの方法があります。
普通解雇は、社員の能力不足や病気などによって就業することができない場合などに行われる解雇です。懲戒解雇とは、起業秩序に違反した社員に対して行う制裁的意味合いがある解雇です。
解雇するという結果だけをみると経営者としては普通解雇でも懲戒解雇でも違いは大きくないですが、解雇される社員からすると退職金が受け取れなくなるなど、被る不利益は懲戒解雇のほうが大きくなります。 そのため、安易に懲戒解雇を選んでしまうと正当性が認められなくて逆に会社が訴えられるリスクが高くなるということは頭に入れておきましょう。
解雇予告について
解雇を行う際は、原則として30日以上前に解雇することを予告する必要があります。
ドラマなどで「明日から来なくていいから」と社長が言っているのをよく見ますが、あれは基本的に違法な解雇ですので絶対に辞めましょう。 ただ、解雇予告をした後は問題社員の業務意欲の低下や情報漏えいのリスクなどが発生しますので、その社員を観察しておくことも大切になります。
問題社員を解雇するときの具体的な手順
問題社員を解雇する際は、会社が訴えられるなどの余計なトラブルを招かないように慎重に進めていくことが大切です。適切に手順を追って進めて不当解雇のリスクを最小限に減らしましょう。 この章では、問題社員の解雇を行う際に、不当解雇とならないための具体的な手順について解説していきます。
社員の問題点を把握する
問題社員の解雇を行うにあたっては、まず現状を把握して問題社員がなぜ「問題」なのかを把握することが必要です。 どのようなタイプの問題社員で、どのような影響が会社に起きているのか把握してください。
パワハラやセクハラを行って他の社員に悪影響が出ているのか、プライベートのSNSでネット炎上トラブルを何度も起こしているのか、横領をしている可能性があるのか、業務中にサボっているのか、など、問題の程度も内容もいろいろなケースがあります。
必要があれば専門の調査会社に依頼して社員の素行調査を行っておくことも証拠を集めるという観点から有効な方法と言えるでしょう。専門業者を選ぶ際は、企業調査に精通していて実績のある探偵事務所を選ぶことをお勧めします。
対処方法を検討する
社内の現状や問題社員の問題行動の内容を把握できたら、次は対処方法を検討する段階に入ります。 就業規則と照らし合わせながら、問題社員がどの部分に違反しているかをチェックして最善の対応を決めていきます。
この段階では解雇ありきで考えるのではなく、あくまでも問題社員に問題点を改善してもらうということが前提になります。 注意指導を行うだけでいいのか、出勤停止処分にすべきなのか、配置換えをするのか、減給処分にすべきなのかをしっかりと検討していくことが重要です。
処分の実施
社員の素行調査や証拠を元に適切な処分を行い、問題社員の行動の経過を観察していきましょう。 もし問題社員の改善が見られるようであれば、解雇する理由はなくなります。
改善されているもしくは改善の意欲があれば、会社としてもその社員としても解雇せずそのまま働き続けてもらったほうがいいですよね。 もし万が一、改善が見られない場合は、すぐに解雇に踏み切るのではなく、さらなる処分の検討を行ってください。
最終手段として解雇
何度も何度も注意や指導を行い、解雇よりも軽い配置転換や減給処分、降格処分などの懲戒処分をしても改善が見られないという状況になった場合は、いよいよ解雇という選択肢を検討する段階になります。
ただし、この場合もすぐに解雇を突き付けてしまうとリスクが大きくなりますので、あくまでも慎重に進めていかなければなりません。問題社員が素直に退職してくれるよう、まずは退職勧奨を行い合意のもとで退職したという形にできるよう話し合うことをおすすめします。
問題社員を解雇する際には専門家への相談がベスト
問題社員がどれだけ問題を抱えていようと、日本においては解雇するハードルが極めて高いということはご理解いただけたかと思います。 できるだけ不当解雇となるリスクを減らすためには、自社内だけで進めずに専門家に相談しながら進めていくのが安全です。
解雇する根拠となる証拠集めは探偵に相談
解雇するためにはその根拠となる問題行動の証拠が必要になります。問題社員との話し合いの場でも必要になりますし、万が一不当解雇で訴えられて裁判になってしまった場合にも証拠があれば会社を守ることができます。 根拠となる客観的な証拠については調査のプロである探偵に素行調査や内部調査を依頼するのがベストです。
不当解雇にならないような法律相談は弁護士へ
不当解雇のリスクは弁護士であっても判断が簡単ではないため、素人では不当解雇にあたるのか、正当な解雇にできるのかの判断はほぼ不可能と言えるでしょう。
弁護士に問題社員についての詳細や証拠を見せながら慎重に進めていきましょう。なお、弁護士にあらかじめ相談しておけば、万が一解雇の問題が裁判にまでもつれ込んでしまったとしても訴訟の対応を任せることができるため、安心感は大きいです。
まとめ
日本では解雇の規制がとても厳しく、いくら問題社員の行動が会社にとって大きな不利益になっていたとしても、基本的には解雇は簡単に取れる手段ではありません。あくまでも最終手段として解雇を考えておくべきです。
そのため、どんなに問題社員を解雇したいと思っていたとしても、まずは注意喚起や指導、配置換えなどの対応から始めるようにしてください。 そのような対応を繰り返し行っても、問題社員に改善が見られない場合にようやく解雇という選択肢について本格的に検討する段階になります。
解雇をする場合にも不当解雇にあたらないように、企業トラブルに強い弁護士や探偵などの専門家にアドバイスをもらいながら慎重に進めていくようにしてください。