KW今はほとんどの人が利用しているSNSで、SNSは私たちの生活で切っても切れない関係として日常に浸透してきています。
企業の中にも、SNSを利用したマーケティングに力を入れている会社も増えてきています。SNSは利用者が多いうえに情報を拡散してもらえるという特徴があるため、低コストで多くの人にアプローチできるという強みがあることは確かです。
しかし、便利なコミュニケーションツールとして注目されているSNSですが、SNSをめぐって企業の「情報漏洩問題」が浮き彫りになっていることも事実なのです。
この記事では、なぜSNSで企業の情報漏洩が起きてしまうのか、SNSで情報漏洩が起きてしまうとどのようなリスクがあるのか、そして情報漏洩を防ぐためにどのような対策を取るべきなのかについて詳しく解説していきます。
SNSで情報漏洩が起きてしまう主なパターン
企業の公式SNSアカウントはもちろん、個人利用でのSNSアカウントからも情報漏洩問題は発生しています。
特に個人利用でのSNSは関わる人たちが知人や友人が多いため、つい気がゆるんで、本来なら漏らしてはならない企業の重要な情報までも漏洩してしまう事件が多発しています。
この章ではどのようにして情報漏洩が起きてしまっているのか、主なパターンを見ていきます。
未発表の企業情報を社員がSNSに書き込んでしまう
「来月、新機種のスマートフォンが発売される」
「うちの会社のお菓子の新しいCMに芸能人の●●が出る」
など、企業からすればマーケティング戦略にかかわる重要な情報で、社外に知られたくない未発表情報をSNSに書き込んでしまうことによって起こる情報漏洩のパターンです。
このような情報漏洩の被害はこれまでにも数多く報告されています。
未発表の企業情報が漏洩してしまうとライバル会社に有利な情報が知られてしまったり、商品のイメージに損害を与えてしまったりという被害に発展してしまうリスクもあります。
当然のことではありますが、社員たちには未発表の企業情報は絶対にSNSなどには書き込まないように徹底する必要があるでしょう。
プライバシーにかかわる情報をSNSに書き込んでしまう
芸能人やスポーツ選手などのプライバシーにかかわるような内容の情報をSNSに書き込んで情報漏洩の問題が起こるケースもあります。
よくあるのが高級レストランで働いている従業員がレストランを訪れた芸能人について「今日タレントの●●がうちのレストランに来ていた」などとSNSに書き込んだり、ホテルの従業員が「今夜野球選手の●●が恋人と一緒にホテルに泊まりに来ているので部屋をのぞきに行ってくる」とSNSに投稿したりして問題になるケースがあります。
このようなプライバシーを侵害するような行為はレストランやホテル側にとっては信用を失墜させる重大な損害をもたらすリスクがあり、プライバシーの侵害を受けた芸能人や芸能事務所から訴訟を起こされるトラブルに発展することもあります。
位置情報の流出で情報が漏れてしまう
GPS機能がついたスマートフォンで撮影した写真をそのままSNSなどにアップしてしまうと、写真のデータに撮影日時や撮影した場所の位置情報などが一緒に投稿に反映される可能性もあります。
その場合、たとえ文字としてSNSに場所や日時を投稿していなくても、写真の位置情報や日時の情報によって、個人の住所や仕事でよく使う場所などの情報が漏れてしまうこともあります。
位置情報などによって個人の住所が特定されてしまうとストーカー被害に発展することもあり、大きなトラブルになるリスクもあるのです。
なりすまし被害によって情報漏洩が起きてしまう
SNS上でのなりすましとは、本来のユーザーのアカウントを乗っ取り、本物のユーザーになりすまして不正ログインを行い、本人かのようにふるまって情報を奪い取る不正行為のことを言います。
SNSのアカウントが奪われて不正ログインをされてしまった場合、企業として社外に知られたくない情報はもちろん、不正送金に使われる可能性のある重要な情報が漏洩するリスクが大きくなります。
SNS上で仕事のやり取りや情報の共有を行っているケースでは、SNSの不正ログインがなされてやり取りを勝手に見られたり、さらに故意に情報を奪い取られたりする可能性があります。また、最近ではSNSと電子マネーなどの支払いサービスが連携していることも増えているため、なりすまし被害に遭ってしまうと不正送金のリスクも高くなってしまうのです。
SNSで情報漏洩が起きてしまう一番の理由とは
情報漏洩が起きてしまう理由には主に2種類あり、1つは悪意がある人物がわざと情報を漏らすケースで、もう一つが悪意のない人物が意図せず情報漏洩を起こしてしまうケースです。
情報漏洩と聞くと、悪意のある人物による故意的な不正行為のように感じる方が多いかもしれませんが、実際に企業などで情報漏洩のトラブルが起きるのは悪意のない人物によるものがほとんどなのです。
つまり、SNSを利用している人の知識不足、リテラシー不足による行動が原因で情報漏洩が引き起こされてしまっています。
悪意なく情報漏洩を引き起こしてしまっている人たちの心理としては
「SNSにたくさんの投稿がされているから自分の書き込みなんて目立たないだろう」
「匿名のアカウントだから自分だとバレないから大丈夫」
「目立つ投稿をしてちょっとみんなの注目を浴びたいな」
などという気軽な気持ちから情報漏洩につながる重要な情報をSNSに書き込んでしまっているのです。
あなたの企業の従業員たちのSNSリテラシーやSNSのリスクについての知識が十分でなかった場合、あなたの企業についての情報や取引先についての重要な情報がいつの間にかSNSで流されてしまう可能性も十分にあるため、SNSリテラシーについての社内教育は十分に行っていく必要があると言えます。
SNSで情報漏洩が起きてしまうと企業にとってどのようなリスクがあるのか
情報漏洩によって企業が被る被害やリスクは様々です。
場合によっては自社だけにとどまらず、取引先や顧客にまで影響が及んでしまうケースも考えられます。被害の範囲が広がれば広がるほど、企業活動に与えるダメージも大きくなってしまいますので、社会的な責任を追及されてしまうリスクも出てくるでしょう。
この章では、SNSで情報漏洩が起こってしまった際に具体的にどのようなリスクが考えられるのか見ていきます。
企業やブランドに対するイメージの低下
顧客の多くは、企業に対するイメージやブランドに対するイメージによって商品やサービスを買うかどうかを決めている場合がほとんどです。
人気のある芸能人を商品のCMなどに起用しているのは、顧客の購買意欲を掻き立てるためにブランドイメージを上げるためともいえるでしょう。
しかし、SNSで情報漏洩が起きてしまった会社、ブランドだと顧客に認識されてしまうと、ブランドイメージが確実に低下してしまい、不買運動につながるリスクが出てきます。
また、個人情報を取り扱うような企業が情報漏洩の問題を起こしてしまえば、企業の信頼そのものに疑問を抱いてしまうことにつながり、長期に渡って売り上げを回復することが難しくなってしまうでしょう。一度失った信用や一度失墜したイメージはなかなか取り返すのが難しいため、情報漏洩によるイメージの低下は企業にとって大きなリスクなのです。
取引先が離れてしまう
SNSで企業にとっての重大な情報が漏れてしまうと、取引先が取引を停止したり新しく取引先を作るのが難しくなってしまったりというリスクもあります。
SNSで情報が漏れてしまうと、情報管理が甘い会社だと思われてしまうので、
「この会社と取引をしたら、うちの会社の重大な情報や顧客情報も漏洩されてしまうのではないか」
「情報漏洩のトラブルを起こすような会社と取引を続けていると自分の会社の信用も失ってしまうのではないか」
と懸念されて取引先やお得意様が離れてしまい、取引ができなくなってしまう恐れがあります。
仕入れ先や売り先を失ってしまうことは企業の存続にも大きくかかわることですので、絶対に避けるべきリスクと言えるでしょう。
ネットで炎上トラブルが起こる可能性
企業側の不注意や管理不足によってSNS上で情報漏洩が起き、それが公に発覚してしまうと、かなりの高確率でネット炎上トラブルに発展してしまいます。
ひとたびネット炎上が起きると、デジタルタトゥーとして、ネット上に「情報漏洩を起こしたことがある企業」としてその事実が残り続けることになります。
デジタルタトゥーとは、体に入れたタトゥーが半永久的に体に残り完全に消すのが難しいことをたとえた表現で、インターネット上に書き込まれたコメントや画像などが、一度ネット上で拡散されると消すことが難しく、半永久的にインターネット上に残されることを言います。
デジタルタトゥーとしてネット上に情報漏洩を起こしたことが記録されてしまうと、ネット炎上が収まった後も企業名をネットで検索すると過去の情報漏洩についての記事が閲覧されてしまいいつまでも評判を回復するのが難しいというリスクを抱えてしまうことになるのです。
新規の採用が困難になる可能性
SNSでの情報漏洩がデジタルタトゥーとして残ってしまうと、企業名の検索で情報漏洩トラブルを起こしたことがあることがわかってしまいます。
もし、あなたの企業に入社希望の人がいたとしても、過去の情報漏洩トラブルについての事実を知ってしまったら、応募を辞めてしまったり、内定を辞退したりする可能性は否めないでしょう。
新規の採用が困難になってしまったら、企業を存続していくことが難しくなりますし、事業拡大もできなくなってしまいます。
このように、デジタルタトゥーとして情報漏洩トラブルの過去が残ってしまっている場合は、新規の採用活動や新規の取引において大きな弊害になってしまうリスクが高くなるので、専門家に相談して適切に対処していくことを検討すべきでしょう。
参考記事;デジタルタトゥーとは|デジタルタトゥーで採用前に問題社員を見極める
デジタルタトゥーとは|デジタルタトゥーで採用前に問題社員を見極める
SNSでの情報漏洩を防ぐために企業としてできること
一度でもSNSで情報漏洩が起きてしまうと様々なリスクや弊害が生まれてしまうことはご理解いただけたと思います。
そのため、SNSでの情報漏洩のリスクを少しでも減らすために、企業として徹底して対策を取っていく必要があります。
この章では、情報漏洩トラブルを回避するために日ごろから行っておくべき対策について解説していきます。
社内研修などで個人のリテラシーを高める
先ほどもお伝えしましたが、社員によるSNSの情報漏洩は、本人に悪意なく行われてしまっていることがほとんどです。つまり、社員たちのSNSリテラシーがなくセキュリティ対策への理解不足が原因で情報漏洩トラブルが起きてしまっているのです。
そのため、正社員はもちろん、アルバイトや経営陣のベテラン社員も含めて社内研修を行い、個々人のSNSリテラシーを高めていくことが非常に効果的な予防策なのです。そして、SNSリテラシーやリスク管理についての研修は1度だけ行うのではなく、内容や視点を変えながら繰り返し行っていくようにしましょう。
社内研修では、SNSでの情報漏洩トラブルの事例や、なぜ情報漏洩が起きてしまったのかの原因、そして普段からどのような点を気を付けるべきか議論しながら進めていくのがお勧めです。
SNSへのアクセス制限を設定する
会社で使っているパソコンやスマートフォンのアクセス制限を設定することも効果的です。
会社のスマートフォンやパソコンでSNSにアクセスできる社員を限定したり、責任者だけにアクセス権を渡して置いたりすることで、無用なトラブルを防ぐことにつながります。
SNSに関するガイドラインや企業体制を整える
企業独自にSNSに関するガイドラインを設けておくことで、SNSの運用担当者も対応方法がわかりやすくなり、人為的なミスによる情報漏洩リスクが少なくなります。
また、万が一情報漏洩が起きてしまったなどの緊急時の対応フローもガイドラインに一緒にまとめておくことで、もしも情報漏洩が起きてもネット炎上を防ぎトラブルの拡大を抑制することにもつながります。
秘密保持契約を締結する
秘密保持契約とは、一般的に自社が持つ秘密の情報を他の企業に提供する際に他社に漏らしたり不正に利用されたりすることを防止するために結ぶ契約のことです。この契約を全社員に結ばせて「情報漏洩はやってはいけないこと」として規範意識を強化させることも情報漏洩防止につながるでしょう。
通常、入社する際に雇用契約書を結ぶと思いますが、それとは別に秘密保持契約を結び、情報漏洩について入社前にもしっかりと説明しておくことで、無意識のうちにSNSで情報を漏らしてしまうトラブルはかなりの数防げるはずです。
秘密保持契約には、違反した場合の罰則についても明確にすることも重要です。情報漏洩の内容や程度によって、損害賠償義務などが発生することを明記しておくことで、重要性がより伝わりやすくなります。
まとめ|SNSでの情報漏洩防止のカギは社員教育が握っている
SNSでの情報漏洩を防ぐためには、社員一人一人の意識を変えることが一番重要です。そのために、企業として社員教育を徹底していく必要があると言えます。
企業公式アカウントの運用だけにとどまらず、個人でプライベートで利用しているSNSの運用についても基本的なルールやマナー、リスクについてしっかりと日ごろから教育し、理解させるようにしてください。
SNSリテラシーの教育については専門家を招いて行う方法も有効です。実際にSNSトラブルの解決にあたったことのある専門家に事例やリスクの大きさについて説明してもらうことでリスクの実感をしやすくなるでしょう。自社の課題や状況に合ったSNSに関する社員教育を行って、SNSと上手に付き合っていきましょう。