「モンスター社員」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

どれだけ注意しても態度を変えようとしなかったり、権利ばかり主張してやるべき仕事をしなかったり、注意したら「パワハラだ!」と逆に上司を責めたり・・・

このような問題行動の多い社員のことを、最近は「モンスター社員」と表現するようになっています。そして、このモンスター社員に悩まされている経営者の方が業界、業種関わらず 増えているのです。 モンスター社員はどこの会社でも採用してしまうリスクがあり、対処法をしっかりと把握しておかなければ会社の業績に大きなダメージを与える可能性すらあるのです。

そこで今回は、モンスター社員の特徴やモンスター社員への対応方法、そしてモンスター社員を雇わないためにできる予防策について詳しく解説していきます。

モンスター社員とは?

冒頭でも簡単にお伝えしましたが、モンスター社員とは仕事に対する向き合い方や上司・同僚に対する言動に著しく問題がある社員のことをいいます。いわゆる「問題社員」ですね。

モンスター社員にもいろいろ種類があり、それぞれ違った問題を引き起こしていますが、いずれのケースでも、企業に対して著しく不利益を与える存在であることは間違いなく、経営者としては決して無視することが出来ません。

モンスター社員はどんな特徴がある?当てはまる社員がいたら要注意!!

「うちの会社にいる社員にも問題がある社員はいるけれど、モンスター社員と呼んでいいほどなのかな・・・?放っておいても大丈夫かな?」とモンスター社員かどうかの判断や、放っておいていいものかどうか、わかりにくいですよね。

世代が違っている場合は「ゆとり世代だからかな?」と自分を言い聞かせて問題から目をそらしてしまうことも少なくありません。 この章では、モンスター社員と言える社員の特徴についてみていきます。もし、あなたの会社にこのような社員がいれば、それは立派なモンスター社員ですので、放置せず適切に対処していくことが必要です。

急な欠勤や遅刻が多い

モンスター社員の特徴として、急な欠勤や遅刻が多いということが挙げられます。 もちろん、急に発熱したり家族に不幸があったりして前日や当日に休むことを決めなければいけないこともありますが、それが月に何度も続くとなればそれは立派な問題行動と言えます。

急に欠勤や遅刻をされてしまうと、取引先との会議で迷惑をかけることもありますし、ポジションに穴をあけてしまうので業務に支障をきたすことも考えられます。

業務時間中に居眠りやゲームをする

業務時間中にもかかわらず、勝手に居眠りをしたりゲームをしたりする行動をとるモンスター社員もいます。 また、業務時間中に仕事とは関係のないおしゃべりを長時間していたり、仕事と関係のない用事で私用にスマホをいじり続けたりするケースもあります。

外回り中に当たり前のようにサボる

営業マンや取引先との交渉を担当する職種だと、会社の外に出て取引先をまわることも多いですよね。 通常の社員であれば、用事を済ませたらすぐに会社に戻ってきますが、モンスター社員は会社の外にいることを良いことに、カフェやファミレスなどで当たり前のようにサボります。 ひどいケースでは外回りの時間だと嘘をついてショッピングをしているモンスター社員も存在しています。

配偶者や親が会社に文句を言いに現れる

モンスター社員の中には、その社員の夫や妻、親が会社に文句を言いに来たり要求をしてきたりする者もいます。

例えば、社員の夫が突然会社に現れて「妻の帰りが遅い!社内でパワハラを受けているのではないか!訴えるぞ」と怒鳴り散らしたりするケースもあります。 また、社員の父親が「うちの子が会社で上司に怒られて仕事に行きたく無いと言っている。どうしてくれるんだ」と会社に電話をかけてくるケースもあります。 会社とは関係のない人物が絡んでくるため、経営者としてはかなり対応に困ってしまうでしょう。

協調性がない

企業を健全に運営していくためには、どんな業界であっても社員同士の連携が必要ですよね。 そのような中で、他の社員が忙しくしていても我関せずと手伝おうとしなかったり、他の社員に対して非人道的な言葉を投げかけたり、情報のホウレンソウをしなかったりなど、協調性がない態度をとる社員もモンスター社員と言えます。

このような協調性のない社員がいると、職場の雰囲気が悪くなるのはもちろんですが、他の社員が余計な業務を引き受けなければいけなくなったり、精神上のストレスが溜まってしまったりして、最悪の場合、優秀な社員が退職してしまうリスクも考えられます。

逆パワハラをする

「パワーハラスメント(パワハラ)」という言葉はかなり定着していますが、これを逆手にとって部下から上司に行われるのが「逆パワハラ」です。

業務上、必要な指示や指導をする上司に対して、「今のはパワハラじゃないんですか??」、「今のパワハラを弁護士に訴えてやる!」などと言って、上司の指示や指導に応じない「逆パワハラ」をするモンスター社員が問題となっています。 モンスター社員からの逆パワハラで、指導に当たっている上司が精神的に参ってしまい、結果的にうつ病などを発症して離職をしてしまうケースも増えているのです。

モンスター社員が会社にいたらどう対応すればいい?

上の章でモンスター社員の特徴についてご紹介しましたが、あなたの会社の社員に上の特徴が当てはまる社員はいましたでしょうか? もしそのようなモンスター社員と思われる社員がいた場合、どのような対応を取っていくのがいいでしょう。

ここでは、段階的にとるべき対応方法について解説していきます。

粘り強く注意・指導する

モンスター社員がいる場合、いきなり処分を検討するのではなくまずは注意指導をしていきます。モンスター社員ですのでかなりの根気が必要になることを覚悟してください。

まずは口頭での注意指導です。ポイントは、問題行動が見られたらその場ですぐに注意することです。時間をおいて注意してしまうと、よほど客観的な証拠が存在している場合でない限り、「そんなことはやっていません」と言い逃れをされ、逆に言いがかりだと言ってこちらが不利にされる可能性があるからです。

口頭以外では、メールやチャットを用いて注意していく方法もあります。過去のやりとりの記録が残るので、後々懲戒処分を検討する段階で役に立つこともあるので、口頭での注意と並行して行うといいでしょう。

異動や配置転換を検討する

モンスター社員への対応として、配置転換や異動を検討するのも効果的な場合があります。 もし、モンスター社員の問題行動の矛先が、ある特定の上司や部下、同僚に向いているような場合は、配置転換をしてその社員同士を離すことで解決できるケースもあります。

ただし、配置転換によって職務内容が代わって給与が下がるような場合は、必ずその社員の同意を得ることが必須ですので慎重に行いましょう。

懲戒処分を検討する

口頭での注意や配置転換などを行ってもモンスター社員の問題行動が収まらない場合は懲戒処分を検討する段階に入ります。 懲戒処分には、戒告など比較的軽いものから、減給、出勤停止、退職勧奨、懲戒解雇といった、影響の大きい重い処分まで種類があります。

企業としては、注意指導によっても態度が改善しないモンスター社員に対しては、まずは戒告などの懲戒処分を行うようにしましょう。そして、その懲戒処分をしたという記録をその都度取っておくことで、後々懲戒解雇を検討する段階になったときに手続も取りやすくなります。 注意すべきポイントとしては、懲戒処分は就業規則に規定することで初めて行なえる処分になりますので、自社の就業規則に懲戒処分についての規定があるかどうかあらかじめ確認するようにしてくださいね。

退職勧奨する

どうしてもモンスター社員を辞めさせたい!と思った際は、いきなり解雇をするのではなくまずは退職勧奨を行ってください。

退職勧奨は、解雇とは異なり、社員に自主的な退職を促すもので強制的なものではありませんが、退職時のさまざまな条件の取り決めができるなど、うまく活用できれば企業へのリスクを最小限に抑えながらモンスター社員を辞めさせることができます。

解雇を検討する

粘り強く注意や指導をし、出来る限りの配慮で配置転換をし、影響が軽めの懲戒処分を行い、さらには退職勧奨もしたにもかかわらず、態度が改善されることも、自主的に退職をすることもなかった場合は、いよいよ懲戒解雇を検討せざるを得ない段階となります。

日本の労働環境では社員を簡単に辞めさせることはできず、懲戒解雇のハードルは非常に高いものになっていますが、今回ご紹介した対応を段階的に行い、その都度記録を残していればモンスター社員を解雇できる材料は揃ってきているはずです。 ただし、それでも解雇することのハードルは高いことに変わりはありませんし、ケースによって解雇できる状況かどうかの見極めも非常に難しいため、労働問題に強い弁護士に相談しながら進めていくことをお勧めします。

モンスター社員への対応は慎重に!モンスター社員がやりかねない仕返しとは

経営者としては、会社やほかの社員たちを守りたい一心でモンスター社員への対応を考えているかと思いますが、モンスター社員は企業が対応を取っている時にもモンスターらしい行動を取ります。

モンスター社員が取りうる会社への仕返し行動を前もって把握しておくことで、余計なトラブルを未然に防ぐことにつながります。ぜひ参考にして慎重に行動するように心掛けてください。

労働組合に駆け込む

モンスター社員が会社から取られた対応に対して不満を持っている場合、労働組合に駆け込む可能性があります。 労働組合に駆け込み、労働組合を通じて企業に様々な要求をしてくるのです。

交渉に慣れた労働組合に駆け込まれてしまうと、回答期限を区切られたり、交渉を求められたり、通常業務に支障をきたすような大きな負荷がかかってきます。 労働組合への相談は労働者に与えられた権利ではありますが、会社としては避けたい状況と言えるでしょう。

会社の対応について訴える

会社の対応に不満を持っている場合、労働審判などが申し立てられて裁判にまで発展してしまうリスクもあります。 特に、懲戒解雇をしたようなケースでは不当解雇として訴えてくる可能性が高く、裁判になってしまうと、よほど対策をきちんととって懲戒解雇していなければ会社が不利になるケースは少なくありません。

SNSに会社の誹謗中傷を書き込む

モンスター社員から法的手段を取られてしまうのもかなり大きな負担になりますが、中には法的手段ではなくSNSを使って会社に攻撃をしてくるケースも増えてきています。

例えば、TwitterなどのSNSに「○○会社はブラック企業だ」「○○会社ではパワハラが横行している」など、明らかに逆恨みと思われるような虚偽の内容を書き込まれることが考えられます。このような誹謗中傷をSNSに書き込まれてしまうと拡散されて一気に広まってしまうこともありえます。 誹謗中傷が拡散されれば、取引先との関係も悪化するリスクがありますし、人材の採用において大きな悪影響が出ることも考えられます。

実際、そのような誹謗中傷の内容がSNSに書き込まれた後に内定が決まっていた社員が、その書き込みを見て内定を辞退した例もあるため、SNSでの嫌がらせは軽く考えてはいけないのです。

転職サイトや就活サイトに誹謗中傷を書き込む

SNS同様、転職サイトや就活サイトに誹謗中傷を書き込む可能性もあります。 SNSと違い、転職サイトや就活サイトは、その会社に就職したいと思っている人物が多く閲覧する可能性があるため、誹謗中傷を書き込まれれば大打撃につながるでしょう。

また、このようなサイトへの書き込みは匿名で行われることが多いため、すぐに犯人を特定するのも難しく、損害賠償請求や名誉毀損で訴えることも容易ではありません。 もし誹謗中傷を受けたことに対しての法的措置を取る場合は、ネットトラブルに強い弁護士や調査会社に依頼してモンスター社員が書き込みをしたという証拠を掴むことが必要になります。

モンスター社員を雇わないためにできること

モンスター社員が会社にいるだけでさまざまな不利益が発生してしまうことはすでにおわかりいただけたかと思います。 モンスター社員への対応を知っておくことは非常に大切ですが、それと同じくらい、モンスター社員を雇わないようにするという予防策も大切です。

最近では採用面接をリモートで行っている会社も増えていて、その人物の人となりが把握しにくくなっています。また、面接では誠実そうにふるまっていてもSNS上では誹謗中傷や嫌がらせを繰り返すような人物であることも珍しくありません。

そのため、新しく人材を採用する際には採用予定者の身辺調査などの採用前調査を行うことを強くお勧めします。 採用前調査を行うことで採用前にその人物がモンスター社員になる可能性があるのかどうかを判断することができ、会社やほかの社員を守ることにつながります。

まとめ

今回の記事では、モンスター社員の特徴や対応方法、モンスター社員が取りうる仕返しについてみてきました。

モンスター社員に悩まされている経営者の方はたくさんいらっしゃいますが、みなさんギリギリまで見て見ぬふりをして我慢されている方が多いように感じます。 モンスター社員は放置しても改善されることはなく、できるだけ早く対処していくことが重要です。