社内で信頼している従業員が横領をしているとわかったら、誰でも大きなショックを受けるでしょう。 従業員による横領は社内における不正行為の最たるものと言え、決して許される行為ではありません。

 

社内での横領が発覚した場合、経営者が気になることとしては、横領された金銭を返してもらえるのか、犯人である従業員を解雇できるのか、そして警察は犯人を逮捕してくれるのかという点ではないでしょうか。

 

今回は、社内で横領事件が起きた時の適切な対応方法や、法的措置を取るために必要な証拠、横領事件を起こした従業員にどのような対応を取れるのかについて解説していきます。

業務上横領罪とは

横領という言葉のほかに、ニュースなどで「業務上横領」というワードを聞いたことがある人も多いでしょう。 この2つは似ていますが、少し違います。

 

業務上横領罪とは、業務上自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する罪のことで、10年以下の懲役が科せられます。 業務上横領罪は単純な横領罪とは違い、より罪が重いとされています。

 

「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて反復・継続する事柄で、委託に基づいて保管や管理をする事をいいます。業務者の方がより責任非難が増大するため、業務として行っている場合の方が刑が重いのです。 そのため、単純な横領罪は最高懲役が5年なのに対し、業務上横領罪は10年と重い刑が科されます。

 

社員による業務上横領罪の被害事例

自分の会社で横領が起こるなんて考えたこともない人が多いかと思いますが、実際には従業員による不正の中で最も多いものの一つが業務上横領と言われています。

 

ニュースで取り上げられるような大きな横領事件は大企業の従業員によるものばかりですが、実際には表に出ていないだけで横領事件の数だけで見ると中小企業における横領のほうが多いのです。

 

では、実際にはどのような横領被害があるのでしょう。被害事例として以下のような事例があります。

 

・経理担当の社員が、会社の口座から自分の口座に不正に振り込んでいた

・領収書の金額を改ざんしたり領収書自体をねつ造したりして資金を着服

・営業マンが担当している顧客から回収した売上金を未回収と見せかけ横領

・架空の請求書をねつ造し、資金をだまし取っていた

・架空の出張をでっちあげて交通費や宿泊費などの経費を繰り返し横領

 

中小企業の場合、金銭に関わる担当者を1人に任せていることが多いため、横領を起こしやすいという性質があります。信用している一人の社員に任せっきりのため、監視が行き届かず横領の発見が遅れる可能性も高く、横領が発覚した時にはかなりの額の被害になっているケースも少なくありません。

 

社内で横領被害が起きたらどのように対応すればいい?

「社内で横領被害が起きている可能性がある」と気が付いたら、誰もがパニックになり、決定的な証拠もなくその社員を問い詰めてしまいたくなると思います。

 

しかし、横領の可能性が出てきても、いきなり社員を問い詰めたり解雇したり、告訴したりしてはいけません。証拠もない状態であれば名誉毀損などで会社が逆に訴えられてしまうリスクもあるからです。 ではどのように対処していけばいいのでしょうか。具体的な手順をお伝えしていきます。

 

まずは事実関係の調査を行う

まず第一にやるべきことは事実関係の調査です。

 

「本当に横領事件が起きているのか」「誰が横領をしているのか」「いくらの金銭の被害が出ているのか」「どのように横領しているのか」など、横領被害についてのあらゆる点を確認していきましょう。

 

「そんな悠長に構えてられない!!」と焦ってしまう気持ちもわかりますが、横領したという確固たる証拠がなかったり証拠が不十分だったりすると、その社員を解雇した場合、「横領していないのに解雇された!不当解雇だ!」などとして逆に会社が訴えられてしまうでしょう。 また、横領された被害金額が不確定だと犯人である社員に対して具体的な損害賠償請求をすることも難しくなります。

 

そのため、まずは事実関係の調査をスピーディーに行うことが大切です。事実関係の調査については社内のリソースだけでは時間がかかりすぎてしまったり、人員を割けなかったりしてスムーズに進まないことも多いため、調査のプロである探偵に依頼することをお勧めします。

 

客観的な証拠を集める

事実関係の調査が終わったら、もしくは同時並行で証拠集めも行ってください。

 

横領を裏付ける客観的な証拠としては、会計帳簿記録や、口座からの送金記録、防犯カメラの映像などが使えます。 経費を過大に請求して横領を繰り返していたような場合には、当該社員から提出された領収書が本当に必要な経費だったのかの裏取りをし、証拠として集めておきます。 取引先の担当者とグルになって振込金額を着服しているような場合には、やり取りをしているメールがあるはずなので、それらの履歴を証拠として保存しておきます。

 

聞き取り調査を行う

取引先からの振込金を営業マンが着服するケースは多く、その場合には取引先の担当者から聞き取り調査を行うことで営業マンの話と事実との差を見極めることができます。

 

ただし、むやみに聞き取り調査を行ってしまうと、実は横領犯の社員とグルで、調査していることが筒抜けになってしまい、証拠を隠されてしまうリスクもあるため、どの人物に聞き取り調査を行うのかは慎重に見極める必要があるでしょう。

 

なお、あまり多くはないのですが、横領について通報されるケースもありますので、その場合は通報した社員からできるだけ多くの情報を得られるよう丁寧に聞き取りを行い、横領行為の具体的内容や時期を特定していってください。その場合も、通報者が嘘の情報を流しているかもしれないという可能性も考慮しながら聞き取りを行いましょう。

 

本人に対して聴取を行う

証拠集めが進んだら、いよいよ横領をしたと疑われる社員に対して聴取を行います。本人からの聞き取りでは、横領の事実などを認めさせることが一番の目的として進めていきます。

 

本人に対して聞き取り調査をする際は、前もって聴取を行うという予告はしないようにするのがポイントです。聴取をすることを感づかれてしまうと、警戒されて証拠を隠されたり、聞き取り調査から逃げられたりする可能性もあります。

 

予告なしに聴取に呼び出してそのままの流れで聞き取りを始めてしまいましょう。聴取の際は全て記録すべきですので、ボイスレコーダーなどで録音しておくのがベストです。

 

社員に対して法的措置を取っていくためには証拠は必要不可欠

業務上横領の解決方法には、横領した社員を逮捕して刑事罰に問う解決と、横領されたお金に対しての損害賠償請求を行う民事としての解決があります。

 

刑事罰と民事罰、いずれも法的措置を取ることになりますが、どちらの場合も横領を裁判で認めさせる証拠は必要不可欠です。それぞれの場合にどのような証拠が必要になるか見ていきましょう。

 

警察に対応してもらうために必要な証拠

刑事罰として訴えたい場合、警察に被害届を出すところから始まりますが、警察に相談する一番の目的は、業務上横領を行った社員を逮捕したり起訴したりすることですよね。

 

犯人である社員を逮捕・起訴するためには、業務上横領が行われたという確固たる証拠が必要不可欠です。ただ、警察としても誤認逮捕は絶対に避けたいところなので、誤認逮捕とならないように慎重に調査し、確実な証拠が集まった時に初めて犯人を逮捕してもらえるという形になります。

 

確実な証拠がはじめから完璧に必要というわけではなく、相談する段階で警察により確実に対応してもらえるためには

・不自然な会計記録の記載

・会社の金品が不自然になくなっているという証拠

・会社の銀行口座からお金が引き出された記録

・パソコン内にある改ざんされたデータ

などの証拠を提出すれば対応してもらえる可能性が高くなります。

 

民事として対応してもらうために必要な証拠

業務上横領の被害を受けた場合、損害賠償請求を行って民事として訴えることも可能です。ほとんどの場合、弁護士にその手続きを依頼することになると思いますが、弁護士に依頼するためには訴えるべき横領の犯人が確実にわかっていることが前提となります。

 

ドラマなどで誇張されているため勘違いしやすいのですが、弁護士に捜査権はなく、警察のように大々的な調査を行うことはできません。そのため、確実に犯人がわかっていて、なおかつその証拠を掴んでいる状態で弁護士に相談する必要があるのです。

 

民事として訴えるために必要な証拠としては、

・会社の金銭などを横領している場面の防犯カメラのデータ

・会社の銀行口座から不正に振り込まれている口座のデータ

・金品を勝手に売却した領収書

などです。 もし、横領の犯人がわかっていなかったり、犯人である確実な証拠がなかったりした場合は、弁護士に相談する前に証拠を集めるために探偵に相談するほうがいいでしょう。

 

民事として訴えるためには犯人がはっきりしていなければ弁護士も動くことができないので、犯人であるという確固たる証拠を入手しましょう。

 

横領をした社員に対してどのような対応を取ることが可能か

横領事件を起こした社員に対して、どのような対応を取っていくべきか悩んでしまう場合があるでしょう。 実際、どのような対応が可能なのか、見ていきます。

 

損害賠償請求

上でもお伝えしましたが、横領した社員に対して、横領された金銭の支払いや、盗まれた物品の返還などを求める損害賠償請求をすることができます。

 

ただし、横領した社員がその金銭のほとんどを使い切ってしまっているケースが非常に多く、すでに賠償できるほどの資産を持っていない可能性が高いです。そのため、和解手続を進めその中で分割払いの取決めをして少しずつ横領された金銭を回収していくことが現実的でしょう。

 

解雇

横領を起こした社員を解雇したいと考える方も多いですよね。当該社員を解雇したい場合、まず就業規則をチェックしてみてください。 就業規則の解雇事由に「横領」や「着服」といった記載があれば、その規定に基づいて、当該社員を解雇することができます。

 

ただし、就業規則に記載がない場合や、法的な証拠なく不用意に解雇することは非常に危険です。不当な解雇として後々無効になる可能性もありますし、そうなれば解雇することができないばかりか、解雇がなければ払わるはずだった給料の支払いが命じられ、会社として非常に大きな損失になります。

 

解雇ができるかどうか、確実に正当な解雇をするためにどのような手続をとらなければならないか、解雇以外にどのような手段が取れるのかについては、弁護士に相談するのが一番安心ですね。

 

刑事告訴

横領した社員に対して刑事上の責任を問いたい場合は、警察または検察に告訴することもできます。

 

横領の事実を証明できる客観的な証拠とともに告訴状を提出することで、警察が告訴を受理して捜査に取り掛かってくれる可能性が高くなります。捜査の結果横領した社員が逮捕されれば、民事としての損害賠償請求を受けられる可能性も高くなるというメリットもあります。

 

まとめ|横領の客観的な証拠集めは探偵に依頼するのがベスト

警察や弁護士のどちらに相談し、民事刑事事件どちらで訴えていくにしても横領の確固たる証拠は必要不可欠になりますが、業務上横領を行う犯人はほとんどの場合、その証拠を隠滅しようとします。

 

最悪の場合、証拠を消されてそのまま会社から逃げられてしまい行方が分からなくなってしまうこともあります。 業務上横領として刑事OR民事事件として訴えていくためには、証拠隠滅を図らせない、犯人を逃がさない、証拠を確実に掴むということが大切です。

 

そこで頼りになるのが探偵です。 探偵に調査を依頼する最大のメリットとしては依頼してからすぐに調査を開始してくれ、証拠をかなりの確率で抑えてくれるという点でしょう。

 

警察や弁護士はある程度の条件がそろわなければ調査や弁護に踏み切ってもらえませんが、探偵は依頼さえすればすぐに調査を開始して証拠を取ってくれます。 「横領の証拠をどうやって集めたらいいかわからない」「疑わしい人物はいるがなかなか確実な証拠を掴めない」「証拠が裁判で使えるかどうか不安」という場合にはぜひ探偵に相談してみることをお勧めします。