近年、会社内での嫌がらせやいじめが増加傾向にあり、それに伴い会社内での嫌がらせで精神的なダメージを受けて悩む労働者が増えてきています。

 

特に最近はコロナの影響もあり、様々なストレスを抱えて働く人が多いので嫌がらせやいじめにも発展しやすくなっているのかもしれません。 また、会社で受けた嫌がらせ被害に対して被害者の従業員が企業を訴えるケースが増加傾向にあるため、会社としてもリスクマネジメントの観点から社内の嫌がらせ対策に力を入れていく必要が出てきていると言えるでしょう。

 

今回は、会社で起こる嫌がらせの特徴やよくあるパターン、そして会社内で起きている嫌がらせやいじめを放置するリスク、会社として取るべき嫌がらせへの対処法について解説します。

 

会社で起こる嫌がらせの特徴

嫌がらせやいじめと聞くと、学校などで起きる子供の問題とイメージされる方も多いかと思いますが、実は大人になっても嫌がらせは横行しています。 特に会社という閉ざされた空間では嫌がらせが起きやすく、会社ならではの特徴もあります。この章では、会社で起こる嫌がらせの特徴やリスクについて見ていきます。

 

表面化しにくく把握が難しい

会社内で起こる嫌がらせは表面化しづらいという特徴があります。そのため、社長や経営陣が把握できないまま嫌がらせがエスカレートしてしまい、気付いたときにはかなり問題が肥大化してしまっていることは少なくありません。

 

特に、上司から部下に対して嫌がらせをしているケースでは、仕事上の指導や注意なのか、ただの嫌がらせなのか判断がしにくく、被害者が一人で抱え込んで悩んでしまうことが多いのです。

 

精神疾患を発症するリスクが高い

会社で働く多くの人が一日のほとんどの時間を会社で過ごし、会社の人たちと時間を共にしています。 さらに、学校での嫌がらせであれば不登校という選択もできますが、仕事となれば収入のこともあるので簡単には会社を休むことはできず、逃げたいのに逃げられないと自分を追い込まれて行ってしまいます。

 

嫌がらせに耐えられず転職を考える人もいますが、実際には収入を下げられない、スムーズに転職できるとは限らないと考え、生活のために嫌がらせに耐え続けている人が多いのも現状です。

 

そして、逃げたいのに逃げられない、毎日嫌がらせを長時間にわたって受けなければならないという精神的ストレスが継続的にたまってしまい、うつ病などの精神疾患を発症するリスクが高くなってしまうのです。

 

あなたの会社は大丈夫?社内の嫌がらせのよくあるパターン

会社内で起こる嫌がらせには典型的なパターンがあります。会社内での嫌がらせは表面化しにくいという特徴はあるものの、どのような嫌がらせが起きやすいのかを把握しておくことで敏感に起きている嫌がらせを察知できるようになる可能性もあります。

 

集団で無視や仲間はずれをする

小学校などで起きているいじめとほとんど同じですが、社会人になっても嫌がらせは同じようなことをされます。

 

・挨拶をしてもみんなに無視される

・上司や同僚の会話に入ったら蜘蛛の子を散らすようにみんながいなくなる

・自分だけ必要な資料が配布されない・情報を知らされない

・自分だけ別室で仕事をさせられる

・会社の送別会や忘年会、社員旅行に自分だけ声をかけられない

などは立派な嫌がらせです。

 

社内に違和感を持ったら、このような嫌がらせが起きていないか観察してみることが大切です。

 

パワハラ・セクハラ・モラハラをされる

世の中には様々なハラスメントが存在しますが、会社で起こることが多いのはパワハラ、セクハラ、モラハラです。 上司という立場を利用して、怒鳴り散らしたり、書類を投げつけられたりする行為は立派なパワハラです。

 

また、「お前は無能だ」「お前は奴隷なんだから文句言わずにやれよ」など言葉で攻撃してくるのはモラハラにあたります。 パワハラやモラハラを毎日のように受け続けると精神的に参ってしまいますし、精神疾患も発症しやすくなります。

 

他にも性別を理由に嫌がらせする場合はセクハラにあたりますし、妊娠していることを理由に影口を言われる場合は「マタハラ(マタニティハラスメント)」に該当する可能性があります。

 

SNSに誹謗中傷を書かれる

FacebookやTwitterなどのSNS上で特定の人についての悪口や誹謗中傷を書き込まれるという嫌がらせもあります。 SNSで書かれた内容は不特定多数の人が目にするため、被害者の精神的ショックは計り知れないものになるでしょう。

 

SNSでの誹謗中傷が原因で自殺に追い込まれる事件も増えていますので、慎重に対応していかなければいけません。

 

無理な仕事を押し付ける

一日では到底終わらないような無謀な量の仕事を押し付けられたり、用事があることを知っているのに終業間際に膨大な仕事を押し付けられたりという嫌がらせもあります。

 

仕事なので断ることもできませんし、第三者にそのことを相談しても「仕事を任せられるくらい信用されているのでは?」「仕事があるだけマシでしょ」などと言われてしまうこともあり、被害者はますます追い込まれてしまいます。

 

仕事を妨害したり濡れ衣を着せられたりする

上司から誤った指示を故意にされて結果的に昇進の機会を失ったり、上司やほかの人のミスなのに自分のせいにされて濡れ衣を着せられたりという陰湿な嫌がらせもあります。

 

このような嫌がらせは、被害者を追い込むという問題ももちろんありますが、業務が妨害されているという問題もありますので、経営者としては絶対に見逃すべきではない嫌がらせと言えます。

 

プライベートに干渉してくる

プライベートに過度に干渉してくるのも立派な嫌がらせです。 家族や恋人についてしつこく聞かれる、休みの日の過ごし方をしつこく聞かれるという嫌がらせや、「部下をしっかり管理しなければいけない」というめちゃくちゃな理由を付けてスマホを勝手にのぞいてくるという嫌がらせをされているケースもあります。

 

会社での嫌がらせにきちんと対処しない場合のリスクとは

会社で起きている嫌がらせは表面化しにくく発見が難しいという特徴がありますが、だからといって見て見ぬふりをしてもいいというわけでは決してありません。

 

また、社員同士の人間関係に会社として介入するのは良くないと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、会社として社内で起きている嫌がらせやいじめを黙認することは絶対にNGです。

 

会社で起きている嫌がらせにきちんと対処していない場合、多くのリスクが発生しやすくなりますので、リスクについてもしっかりと把握しておいてください。

 

嫌がらせの被害者が会社を辞めてしまう

被害者が嫌がらせに耐えられずに会社を辞めてしまうことが想定されます。 せっかく採用費用をかけて採用し、教育費をかけて育ててきたのに嫌がらせが原因で辞められてしまっては会社としても痛手ですよね。

 

また、優秀な社員や出世している社員ほど嫉妬や妬みから嫌がらせを受けやすい傾向にありますので、会社として優秀な人材を失うことにもなりかねません。

 

嫌がらせについて会社の悪口をネットに書き込まれる

嫌がらせの被害者が会社を辞めた結果、会社の悪口を口コミサイトに書かれるリスクも考えなければいけません。

 

「〇〇会社ではパワハラやモラハラが毎日横行している」 「会社の嫌がらせのせいでうつ病になった」 などと書かれてしまうと、今後の採用が難しくなるだけでなく、取引先からの信用も失ってしまう可能性があります。

 

嫌がらせの被害者が精神疾患を発症してしまう

会社内で起こっている嫌がらせは、長期間にわたって継続的に行われ、だんだんとエスカレートすることが多く、被害者の精神疾患を誘発するケースが極めて多いです。

 

本人は嫌がらせに耐えていると思っていても、自分が思っている以上に精神的なストレスを感じていて、うつ病や不安障害などの精神疾患を発症してしまうのです。 被害者が精神疾患を発症してしまうと長期間休職しなければいけなくなるため、他の社員たちの負担が増えたり本来の業務が遂行できなくなったりという問題も発生してしまいます。

 

会社に対して損害賠償請求されてしまう

嫌がらせの被害を受け、精神疾患を発症してしまった人の中には損害賠償請求をすることを考える人もいるでしょう。

 

その場合、嫌がらせをした本人である加害者にだけでなく、使用者である経営者も使用者責任に基づく損害賠償責任を問われる可能性があります。 会社に対して損害賠償請求をされると裁判や手続きなどで多くの時間と労力を要することになりますので、通常業務に大きな支障が出ることは避けられなくなります。

 

会社には嫌がらせやいじめを防止する義務がある

「子供じゃないんだから、会社内の嫌がらせやいじめは自分たちで何とかしてくれよ・・・」と思いたくなる気持ちもわかりますが、会社には嫌がらせやいじめを防止する義務があります。

 

セクハラやマタハラについては、2017年1月に男女雇用機会均等法が改正され、セクハラやマタハラによって被害者が不利益を受けたり、就業環境を害したりすることがないように防止措置を取ることが企業に義務づけられています。

 

また、パワハラについても、2019年5月にパワハラ防止法が成立しました。

 

そのため、嫌がらせやいじめ、ハラスメントを放置する会社は加害者同様に法的責任を問われる可能性がありますし、それが社会的に知れ渡ると倫理観の欠如した企業として社会的信用も失ってしまうでしょう。 会社内の嫌がらせにはきちんと対応していかなければいけないのです。

 

会社での嫌がらせが判明したときに会社として取るべき対応

では、会社で嫌がらせが起きていることが発覚したら、具体的にはどのような対応をとっていくことが求められているのでしょうか。 ここでは嫌がらせ起きていることが発覚した際の適切な対応について説明します。

 

事実関係の把握

まずは嫌がらせについての事実関係を確認する必要があります。事実関係を把握するためには、受けていた嫌がらせについての具体的な内容を被害者にヒアリングすることが必要になります。

 

ただし、嫌がらせによって被害者は大きな精神的なダメージを負っている可能性も高いので、むやみに聞き出すことは危険です。十分に配慮してヒアリングを行うようにしてください。また客観的に嫌がらせの事実を証明できるようなメールの履歴や加害者の録音データがあれば証拠として使えますので提出をお願いしましょう。

 

もし、被害者へのヒアリングが難しそうな場合や社内で調査することが難しい場合は、社内調査に精通している探偵に本格的な調査を依頼することをお勧めします。

 

加害者への処分

ヒアリングや調査の結果、嫌がらせが起きているという事実が確認できたら加害者への処分を検討していきます。 まずは、口頭での注意や指導を行って改善を促してください。

 

そのうえで改善が見られないとなったら懲戒処分を検討していきます。 いきなり懲戒処分を行うと、加害者が逆に会社を訴える可能性もあり会社が不利な立場に陥るリスクも高いですので、処分を行う前に必ず適切な注意や指導を行うようにしてください。 どのような処分が適切か不安な場合は弁護士に相談しながら進めていくほうが安心ですね。

 

被害者へのフォロー

加害者への処分だけでなく、被害者へのフォローも徹底して行うようにしてください。

 

被害者は嫌がらせを継続的に受けてしまったために大きな精神的ダメージを負っている可能性が高いです。 あまりにも精神的に不安定な状態になっていると判断したら、長期での休暇を与える手配をしたり、心療内科の受診を促したりなど適切な対応をとってください。

 

会社として嫌がらせを予防するためにできること

会社内での嫌がらせは表面化しにくく把握が難しいため、未然に防ぐことにも注力していくことが重要となります。 どのような対策によって嫌がらせを予防すればいいのでしょうか。

 

懲戒処分についての規定を定める

社内での嫌がらせを未然に防止するためには、就業規則で嫌がらせをした加害者に対してどのような処分をしていくのかという会社の方針を記載した懲戒規定を明記することが大切です。

 

そして懲戒規定について定めるだけでなく、定期的な社員教育を行い、その内容を社員たちに周知することで嫌がらせやいじめを抑止する効果が期待できます。

 

相談窓口を設置する

万が一嫌がらせが起きてしまったときのために被害者が一人で抱え込まないように相談窓口を設置することも行ってください。

 

そして、相談窓口について相談者のプライバシーは確実に保護されることや相談したことで異動や解雇などの不利益な扱いを受けることは一切ないことも合わせて周知しましょう。

 

メンタルヘルス対策をする

社内での嫌がらせを防止するには、加害者になりうる社員をなくしていくことも効果的です。加害者の中には、仕事などで過剰なストレスを抱えているケースが多いといわれています。

 

自分では抱え切れなくなった過剰なストレスを解消するために、弱いものに対して嫌がらせをしているのです。 そうならないためにも、会社としてメンタルヘルス対策を行い、社員たちのストレス軽減に努めるようにしましょう。

 

定期的に内部調査を行う

定期的に企業内調査を実施して嫌がらせやいじめが起きていないか、社内不正が起きていないかをチェックすることも極めて効果的です。

 

社内で嫌がらせが起きている場合、社内の空気は決していいものにはなっていません。そのような環境だと横領や情報漏洩などの社内不正が起きやすくなっていると言えます。 会社内全体の健康診断だととらえて定期的に企業内調査をすることをお勧めします。

 

まとめ

今回は、会社で起こる嫌がらせの特徴やパターン、そして会社が社内での嫌がらせを放置するリスクや適切な対処法について解説してきました。

 

従業員同士の嫌がらせに会社が関与する必要はないと考えがちですが、倫理的な観点や嫌がらせによって起こるさらなる問題へのリスクマネジメントの観点からも会社として積極的に取り組まなければならないと言えます。

 

会社内で起きている嫌がらせへの対処法に不安があったり、企業内調査に疑問があったりする場合は、ぜひお気軽に当事務所へご相談ください。