会社を経営している中で、「役員を辞めさせたい」と思うことはあるでしょう。 しかし、役員だからこそ辞めさせるのは簡単ではありませんし、リスクも伴います。

今回の記事では、役員を辞めさせる方法や具体的な手順、辞めさせるうえでのリスク、そして辞めさせた役員とトラブルにならないために知っておくべきことを解説していきます。

どういう場合に役員を辞めさせるべきなのか

役員を辞めさせたいと思っている方は少なくありませんが、どういう場合に辞めさせるべきなのでしょうか。

役員報酬をもらっているのに見合った仕事をしていない

役員は通常、役員報酬として普通の従業員よりも多くの給料を受け取っています。それは、役員だからこその仕事があるために多くもらうものなのですが、中には役員報酬をもらっているのにそれに見合った仕事をしていない役員もいます。

経営方針が食い違っている

役員を辞めさせたいと思うケースとして一番多いのが、経営方針が食い違ってしまった場合です。 会社を立ち上げるときに友人と一緒に立ち上げ、一緒に頑張ってきたものの、ある程度の時間が経ち、経営が落ち着いてくると経営方針が食い違ってしまうことがあります。 社長と役員でのトラブルが増えると辞めさせたいと思ってしまうのでしょう。

役員が不正行為を行っている

役員が社内で不正行為を行っているとわかった場合、当然その役員を辞めさせたいと思いますよね。不正行為を行っている場合は正当な理由として辞めさせることができますので、不正行為を行っている証拠を取っておくことが重要になります。

役員がパワハラなど問題行動を起こす

役員がほかの従業員に対してパワハラやセクハラなどの問題行動を起こしている場合も、他の従業員を守るためにその役員を辞めさせるべきでしょう。 この場合も、パワハラやセクハラなどの問題行動を起こしているという証拠を掴んでおくことが重要です。

会社の役員を辞めさせる方法

会社の役員を辞めさせる方法は大きく分けて3つあります。

取締役本人が辞任する

取締役本人に対して、取締役として不適任であるということを説明することで辞任を求める方法があります。 この方法は自ら辞任する形を取るので、トラブルが起こる可能性が一番低い方法です。

株主総会決議によって解任する

株式の過半数をコントロールできる場合には、株主総会決議によって役員を解任する方法が可能です。 ただし、「意見が合わない」「経営方針が違っている」というだけでは解任の正当理由にはならないので解任後に辞めさせた役員から損害賠償請求を受けるリスクがあります。

任期満了時に再任しない

辞めさせたい役員の残された任期がわずかだという場合は任期満了まで待って任期満了時に再任しないという方法も可能でしょう。 この場合も、損害賠償請求を受けるリスクがないためトラブルを防ぐうえで有効な方法だと言えるでしょう。

役員を辞めさせるうえでのリスク

役員をどうしても辞めさせたい場合は、解任するという手段を取ることになると思いますが、本人の意思に反して解任する場合、会社が後々トラブルに巻き込まれるリスクがあります。

役員から、株主総会の解任決議の効力があるのかということを裁判で争われる可能性がありますし、解任の「正当な理由」がないとして、会社に対して損害賠償請求をする可能性もあります。 その点、辞任であれば、役員自ら辞任届を作成しているので、トラブルになりにくいですし、万が一トラブルになったとしても会社が有利な立場に立てます。

辞めさせた役員から損害賠償請求されるのはどんなとき?

辞めさせた役員から損害賠償請求を受ける可能性があるのは、正当な理由がないと判断される場合です。 具体的には、役員によって経営が失敗した、役員の経営能力が不足している、経営方針が違っているなどのケースでは正当な理由と判断できないため損害賠償請求を受けるリスクが高くなります。

辞めさせた役員とトラブルにならないためのポイント

せっかく役員を辞めさせることができたのに、後になってトラブルになってしまうのは絶対に避けたいですよね。 この章では、辞めさせた役員とトラブルにならないために意識しておきたいポイントをご紹介していきます。

任期満了まで待てないか検討する

役員の任期満了が近い場合、任期満了まで待てないか検討してみましょう。任期満了まで待って再任しなければ辞めさせることができますし、損害賠償請求のトラブルは起こりません。

辞任を求める形で解決できないか

役員本人が辞任してくれる可能性があるのであれば、辞任してもらうように説得してみるのも賢い方法です。 この場合も本人の意思による辞任なので損害賠償請求のトラブルは起こりません。

解任する正当な理由はないか

解任する場合、辞めさせた役員から損害賠償請求を受ける可能性に備えて、解任するのに正当な理由があったことを証明できる証拠を集めておくことが必要です。

役員の能力不足によって会社に実害が出た事実や、役員のせいで取引の機会を逃したこと、また、不正行為や法律違反をしている証拠を掴んでおくと安心です。 不正行為や法律違反などの証拠は企業調査に精通している探偵に調査を依頼するのがお勧めです。

不当解雇にならないか

取締役が従業員としての地位も兼ねているケースでは役員を解任した後に、従業員としては雇い続けるのか、それとも解雇するのかを検討しなければいけません。 もし従業員としても解雇するのであれば、不当解雇にならないかどうかも考えておく必要があります。

解任するより辞任を求めるほうがリスクは少ない

すでに申し上げているように、役員を解任することは可能ですが、後々トラブルになるリスクもあるため解任は最後の手段として考えておくのが無難です。 まずは、辞めさせたい役員を説得して辞任を求めるのがよいでしょう。

辞任を求めるための交渉材料

辞任を求めるに当たっては、辞任することのメリットを用意しておくことが必要になります。

具体的には、これまでの不正行為について会社が訴えないことや、役員の不正行為によって会社が被った損害の賠償を一部免除すること、役員が株式を持っている場合に通常よりも高く買い取ることなどが交渉材料になるでしょう。 また、解任だと退職金は払えないが、辞任であれば退職金を支払うことも交渉材料として有効です。

役員を辞めさせる(解任する)場合の具体的な手順

辞任を求めてそれに応じてもらうのが一番円満な解決方法ですが、辞任を求めても応じてもらえない場合は解任するしかありません。 ここでは解任する場合の具体的な手順を解説していきます。

役員の最低人数を確認する

役員を辞めさせる場合、まず、自分の会社の役員が最低何人必要なのかを確認しなければいけません。 その役員を解任することで必要な人数を下回ってしまう場合は解任することを諦めるか、早急に新しい役員を選出する必要があります。

株主を確認する

中小企業などでは、定期的に株主総会が開かれておらず、株主が誰であるかがあいまいになっているケースがあります。 そのため、株主総会を開く準備として、株主が誰であるかを確認しておきましょう。

株主総会を招集する

役員の解任は、株主総会で行いますので、株主総会を招集しなければいけません。株主総会を招集するために総会の日時や場所、目的事項などを決定してください。

株主総会で解任決議をする

招集した株主総会で、役員の解任を決議します。議決権の過半数をもっている株主が出席する株主総会で、出席株主の議決権の過半数が役員の解任に賛成したときに役員を辞めさせることができます。

株主総会議事録を作成する

株主総会が終わったら株主総会議事録を作成することが会社法で定められています。株主総会議事録は、役員の署名などは必要ないので、解任された役員に同意を得られなくても株主総会議事録は作成できます。

解任の登記手続をする

株主総会議事録ができたら、それと同時に役員の解任の登記手続も行ってください。

解任されたことを通知する

役員は株主総会に出席する義務があるので、株主総会の場で自分が解任されたことを知ることになりますが、もしもその役員が株主総会に出席していなければ解任されたことを明確にするため、解任通知を役員に送ることが適切でしょう。

役員が辞任に応じてくれたらやっておくべきこと

辞めさせたい役員に辞任を求めて、それに応じてくれたら助かりますよね。無事に辞任してくれてホッとしているかもしれませんが、辞めさせることができてもそれで終わりではありません。辞任に応じてもらったあとに忘れずにやっておくべきことがあります。

辞任届の作成

辞任に応じてもらったら、辞任届を作成しましょう。辞任届には、特に様式はありません。辞任届を作成した後は、辞任の登記も忘れずに行ってください。

株式の買い取り

辞任した役員が株式を保有していた場合は、他の役員たちが、それらを買い取っておくことをお勧めします。 株式を保有していると、株主として会社に権利行使ができてしまいますので、権利を濫用されるのを防ぐことが大切です。

誓約書の作成

辞めるのが元役員のため、会社を去った後に競業しないよう誓約書を交わしておくことも忘れずに行ったほうがいいですね。

まとめ

役員を辞めさせる場合に重要なのはトラブルになることを防ぐこと、万が一トラブルになったとしても有利に解決できるように準備をしておくことです。

そのためには、辞任に応じるよう説得することが必要ですが、辞任を求める際には役員としてふさわしくないことを証明できる証拠が必要でしょう。 証拠を取る際は、企業調査に精通している探偵に調査を依頼するのがお勧めです。